2026/08/20

暗号資産緊急レポート
米財務省のバイバック拡大とトランプ政権の暗号資産推進策が寄与:ビットコイン急伸と「希少資産・暗号資産全体」再評価の背景


【SBIVCトレード 暗号資産緊急レポート】

8/19のBTC/JPYの終値は前日比+6.96%の11,022,199.5円、前日比717,500円の上昇を記録した(※終値は8/19のVCTRADEサービス現物EOD[8/20 6:59:59]レートMid値)。

8月19日の暗号資産市場は、21時半頃からデリバティブ市場で出来高を伴う買いが入り始め、市場全体で上値を切り上げる展開となった。その後、米国市場の取引が本格化するとともに買いが加速して前日高値を一気に更新。

ビットコインは21時半以降に蓄積された買い圧力により、価格は直近高値である66,900ドルおよび67,200ドルの主要な上値抵抗線に接近。この抵抗線を完全に上抜けたことで、相場は一気に加速した。

抵抗線突破に伴い、デリバティブ市場で積まれていた大量のショートポジションの清算(強制決済)が集中。買戻しがさらなる価格上昇を呼び、それが追加の清算を誘発する連鎖的な「ショートスクイーズ」へと発展し、短時間で69,700ドル付近まで急速に値を切り上げた。

CoinGlassの清算データによると、暗号資産市場全体で約17億ドル相当のショートポジションが清算された。この清算規模は昨年10月の大規模クラッシュ以降で最大であり、市場全体の爆発的な急伸を後押しする最大の動因となった。

ビットコインが一時6月上旬以来となる7万ドル近辺まで急伸したほか、主要アルトコインにも広範な買いが波及した。
長期間にわたりレンジ内で停滞していた暗号資産市場だが、複数の強力なマクロ・政策材料が重なったことで相場全体が強力に上放れる展開となった。


今回の相場変動の初動要因としては、主に以下の3点が挙げられる。

① 米財務省による国債買い戻し(バイバック)規模の拡大と利回り低下
米財務省は、残存10〜20年債および20〜30年債を対象とする流動性支援目的の買い戻しについて、1回あたりの上限を現行の20億ドルから「少なくとも40億ドル」へと倍増させる方針を表明した。
この変更は9月9日から適用され、11月4日までの今四半期を通じて継続される。

発表に伴い、前日に約20年ぶりの高水準を記録していた30年債利回りは5.27%台から5.20%割れへと低下し、為替市場でもドル安・円高が進行。このマクロ環境の変化を受け、21時半頃から市場で出来高を伴う買いが明確に増加し始めた。

今回の措置はFRBによる国債買い入れ(QE)ではないものの、政府が長期債の買い手となり市場へ流動性を供給するスキームであり、実質的なQE(金融緩和)に近い色彩を帯びている。
長期金利低下とドル安、さらに米国の財政状況への警戒から、利息を生まない代替資産への資金流入が加速した。

また、株式市場ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX)がマイナスで引けるなど、AI・半導体関連株への高値警戒感や資金調達懸念から利益確定売りが発生。
これまでAI・ナスダックへ集中していた資金の一部が、出遅れセクターや流動性供給の恩恵を受けるゴールドや暗号資産といった「希少資産・代替資産全体」へと流出・再配置された可能性があると考えられる(ゴールドも米財務省発表後に6月4日以来の高値となる4,500ドル台を記録)。

② トランプ政権による暗号資産推進政策と政府購入期待
トランプ大統領は同日午後、ホワイトハウスに暗号資産業界およびテクノロジー業界の幹部らを招き協議を行った。
会合では、暗号資産の明確な規制枠組みを定める「Clarity Act」の成立を議会に要請したほか、CFTC(商品先物取引委員会)が分散型デリバティブ取引所「Hyperliquid」を合法・規制準拠の形で米国市場へ導入する取り組みを進めていることなどが言及された。

さらに前日には、SECが暗号資産を活用した資金調達を容易にする新たな規則案を公表している。2025年3月に「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」を設立したトランプ政権のもとで、米政府がビットコイン等の暗号資産を市場から直接購入する可能性への期待が一段と高まった。
かつて規制対象であった暗号資産が、制度化を経て「国家の準備資産」として活用される段階へと移行しつつあるストーリーは、市場心理を大きく力づけた。

③ 現物ビットコインETFへの資金流入と米国投資家の需給改善
現物ビットコインETFフローは、8月17日に約2億9,750万ドル、8月18日に約1億8,930万ドルと、2営業日合計で約4億8,680万ドルの大幅な流入超過となり、上昇前から現物の買い需要が回復していた。

CoinGlassが提供する「Coinbase ビットコインプレミアム指数」を確認すると、週初からマイナス幅が大幅に縮小した。同指数は米国市場における買い需要を測る指標であり、米国の機関投資家・個人投資家の買い意欲が明確に改善傾向にあったことを裏付けている。


【アルトコインへの波及】
今回の急伸劇において注目すべきは、影響がビットコイン単体にとどまらず、暗号資産全般に広く波及した点である。

イーサリアム(ETH)が前日比+17%超、エックスアールピー(XRP)が+10%超の大幅上昇を記録したほか、トランプ政権の政策的アジェンダや発言を色濃く反映する政治系ミームコイン「TRUMP」に至っては約29%の急騰を見せた。
これは、単なるビットコイン個別の需給改善ではなく、「米政府の流動性供給」と「明確な暗号資産推進政策」の掛け合わせによって、投資家心理が暗号資産セクター全体に対して全面的なリスクオンへと切り替わったことを示している。


【総括と今後の見通し】
市場の資金フローを俯瞰すると、

1. 「AI・半導体(SOX/ナスダック)への過度な資金集中からの利益確定」

2. 「米財務省の長期債買い戻し拡大 → 米金利低下・ドル安(流動性供給)」

3. 「トランプ政権の暗号資産推進・政府購入期待」

という3つの流れが同時に結実し、最終的に暗号資産市場での大規模ショートスクイーズを引き起こしたと総括できる。政権と財務省による意図的なタイミングの整合性も感じさせる動きである。

今後の価格推移においては、現物ETFへの流入継続性、米長期金利の動向、そして「Clarity Act」をはじめとする米国の規制法案・政策の具体化プロセスを注視する必要がある。
好材料が続けば上値追いの展開が意識される一方、米長期金利の再上昇やETFからの資金流出が確認された際には、今回の急伸分の一部が巻き戻されるリスクにも留意したい。


【中間選挙を見据えたトランプ政権の戦略と市場へのインプリケーション】
今回の財務省による買い戻しオペの適用期間(9/9〜11/4)が示す通り、このタイミングでの流動性供給拡大は米中間選挙に向けた株式・リスク資産市場の底上げおよび金利抑制策としての側面を強く帯びている。

トランプ政権としては、中間選挙に向けて良好な経済・市場環境を演出する必要があり、今後も政権・財務省・規制当局が連携して市場にポジティブな刺激を与え続ける可能性が高い。
特に暗号資産分野においては、クリプト業界からの豊富な政治献金や支持基盤の強化を背景に、「戦略的ビットコイン準備金」を通じた市場からの直接購入や、行政指導による法整備の加速など、選挙戦が本格化するにつれて一層強力な手仕込み(アメの供給)を打ち出してくる展開が予想される。

TRUMPコインをはじめとする政治関連銘柄やアルトコインの大幅上昇が象徴するように、市場はすでにこうした政治的思惑を敏感に織り込み始めている。
マクロの流動性サポートと政策的な追い風が合致する中、一時的な金利の揺り戻しには注意が必要であるものの、中間選挙通過にかけては政権主導の「資産効果演出」が暗号資産市場全体の下値を強力に支える構造が続くと考えられる。 



[BTC/USD日中チャート(5分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[BTC/JPY日中チャート(5分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米BTC現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、BTC価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がBTC価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[暗号資産全体の清算額]

(緑のバーがロング・赤のバーがショート)
(Coinglass提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[Coinbase Bitcoin Premium Index]

(緑・赤のラインがプレミアムレート / 黒線がBTC価格)
(Coinglass提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



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