2026/08/10

暗号資産週間レポート(2026.8.2~2026.8.8)
地政学リスク後退・利上げ観測後退でBTCに底堅さ、CLARITY法案採決は9月15日へ


【8/2~8/8週のサマリー】

・米・イラン協議の進展でホルムズ海峡の航行再開期待が浮上
・弱い米雇用統計でFRBの9月利上げ観測が後退
・CLARITY法案の採決は9月に持ち越し、9月15日の上院再開後に投票見通し
・金融庁、暗号資産・ステーブルコイン課を新設


【暗号資産市場概況】

8/2~8/8週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+3.65%の10,252,700円、ETH/JPYの週足終値は同+4.21%の302,875円(※終値は8/8の当社現物EOD[8/9 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、COLDCARDの脆弱性を悪用したビットコイン流出事件が週初の警戒感を高め62,000ドル台前半まで下落する場面があったものの、Strategy社の資金調達・財務対応、米・イラン協議の進展による地政学リスク緩和期待、および週末の弱い米雇用統計を受けたFRB利上げ観測の後退が相次いで好感され、一時65,000ドル台まで持ち直す底堅い展開となった。

週初の3日、ビットコインは一時62,000ドル台前半まで下落。7月30日に発生したCOLDCARDの脆弱性を悪用したビットコイン流出は、週末にかけて被害規模が判明し、8月3日に市場で警戒感が高まったことから、ビットコイン価格の下押し要因となった模様。今回の流出はコールドウォレット全般の安全性に問題があることを示すものではなく、特定のファームウェアに存在した脆弱性が悪用されたものとみられている。

また同日夜には、Strategy社が1,638BTCを約1.05億ドルで売却したほか、普通株式の追加発行で約2.9億ドルを調達し、これらを原資に8,120万ドル相当の優先株STRCを買戻し、ドル準備金も2.5億ドル積み増したことを公表。BTC売却・株式発行は需給面での希薄化要因となる一方、優先株配当の原資確保や財務基盤の強化につながる動きとして市場では好感された模様で、米国株式市場の取引開始後にはStrategy(MSTR)株価が上昇し、ビットコインも連れ高となった。

一方、米・イラン情勢では、週初から緊張緩和の兆しがみられ、その後も協議が進展した。2日にはトランプ大統領が、イランとの合意の大枠がまとまりつつあるとして予定していた対イラン攻撃を見送ると表明。その後、5日にはイランとオマーンがホルムズ海峡を通過する航路の座標について合意し、7日には米政府高官が両国の協議で進展があり、合意が近いとの見方を示した。ホルムズ海峡の航行再開につながれば、エネルギー供給への懸念や原油価格上昇を通じたインフレ圧力が後退するとの期待から、金融市場ではリスク回避姿勢が和らいだ。こうした地政学リスクの後退が、週初の下落から持ち直していたビットコインの上昇を支えたと考えられる。もっとも本稿執筆時点では、イランとオマーンの協議は進展しているものの、イラン側はホルムズ海峡の再開に米国による制裁解除や補償などを要求しており、米・イラン間の直接協議も行われていない。海峡再開や両国の合意にはなお不透明感が残っている点には留意が必要だ。

週末7日、7月の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数が前月比2.3万人減と市場予想に反して減少。CMEのFedWatch Toolによると9月会合での利上げ確率は55%から44%に低下し、雇用情勢の減速を受けた利上げ観測後退がビットコインを含むリスク資産を支える材料となり、ビットコインは一時65,000ドル台を回復する場面も見られた。

さらに、米国のスポットBTC ETFには週を通じて資金流入が続き、ビットコインの下落局面での下支え要因となったとみられる。

なお、CLARITY法案については、倫理規定などを巡る調整が続く中、ジョン・スーン上院院内総務が夏季休会前の採決を見送る方針を表明し9月以降に持ち越された。ただし、休会入り直前には9月の採決に向けた手続きが開始されており、上院再開後に審議入りに向けた手続き上の採決(クロージャー投票)が9月15日午後2時15分(米国東部時間)に行われる見通しとなっている。

今週は、米7月CPI・PPIや小売売上高などの経済指標に注目。7日の弱い米雇用統計を受けて後退したFRBの9月利上げ観測が、指標発表を経てさらに後退するか、それとも巻き戻るか、米金利・ドルの動向が焦点となる。また、米・イラン協議の進展やホルムズ海峡の再開を巡る動向にも注目したい。為替面では、ベッセント米財務長官が追加の為替介入の可能性に言及しており、ドル円の動向にも注意が必要。仮に介入が実施されれば、一時的に円高方向に振れやすく、BTC/USDが上昇する局面でもBTC/JPYの上値が抑えられる点には留意したい。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米BTC現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、BTC価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がBTC価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米ETH現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、ETH価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がETH価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米XRP現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(日足)、XRP価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がXRP価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【8/2~8/8週の主な出来事】


【8/9~8/15週の主な予定】



【今週のひとこと】金融庁、組織再編にあたり「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設

金融庁は2026年8月7日付で組織再編を実施し、暗号資産およびステーブルコインに関する業務を専門的に所管する新たな部署として「暗号資産・ステーブルコイン課」を新設しました。今回の再編は、政府が掲げる「資産運用立国」の実現や、デジタル技術を活用した金融サービスの拡大、さらには暗号資産を悪用した詐欺やマネー・ローンダリングへの対応強化といった新たな行政課題に対応することを目的としています。

新設された同課は、これまで総合政策局リスク分析総括課の下で暗号資産関連業務を担っていた「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官室」を格上げする形で設置され、新たに創設された「資産運用・保険監督局」の直下に配置されました。参事官室から独立した課への昇格は、暗号資産分野に対する金融庁の監督・企画体制を一段と強化する姿勢を示すものと受け止められています。

また、新課の下には暗号資産交換業者などの監督を担う「暗号資産モニタリング室」が引き続き設置されるほか、従来のイノベーション推進機能を引き継ぐ「イノベーション推進室」と、新たに「デジタル決済企画室」が設けられました。これにより、事業者への監督やモニタリング機能と、制度設計や政策立案といった企画機能が一元的に管理される体制となりました。

今回の組織再編では、「資金決済課」も新設され、決済関連業務の再編が行われています。その中でも注目されるのは、新組織の名称に「ステーブルコイン」が明記された点です。これは、2023年6月の改正資金決済法施行によってステーブルコインが国内で制度的に解禁され、法定通貨を裏付けとする電子決済手段として発行・流通が可能となったことを背景に、金融庁が今後の制度整備や監督体制の強化を重視していることを示しています。

さらに、暗号資産を取り巻く制度環境は大きく変化しています。2026年7月には暗号資産規制を資金決済法から金融商品取引法へ移管する改正法が成立し、また2026年度税制改正大綱では暗号資産取引に対する申告分離課税の導入方針も示されました。こうした制度整備の進展に合わせ、金融庁としても専門部署を設置し、投資家保護や市場の健全な発展に向けた監督体制を強化する狙いがあるとみられます。

今回の「暗号資産・ステーブルコイン課」の新設は、暗号資産およびステーブルコインを単なる新興技術や実証実験の対象ではなく、日本の金融市場を構成する重要な金融インフラとして位置付けた象徴的な取り組みと言えます。今後は、交換業者に対するモニタリングの高度化やAML/CFT対応の強化に加え、ステーブルコイン、暗号資産ETF、Web3関連制度などの政策検討が一層加速していくことが期待されます。




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



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