2026/09/16

暗号資産緊急レポート
米暗号資産規制「クラリティ法案(CLARITY Act)」 上院手続き採決否決の背景と市場への影響


【SBIVCトレード 暗号資産緊急レポート】

2026年9月15日、米上院本会議にて「クラリティ法案(CLARITY Act)」の審議入りに向けた討論終結(Cloture)採決が行われたが、可決に必要な60票に届かず「49対50」で否決された。

【背景と重大性】本法案は単なる暗号資産業界の規制整備にとどまらず、ベッセント米財務長官が推進する「ステーブルコインを通じた米国債(T-Bills)需要の創出とドルの基軸通貨防衛戦略」の第二段階を担うものであった。

【影響】11月の中間選挙に伴う議会日程の都合上、2026年内の法案成立は期待薄となり、包括的な枠組みの構築は2027年以降の次期議会へ持ち越される可能性が高まった。

【市場反応】法案成立期待の剥落により、ビットコインが74,900ドル台まで下落(-5.7%超)したほか、暗号資産関連株(Coinbase, Circle, Robinhood)が大幅安となった。

【今後の展望】当面の制度設計はSEC・CFTCの行政規則に委ねられる。短期的にはFOMC(9/17未明)などのマクロ要因や現物ETF資金フローへの依存度が高まる。

クラリティ法案の位置づけ:ベッセント財務長官の「国家・財政防衛戦略」

本法案を理解する上で不可欠なのが、米財務省が公式に進める「デジタルアセットを活用した米国の財政防衛戦略」である。

① 米国債需要の促進とドルの基軸通貨維持(公式戦略)

ベッセント財務長官は議会公聴会等において、「米国債に裏打ちされたステーブルコインの法整備は、ドルの基軸通貨としての地位を強固にし、将来的に2兆~3兆ドル規模の米国債需要を生み出す」との見解を示している。

ステーブルコイン発行体は裏付け資産(リザーブ)として大量の米国短期国債(T-Bills)を保有するため、民間のデジタルドル普及がそのまま「米国政府の新たな資金調達源」となる構造が狙いである。

② 「トレジャリー・ツイスト(国債救済戦略)」との連動

財務省が進める債務管理政策(長期国債の買い戻しと短期国債の発行拡大)において、ステーブルコインは「新発行される短期国債の確実な受け皿」として位置づけられている。深刻な財政赤字と利回り上昇(金利高)に直面する中、デジタル時代における「ドルと米国債の自動購入インフラ」としてステーブルコインを活用する狙いがある。

③ 法制化による「国債購入の構造化」プロセス

米国のデジタルアセット法制は以下の2段階で進められてきた。

第1段階:GENIUS法(成立済)

ステーブルコイン発行体に対し、発行額と同額の現金および「93日以内に満期を迎える米国短期国債(T-Bills)」での裏付けを義務化。

第2段階:CLARITY Act(今回の法案)

暗号資産市場全体のルールを明確化し、伝統的金融機関や機関投資家の参入ハードルを大幅に下げる。

金融市場では、CLARITY Actが成立して市場の信頼性が高まることで、「暗号資産市場の制度化 → ステーブルコインの普及加速 → 米国債(T-Bill)需要の強制確保」という持続的な循環が完成すると期待されていた。

9月15日 上院手続き採決の結果

賛成49票対反対50票(討論終結・本会議審議入りに必要な60票を確保できず否決)。

主な争点:

  • 暗号資産の分類とSEC/CFTCの管轄権画定。
  • ステーブルコイン保有者への利息・報酬支払いの扱いと地域銀行からの預金流出懸念。
  • 公職者の倫理規定(終盤最大の焦点):大統領等の公職者による暗号資産事業への関与制限。共和党側が126項目の修正を受け入れたものの、民主党側との対立が解消しなかった。

政治的インプリケーション:

今回の採決は手続き上の関門であったが、11月3日の中間選挙に伴い上院は10月5日~11月6日まで休会に入る。実質的な審議日程が10月上旬で切れるため、市場では「2026年内成立の可否を事実上左右する決定的な節目」と捉えられており、年内成立の道筋は極めて厳しくなった。

市場の反応

国家的な規制枠組みの完成とそれに伴う機関投資家資金の流入を事前に織り込んでいた市場では、採決結果を受けて急速なポジション整理が発生した。

暗号資産市場:

ビットコイン(BTC):日本時間9月15日5:00頃に一時79,000ドル台後半まで上昇していたが、協議難航の報道から反落。採決否決を受けて前日高値から5.7%超下落し、16日3:45頃には74,900ドル台まで急落。

主要アルトコイン:イーサリアム(ETH)が前日高値比9.8%超下落の2,360ドル付近、エックスアールピー(XRP)も同15%超下落の1.26ドル台まで値を下げた。

暗号資産関連株:

法案見送りによる規制の不確実性が嫌気され、主要指数を大きく下回る大幅安となった。

  • コインベース(COIN):-10.10%
  • サークル(CRCL):-11.41%
  • ロビンフッド(HOOD):-3.39%

(参考)ナスダック:-0.78% / S&P500:-0.45%

今後の焦点と見通し

① 行政当局(SEC・CFTC)による暫定運用の先行

立法が停滞したため、当面の業界規制はSECやCFTCなどの行政規則(ルールメイキング)による「暫定運用」に委ねられる。SECのアトキンス委員長は立法を支持しつつも、成立の有無にかかわらず8月に提案した「Regulation Crypto Assets」などを軸に自庁規則の整備を進める方針を明言している。

② スケジュールと2027年以降への持ち越し

選挙後のレームダック期間(11月中旬以降)に法案が再浮上する可能性は残るものの、優先度の高い予算関連法案が控えるためハードルは高い。包括的な法整備を前提としていた取り組みや機関投資家向けサービスは、2027~2028年頃までスケジュールが後ろ倒しとなる可能性が高い。

③ 総括:米国の財政防衛シナリオの遅延と短期相場

今回の否決は、暗号資産業界だけでなく「米財務省が進める国債の新たな需要創出シナリオの足踏み」も意味する。

個別の政策材料による追い風が失われたことで、価格形成の主軸はマクロ要因へシフトする。当面は日本時間9月17日未明のFOMCと、下落局面における現物ETFへの資金流入の持続性が、相場の底堅さを見極める最大の判断材料となる。

BTC/USDチャート(5分足)

BTC/USD チャート(5分足)

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

BTC/JPYチャート(5分足)

BTC/JPY チャート(5分足)

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

米BTC現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計(週足)、BTC価格

米BTC現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計(週足)、BTC価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計 / 橙線がBTC価格)

(SoSoValue提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

米ETH現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計(週足)、ETH価格

米ETH現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計(週足)、ETH価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計 / 青線がETH価格)

(SoSoValue提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

米XRP現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計(週足)、XRP価格

米XRP現物ETFの資金流入出と運用資産残高合計(週足)、XRP価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計 / 橙線がXRP価格)

(SoSoValue提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)

Coinbase Bitcoin Premium Index

Coinbase Bitcoin Premium Index

(緑・赤のラインがプレミアムレート / 黒線がBTC価格)

(Coinglass提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



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