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前提:クラリティ法案が米国上院銀行委員会を通過
2026年5月14日、米上院銀行委員会はH.R.3633「Digital Asset Market Clarity Act of 2025(CLARITY Act)」、いわゆるクラリティ法案を15対9で可決し、上院本会議での審議に進みました。
クラリティ法案は、暗号資産(仮想通貨)の市場構造、SEC・CFTCの監督範囲、銀行によるデジタル資産関連業務、ステーブルコイン利回り、破産時の顧客資産保護などを包括的に扱う法案です。
今回は同法案が暗号資産に与える影響を考察します。
結論として、クラリティ法案は直近半年ほどポジティブなニュースがなかった暗号資産業界にとって、久しぶりのポジティブな材料と言えます。
短期的には市場センチメントの改善が期待される一方、中期的には即時の需給改善というよりも、米国規制リスクプレミアムの低下と機関投資家のコンプライアンス障壁低下を通じた間接的な効果が期待されます。
クラリティ法案は何を変えるのか
クラリティ法案は、デジタル資産市場におけるSECとCFTCの役割、トークン発行、取引所・ブローカー・ディーラー、銀行業務、ステーブルコイン報酬、AML、DeFi、破産時の顧客資産保護などを包括的に整理する法案です。
上院銀行委員会の資料では、ネットワークトークンを「ancillary assets(付随的資産)」と定義し、一定の開示義務を課しながら、トークン自体をコモディティとして扱う方向性が示されています。
また、Regulation Crypto(暗号資産の規制)というSEC登録免除枠を設け、ancillary assetsが投資契約に関連して提供・販売・配布される場合の資金調達ルールを整備しています。
こうしたトークンの法的位置づけの明確化は、ビットコイン(BTC)そのものよりも、イーサリアム(ETH)、ソラナ(SOL)などのスマートコントラクト系トークンにとって、より大きな意味を持ちます。
ビットコインはすでに市場からデジタル商品的に扱われてきた一方、その他のトークンは証券性リスクが内在しており、価格形成のディスカウント要因になってきました。
法的位置づけが明確になれば、こうしたディスカウントの縮小につながる可能性があります。
また暗号資産関連企業についても、規制の不明確さが事業リスクとして評価されてきた側面があります。
規制の明確化が進めば、こうしたリスクプレミアムの低下を通じて企業価値の再評価につながる可能性があります。
銀行・金融機関への影響
法案のSection 401は、金融持株会社、国法銀行、州法銀行、一定の信用組合が、既に認められている業務の範囲内で、デジタル資産やブロックチェーン技術を利用できることを明確化しています。
対象には、決済、貸付、カストディ、取引が含まれます。
これは暗号資産市場全体にとって重要な変更です。銀行・証券・カストディ事業者の参入余地が広がれば、ビットコインをはじめとするデジタル資産は、より伝統金融のポートフォリオに組み込まれやすくなると考えられます。
また法案は、ステーブルコイン残高に対する受動的な預金類似の利息・利回りを禁止する一方で、取引ベースのリワードなどは、SEC、CFTC、財務省の共同ルールのもとで認める方向性を示しています。
この点は、銀行業界と暗号資産業界の利害が対立する論点の一つです。
銀行側は、ステーブルコインに対する報酬条項が預金流出につながる可能性を懸念しています。そのため、この問題は、法案審議における主要な争点となっており、上院本会議に向けた修正協議でも再び議論される可能性が高いです。
さらに法案には、暗号資産関連事業者が破綻した場合の顧客資産保護を明確化する内容も含まれています。
具体的には、ancillary assetsおよびdigital commoditiesを破産手続き上の顧客財産として扱い、デジタル商品取引について破産時セーフハーバーを整備する規定も盛り込まれています。
FTX破綻以降、機関投資家にとって重要な論点の一つは、取引所・ブローカー・カストディアンが破綻した場合、自社の資産がどう扱われるかという点です。
破産時の顧客資産保護が明確になることは、ビットコインを含むデジタル資産全体の制度的信頼性の向上につながります。
暗号資産価格への影響
こうした制度整備は、暗号資産市場にとって追い風となる可能性があります。
特に、規制上の不確実性の低下や機関投資家の参入環境改善を通じて、市場全体にポジティブな影響を与えることが考えられます。
その主な経路は以下の3つです。
第一に、規制リスクプレミアムの低下です。トークンの法的位置づけや暗号資産事業者に関するルールが明確になれば、規制上の不確実性が低下し、これまで市場が織り込んできたディスカウントの縮小につながる可能性があります。
第二に、機関投資家のコンプライアンス障壁の低下です。金融機関によるデジタル資産の取り扱いルールや顧客資産保護、AML(マネーロンダリング対策)などが明確化されることで、投資委員会やリスク管理部門の承認を得やすくなり、機関投資家の参入を後押しする可能性があります。
第三に、ビットコインの基軸資産としての位置づけの強化です。機関投資家の資金が暗号資産市場全体に流入する場合、流動性、時価総額の大きさ、ETFアクセス性などの観点から、ビットコインが主要な投資対象となる可能性があります。
ただし、ビットコインはすでにスポットETFによって、機関投資家が投資しやすい環境が整っています。
そのため、クラリティ法案による恩恵は、ETHやSOLなどのアルトコインや暗号資産関連企業に比べれば相対的に小さい可能性があります。
イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)をはじめとするアルトコインについても、法的位置づけが明確になることで、これまで市場が織り込んできた規制リスクの低下が期待されます。
しかし、それが直ちにこれらのアセットの価格上昇につながるかについては、慎重に判断する必要があります。
短期的にはセンチメント改善で資金流入が期待される一方で、規制が明確化された後は、それぞれの資産が実際にどのような価値を生み出しているかというファンダメンタルズも、これまで以上に重視されるようになるでしょう。
特にイーサリアムやソラナなどのスマートコントラクト系プラットフォームの主要なユースケースはDeFiアプリケーションですが、直近ではハッキング被害の増加などもあり、資金流入は伸び悩み、市場センチメントも悪化しています。
そのため、今後の資金フローを考える際には、規制環境の改善だけでなく、実際の利用状況やネットワーク価値といった点も踏まえ、総合的に判断する必要があるでしょう。
総括
クラリティ法案の目的は、暗号資産市場全体のルールを明確化し、トークンの法的位置づけや市場参加者に求められるルールを整理することにあります。
今回、上院銀行委員会を通過したことで、その実現に向けた議論は一歩前進したと言えます。
短期的にはセンチメント改善が期待されます。一方で中期的には、銀行、カストディ、取引所、ブローカー、ステーブルコイン、DeFi(ディーファイ:分散型金融)、トークン発行体などを含む市場インフラが制度の枠組みに取り込まれることで、暗号資産市場全体の制度的信頼性向上につながる可能性があります。
特に、規制上の不確実性の低下や機関投資家の参入環境改善を通じて、暗号資産市場への資金流入を後押しする効果が期待されます。
もっとも、その影響は資産や事業領域によって異なるため、今後の制度設計や市場環境の変化についても引き続き注視する必要があります。
投資判断は、各自のリスク許容度、投資目的、法務・税務・会計上の確認に基づいて行ってください。
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提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research
