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第6回 暗号資産のWeb3活用|ネットワーク手数料とは?仕組みと役割をわかりやすく解説

第6回 暗号資産のWeb3活用|ネットワーク手数料とは?仕組みと役割をわかりやすく解説

公開日: 2025年8月29日

最終更新日: -

▼目次

    「暗号資産のWeb3活用」シリーズでは、SBI VCトレードをご利用の皆さまや、暗号資産(仮想通貨)の活用に関心のある皆さまに向けて、暗号資産を「保有」するだけでなく、積極的に「活用」するための視点をご紹介しています。

    Web3サービスを利用するときに耳にする機会が多い「ガス代」。これは、ブロックチェーンでトランザクション(※1)を送信する際にブロックチェーンネットワークに支払う手数料の一種であり、ネットワークを安定的に維持するための仕組みです。しかし、なぜこのような手数料が必要で、一体誰に支払われるのか、疑問に感じたことがある方もいるのではないでしょうか。

    本記事では、ブロックチェーンネットワークに支払う手数料の基本的な仕組みや役割に加え、暗号資産取引所(※2)、ウォレット、ブロックチェーンゲーム、NFTマーケットプレイスとの関係性にも触れながら解説します。


    1. ネットワーク手数料とは?

    ネットワーク手数料とは、ブロックチェーン上でトランザクションを送信する際にかかる手数料のことです。

    ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンでは、ユーザーがウォレットから送信したトランザクションを、ネットワークに参加しているノード(後述のマイナーやバリデータ)が処理しています。この処理に対する報酬として、ユーザーはノードにネットワーク手数料を支払います。この仕組みにより、ブロックチェーンは中央管理型ではなく、分散管理型のネットワークとして機能しています。

    ネットワーク手数料は、銀行送金の振込手数料やECサイトの決済手数料と似た役割を持ちますが、その金額は固定ではなく、ネットワークの混雑状況やデータサイズなどで変動します。
     
    なお、ネットワーク手数料の名称はコンセンサスアルゴリズムの種類によって異なり、例えばPoW(Proof of Work)では「取引手数料(transaction fee)」、PoS(Proof of Stake)では「ガス代(gas fee)」などと呼ばれます(※3)。

    2. なぜネットワーク手数料が必要なのか?

    ネットワーク手数料は、ブロックチェーン上でトランザクションを送信する際、処理を担うノードに支払われます。その主な役割は、以下の通りです。

    ネットワーク維持のインセンティブ

    ブロック生成に参加するノードにとってこの手数料は、電気代や設備投資等のコストを賄うための重要な収入源であり、ネットワークを安定的に維持するための原動力となります。

    スパム攻撃の防止

    もしトランザクションが無料で送信できると、悪意あるユーザーが大量の無意味な取引を発生させ、ネットワークを停滞させる恐れがあります。ネットワーク手数料という仕組みがあることで、攻撃のコストが高くなり、抑止効果が生まれます。

    3. ネットワーク手数料を受け取るのは誰?

    ネットワーク手数料を受け取る主体は、ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズム(※4)によって異なります。代表的なコンセンサスアルゴリズムと受け取り手に、PoW(Proof of Work)のマイナーとPoS(Proof of Stake)のバリデータがあります。

    マイナー(PoW)

    マイナー(Miner)とは、高性能なマシンで膨大な計算競争を行い、正しいハッシュ値を見つけることで新しいブロックを生成する役割を担うノードのことです。

    PoWはハッシュパワー(計算資源)による競争で報酬を獲得するため、マイナーの電気代や設備投資にかかる負担が大きいことが特徴です。
    新しいブロックを最初に承認したマイナーは、報酬として取引手数料とブロック報酬(新規発行分)を得ることができます。

    代表的なPoW型のチェーンには、ビットコインやイーサリアム(2022年9月のマージ以前)(※5)などがあります。

    バリデータ(PoS)

    バリデータ(Validator)とは、ブロックチェーンへのデータの格納、トランザクションの処理、新しいブロックの追加の役割を担うノードのことです。

    PoSでは、計算資源を投入する代わりに暗号資産をステーク(預け入れ)することでネットワークの保護に参加できます(※6)。バリデータはステークした暗号資産の量やランダム性などにより選ばれ、正しい処理を行うと、報酬としてガス代の一部(※7)とステーキング報酬(新規発行分)を得ることができます。一方、不正行為をした場合は、預け入れた資産が没収(スラッシング)されます。

    代表的なPoS型チェーンには、イーサリアム(2022年9月のマージ以降)やオアシスなどがあります。


    4. ネットワーク手数料と各サービスの関係性

    この章では、「暗号資産交換業者(販売所・取引所)」「ウォレット」「ブロックチェーンゲーム」「NFTマーケットプレイス」の代表的な利用シーンを想定し、ネットワーク手数料を支払う主なタイミングを解説します。

    なお、ネットワーク手数料を誰が負担するかは、サービスごとに異なります。また、ほとんどの取引所やプラットフォームでは独自の手数料を課していますが、これはブロックチェーンネットワークに対して支払う「ネットワーク手数料」とは異なる点にご注意ください。

    暗号資産交換業者(販売所・取引所)

    販売所・取引所内で暗号資産を取引する場合、ブロックチェーン上ではなく取引所のシステム上に記録されるため、ネットワーク手数料の支払いはありません。このように、ブロックチェーンの外側で暗号資産の取引を処理する方法を「オフチェーン取引」といいます。

    一方で、取引所口座とユーザーのウォレット間で暗号資産を入出庫(送金)したり、ほかの取引所へ送付(送金)したりする際には、トランザクションが作成・送信されるため、ネットワーク手数料を支払います。このように、ブロックチェーン上で暗号資産の取引を処理する方法を「オンチェーン取引」といいます。

    SBI VCトレードの各種手数料はこちらをご覧ください。

    ウォレット

    ウォレットはトランザクション送信の窓口となります。
    「メタマスク」などの自己管理型ウォレットでは、ネットワーク手数料の支払いはユーザー自身が行います。

    ブロックチェーンゲーム

    ブロックチェーンゲームでは、アイテム取引やキャラクター強化などの操作がオンチェーンで行われる場合、操作ごとにネットワーク手数料(ガス代)がかかります。

    ゲーム特化型ブロックチェーンの「オアシス(Oasys)」は、ロールアップ(※8)とブリッジ(※9)の際にガス代がかかりますが、ロールアップにかかるガス代はVerse(※10)を開発したゲーム開発会社が負担します。

    SBI VCトレードではオアシス(OAS)をお取り扱いしています。
    詳しくは「オアシス(OAS)/チャート・価格(レート)」をご覧ください。

    NFTマーケットプレイス

    NFTの取引でネットワーク手数料を支払うのは、主に「発行(Mint)」「承認(Approve)」「所有者移転」のタイミングです。

    ・発行(Mint):デジタルデータをブロックチェーン上に記録するための処理です。
    ・承認(Approve):スマートコントラクト(※11)がウォレット内のNFTを動かすことを許可するための処理です。
    ・ 所有者移転: NFTを他者のウォレットに送る処理です。

    5. まとめ

    ネットワーク手数料は、ブロックチェーン上でトランザクションを実行するために必要な手数料であり、ブロックチェーンネットワークを安定的に維持するための仕組みです。
    この手数料は、ネットワークに参加してブロックを生成・承認するマイナー(PoW)やバリデータ(PoS)への報酬となり、同時にスパム攻撃の抑止にも機能します。

    ネットワーク手数料はWeb3サービスの多くの利用シーンで支払います。どのタイミングでこの手数料がかかるのかを事前に理解しておくことで、Web3サービスを円滑に利用できるようになるでしょう。
    本記事が、ネットワーク手数料の仕組みや役割を理解するための一助になれば幸いです。


    (※1)トランザクションとは、ブロックチェーンネットワーク参加者間の価値移転の取引記録のことです。トランザクションはウォレットが作成し、ノードで処理(検証、ブロック生成)され、ブロックチェーンに記録されます。
    (※2)正式には「暗号資産交換業者が提供する販売所・取引所及び各種サービス」ですが、文中では一般的な理解のしやすさを優先し、「暗号資産取引所」と記載しています。
    (※3)ネットワーク手数料の名称は各コミュニティで異なる場合があります。
    (※4)コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンのノード間で取引の正当性を検証し、合意形成するためのルールやプロセスのことです。
    (※5)マージ(The Marge)とは、イーサリアムブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSへ移行する大型アップデートのことです。2022年9月15日に実装が完了しました。
    (※6)イーサリアムのバリデータ(取引検証者)になる場合、32ETHをデポジットコントラクト(Execution layer)に預け入れて登録処理を行います。
    (※7)イーサリアムでは、2021年8月に実装されたEIP-1559により、ガス代の構成が「基本料金(Base Fee)」と「優先手数料(Priority Fee)」になりました。基本料金はネットワーク混雑に応じて自動調整されます。優先手数料は、ユーザーが自分のトランザクションを優先的に処理してもらうためにバリデータに支払うチップのようなものです。ユーザーが支払うガス代のうち、基本手数料は全額バーン(破棄)され、優先手数料のみがバリデータの報酬となります。
    (※8)ロールアップとは、Verse(L2)で行われた多数のトランザクションを一つにまとめ、圧縮したうえで、オアシスのHub Layer(L1)に記録する仕組みです。
    (※9)ブリッジとは、異なるレイヤーやブロックチェーン間でトークンを移動させるための仕組みです。
    (※10)Verse(ヴァース)とは、オアシス独自のレイヤー2(L2)ブロックチェーンです。各Verseは、特定のゲームやプロジェクトのために構築されます。
    (※11)スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上にある契約を自動で実行するプログラムです。

    参考
    ・イーサリアム「マージ
    ・イーサリアム「ガスとフィー(手数料)
    ・イーサリアム「ETHのステーキング方法
    ・Oasys “A Guide to Layer 2s and the Verse Layer on Oasys
    ・Oasys “Developers Documentation
    ・Blockchain Council “How Bitcoin Fees Work?