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デジタルアート、NFTアートとは?仕組みと購入のメリット・デメリットを解説

デジタルアート、NFTアートとは?仕組みと購入のメリット・デメリットを解説

公開日: 2024年3月19日

最終更新日: -

デジタルアートとは、一般にPCやタブレットなどのデジタルデバイスを使って制作されたアート作品のことを指します。最近では、NFT(Non-Fungible Token)の登場により、デジタルアートのオリジナル性を確立できたり、所有者情報の確認が可能になったりしました。この記事では、デジタルアートやNFTアートの仕組みや主な作品、購入のメリット・デメリットについて解説します。
 

目次
デジタルアートとは?
          デジタルアートの種類
 
NFTアートはデジタルアートの一種
          NFTとは
          NFTの活用事例
          NFT取引の仕組み
 
デジタルアート購入のメリット
          アート市場はコロナ禍以降も伸びている
          自宅でオンラインを使って取引できる
          NFTで保証されている
 
主なデジタルアート作品
          Nishikigoi NFT
          手塚プロダクション
 
デジタルアートの売買と主なマーケットプレイス
          国内の主要マーケットプレイス
 
デジタルアートの今後の課題
          無許諾NFTへの対処
          悪意のあるユーザーとマネーロンダリング
 
まとめ
 

デジタルアートとは?

 
デジタルアートとは、一般にPCやタブレットなどのデジタルデバイスを使って作られる芸術作品のことです。伝統的な絵画や彫刻とは異なり、新しい技術を活用して生み出される「メディアアート」の一環とされています。デジタルアートはコンピュータ上で完全に作成されるものから、既存の素材を加工したものまで多岐にわたります。さまざまなジャンルで展開されていて、イラストや絵画だけでなく、動画、ゲーム、音楽などの分野における作品にも注目が集まっています。

デジタルアートの種類

1.デジタル絵画
水彩や油彩絵画などのアナログな絵画を、デジタル上で描けるように応用した絵画です。
 
2.デジタルイラストレーション
デジタルツール(PCやタブレットなど)で書かれたイラスト作品です。
 
3.デジタル写真
デジタルカメラで撮影した写真を、PCを使って加工した作品です。
 
4.ゲームデザイン
PCゲームのためのデザインです。
 
5.VFX(Visual Effects)
VFXは「視覚効果」という意味があります。現実の世界では目にすることのできない映像をデジタルカメラやコンピュータなどのCGを使って合成・加工する技術です。
 
 

NFTアートはデジタルアートの一種

 
 
デジタルアートのうち、NFT技術が使われているアートは「NFTアート」と呼ばれることがあります。デジタルアートはデジタル機器を使って作られるアート作品で、様々な可能性を秘めていますが、アナログ作品とは異なり、簡単にコピーされてしまうリスクがあるので注意が必要です。
 
このリスクを回避するために、NFTという認証技術が存在します。NFTは、デジタルアートにおける証明書のような役割を果たし、それがひもづけられた作品は「NFTアート」と呼ばれるのです。NFTアートは、デジタル上で、唯一無二であることが証明できるという特徴があり、その結果、デジタルアートの価値が一気に高まりました。そして、市場での売買も活発化し、億単位で取引されるデジタルアートも出てくるようになりました。
 
デジタルアートで有名なのはビープル(Beeple)氏が作成した「エブリデイズ:最初の5000日(Everydays: the First 5000 Days)」で、2021年3月12日に6,940万ドル(日本円で約75億円)という値がつき、当時のアーティストオーディションの史上最高額を記録し、話題となりました。
 

 
出典:NFTマーケットプレイスにおける 正規版コンテンツ流通促進に係る調査事業報告書

NFTとは

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を使ってデジタルデータに唯一性と真贋性(本物と偽物を区別すること)を付与できる技術のことです。NFTの特徴として、簡単に複製できるデジタルコンテンツに希少性を与えることができるというものがあります。
 
また、NFTはブロックチェーン技術を活用することにより、特定のアプリケーション内だけでなく、オープンな市場で自由にNFTの取引や移転が可能です。さらに、二次流通時には制作者に売却額の一部を還元する仕組みもあり、ブロックチェーンによってNFTの取引履歴を確認できます。
 

NFTの活用事例

NFTは主にアートやゲームなどのデジタルコンテンツで利用されていますが、ドメインネームやチケット、コレクターズアイテムなどにも利用されています。
 
NFTは2010年代からデジタル技術として存在していましたが 、2020年代になって注目されるようになり、2021年に大きな関心を集めるようになりました。2021年のNFTの世界全体での取引金額は176.9億ドルとなり、2020年の8,250万ドルの約215倍に拡大しました。
 

NFT取引の仕組み

発行と一次流通
 

 
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「NFTの動向整理」
          
コンテンツの制作者や知的財産権(IP)の保有者は、マーケットプレイス事業者との利用規約に基づいてコンテンツをアップロードし、簡単にNFTを発行できます。さらに、名称や詳細説明などを入力してNFTに出品し、販売形式(固定価格やオークションなど)を設定することも可能です。購入者が確定すると、出品者と購入者の間で売買契約が成立し、購入者は代金をNFTマーケットプレイス事業者に支払います。そして、代金から手数料が差し引かれた金額が出品者に支払われるのです。これらの取引はすべてブロックチェーン上に記録されたうえで、NFTは移転します。
 
二次流通
 
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「NFTの動向整理」
 
NFTの購入者は、マーケットプレイスなどのプラットフォームを通じて購入したNFTを売却できます。たとえば、保有するNFTを指定した販売形式でマーケットプレイスに出品した後、購入者が確定し代金が支払われ、出品者には一次流通と同様に手数料を控除して入金されます。
また、二次流通では、代金の一部がNFTの発行者にロイヤリティとして支払われることがあります。ロイヤリティは事前に設定されて代金から控除され、NFTマーケットプレイス事業者からNFT発行者に入金されます。
 

デジタルアート購入のメリット

アート市場はコロナ禍以降も伸びている

スイスの金融機関USBと世界最大のアート・フェア「アート・バーゼル」がまとめた資料によると、2021年の世界のアート市場は2020年比で+29%の約651億ドル(約8.8兆円)となり、2019年の水準も上回りました。アートは株や債券などの伝統資産との相関係数が低く、富裕層の分散投資の対象としても注目されています。近年は、デジタルアートやNFTアートの普及やオンライン販売の広がりによって、幅広い地域や年代の人がアートに投資できるようになりました。
 
ただ、2021年の日本のアート市場規模は2,363億円で、世界の規模に対して3〜4%のシェアしかありません。
 

 
出典:クールジャパン政策課「アートと経済社会について考える研究会」
 
GDP全体に占める割合や国民1人あたりの文化GDPも低く、さらにアートへの関心を高める必要があります。
 

 
出典:クールジャパン政策課「アートと経済社会について考える研究会」
 
 

自宅でオンラインを使って取引できる

デジタルアートは実物の芸術作品ではなくデータとして存在するという特性から、オークションハウスやギャラリーに行かずに自宅で手軽に売買することができます。特に2020~2022年は新型コロナウイルスの影響で外出が制限されていましたが、デジタルアートはアナログアートよりも売買がしやすいメリットがあり、人気が高まりました。

NFTで保証されている

NFTを使うことによって、デジタルアートを「一点もの」として保証するだけでなく、取引履歴を残すことができます。取引履歴から作品の所有者や著名な関係者を明らかにすることができるため、安心して取引することができます。
 
また、多くのコレクターは、自慢の作品を広く公開したいと思っています。しかし、デジタルアートをWeb上に公開すると、コピーされて広まるリスクがあります。一方、NFTアートであればオリジナルを識別できるため、見た目が同じものだとしても、コピー品が本物として出回ることはありません。オンラインギャラリーなどで作品を公開しても、オリジナルの価値は失われないのです。さらに、公開によって作品の知名度が上がれば、価値がさらに高まる可能性があります。
 

デジタルアート購入のデメリット

価値が必ず上がるわけではない

NFTを使ったデジタルアートであるNFTアートは、ブロックチェーン技術を使った先進的な仕組みです。しかし、「NFTを使えば複製不可能なデータを作れるので、必ず価値が上がる」と誤解している人もいます。ですから、NFTを発行する事業者は、契約や利用規約を通じて、消費者に適切な説明を行うことが重要です。
 

詐欺や不正の可能性がある

NFTは誰でも簡単に発行できるため、海外ではコンテンツホルダー以外の人々による無許諾のNFTの発行と販売が問題となっています。無許諾のNFTが広まることで、消費者被害の増加や権利者の正規NFTの販売機会の喪失が懸念されているのです。
将来的にさまざまなビジネスモデルでNFTが活用されることが予想されているからこそ、これらの課題に適切に対応し、NFTやデジタルアートの健全な発展を促すことが重要と考えられます。
 

主なデジタルアート作品


 
国内の主なデジタルアート作品を紹介します。

Nishikigoi NFT



出典:クールジャパン政策課「アートと経済社会について考える研究会第2回〜アートと地域・公共〜」
 
山古志地域は世界中に愛好家が増えている「錦鯉」発祥の地です。しかし、新潟県中越地震によって地域の過疎化が進んでいました。そこで、錦鯉をシンボルにしたデジタルアートで山古志地域の電子住民票を兼ねたNFTを発行。すると、世界中のNFT購入者がブロックチェーン上で可視化され、デジタル関係人口を創出することに成功しました。
 
その後、約半年でデジタル関係人口は900人を突破し、実際の村民の813人を上回りました。そして、販売から2ヶ月で約1万点のNFTを販売し、約1億円の独自財源を調達しています。
 

手塚プロダクション

 

出典:NFTマーケットプレイスにおける正規版コンテンツ流通促進に係る調査事業
 
2021年12月13日から「From the Fragments of Tezuka Osamu(手塚治虫のかけらたちより)」でジェネレーティブアートNFT第一弾「鉄腕アトム」の販売・オークションを開始。1つ0.08ETH(約35,000円)の作品1,000点が1時間で完売しました。
 
さらに2022年1月24日には第二弾「火の鳥」、第三弾「ブラックジャック」のジェネレーティブアートNFT(0.08ETH)を販売し、どちらも1~2時間で完売となっています。
 
 

デジタルアートの売買と主なマーケットプレイス


 
デジタルアートの売買の流れと国内主要マーケットプレイスを紹介します。
 
デジタルアートの売買の流れ

出典:NFTマーケットプレイスにおける正規版コンテンツ流通促進に係る調査事業
 
 
1.NFTアートの作者はNFTをMint(発行)し、コンテンツに関する情報をブロックチェーンに記録。
2.MintしたNFTアートをマーケットプレイスに出品。
3.購入するときに、購入者のアドレスや価格などの取引情報をブロックチェーンに記録。
4.NFTの保有者は転売(二次流通)するときに、NFTアートの原作者(著作権者)が収益(ロイヤリティ)を得られるようにすることも可能。
 
 

国内の主要マーケットプレイス

1.SBINFT
●  取扱コンテンツ アート、ミュージック、フォトグラフ
●  支払い・決済 暗号資産(仮想通貨):ETH、MATIC、法定通貨:日本円
 
「マイクリプトヒーローズ」「クリプトスペルズ」「SUSHI TOP SHOT」「オタクコイン」など、国内の有名プロジェクトを扱っています。公認アーティストおよび提携事業者のみがNFTでの出品が可能です。
 
2.Coincheck NFT
●  取扱コンテンツ ゲーム、トレーディングカード、ファッション、アート
●  支払い・決済  暗号資産(仮想通貨):BTC、ETHなど28種類、法定通貨:なし
 
利用にはコインチェックの口座が必要になりますが、決済に使える暗号資産(仮想通貨)の種類の多さが特徴です。
 
3.Adam byGMO
● 取扱コンテンツ アート
●  支払い・決済 暗号資産(仮想通貨):ETH、法定通貨:日本円
 
日本国内の漫画家やイラストレーターのマンガやアート、イラスト作品が出品されており、暗号資産(仮想通貨)のETHのほか、日本円の決済に対応しています。
 

デジタルアートの今後の課題

無許諾NFTへの対処

無許諾NFTには、主に
 
1.原作をキャプチャーした画像や動画
2.原作をベースに二次創作した画像や動画
 
の2種類があります。
 
また、イーサリアムメインネット版のDNS(ドメイン・ネーム・システム)であるENSでは、日本の有名IPの英語名称が第三者に無断で登録されている事例が多く確認されており、消費者は正規版と間違えて無許諾NFTを購入してしまう恐れがあります。
 

出典:NFTマーケットプレイスにおける正規版コンテンツ流通促進に係る調査事業
 
 
無許諾NFTやENSの削除は困難ですが、マーケットプレイスから取り下げて取引できないようにすることは可能です。マーケットプレイスでは、正規品認証のための仕組みを作ることが急務といえるでしょう。

悪意のあるユーザーとマネーロンダリング

パブリックチェーンにおけるデータの記録と管理は、誰でも行うことができます。そのため、悪意を持ったユーザーやクリエイターを完全に排除することはできません。
 
また、NFT取引に関しては、まだ各国の法整備が整っていないため、マネーロンダリングに悪用される可能性が指摘されています。暗号資産(仮想通貨)を介して送金が行われるため、不正な犯罪収益の洗浄が行われる可能性は否定できません。
 
無許諾NFTが多く出回っている中、クリエイターの認証や正規NFTの認証・公示の仕組み構築が今後は重要になるでしょう。
 

まとめ

デジタルアートはNFT技術によってオリジナル性を証明できるようになったことで、新たな投資先として注目を集めています。今後は、アート市場の拡大によってデジタルアートへの関心も高まるでしょう。ただ、悪意のあるユーザーによる無許諾NFTやマネーロンダリングなどの懸念もあるため、きちんとした仕組みや法整備が必要です。