▼目次
本レポートではGameFi(ゲーミファイ)エコシステムに特化したブロックチェーンOasysの概要、及びそのネイティブトークンオアシス(OAS)、ゲームエコシステムの概況解説を行います。
【基本情報】
website:https://www.oasys.games/
X(元Twitter):https://x.com/oasys_games
ホワイトペーパー:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro
GitHub:https://github.com/oasysgames
エクスプローラー:https://explorer.oasys.games/
1.Oasys及び暗号資産オアシス(OAS)の概要
1.1. Oasysの概要
Oasysは、調査時点でバンダイナムコ研究所や、Sega、Square Enix、Ubisoft、Yield Guild Games、KDDI、Rakuten Wallet等々のバリデーターが参加するGameFiエコシステムに特化したマルチレイヤー採用のブロックチェーンネットワークです。
メインネットローンチは2022年10月に第一段階を開始、その後第二段階、第三段階を経て、同年12月に正式ローンチを発表しています。
参考:https://medium.com/@oasys/oasys-mainnet-launches-trading-of-oas-tokens-begins-on-major-cexs-a98fa8b1e672
Oasysのノードバリデータ群
出典:https://staking.oasys.games/validators
レイヤー1には「Hub Layer」と呼ばれるEVM互換のPoSブロックチェーンを採用し、その周辺のレイヤー2には「Verse Layer」と呼ばれる各ゲーム開発者が独自のプライベートな「XX-Verse」を構築できるOptimistic rollupsネットワークを採用しています。
出典:Oasysホワイトペーパー
ネットワークの仕様上、トラフィックを各ゲームエコシステムが展開されるVerse Layerに集中させ、一方のレイヤー1であるHub Layerはトラフィックが集中しないようFT、NFT、ブリッジ、ロールアップの各コントラクトのみが使用可能になっています。例外的にガバナンスの承認を得て、L1にコントラクトをデプロイすることもありますが、承認なしではデプロイできませんので、L1ネットワークの安定性を乱すようなイベントは起きにくく、高いネットワーク安定性を確保しやすい設計となっています。
なお、Oasysが「プライベートなサイドチェーン」ではなく「プライベートなレイヤー2」をGameFiの基盤として採用している理由は①データ可用性(Data Availability)、②スケーラビリティ、③トランザクションスピード、これら3点において「プライベートなサイドチェーン」よりも「プライベートなレイヤー2」の方が優れているという結論に至ったからだとしています。
出典:Oasysホワイトペーパー
例えば、データ可用性の観点では、レイヤー2のデータは全てレイヤー1に反映されますから、仮にあるレイヤー2(XX-Verse)がダウンしたとしても、レイヤー1が稼働している限りはデータ復旧を技術的に保証できます。つまり、各Verse上のデジタル資産の可用性はレイヤー1によって担保され得るということです。一方、サイドチェーンではこの点を技術的に保証ができませんから、この点においてレイヤー2の方が比較的データ可用性が高いと言えます。
より詳細なOasysの仕様は公式ホワイトペーパーをご参考ください。
公式ホワイトペーパー:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro
1.1.1. Oasys過去の資金調達実績
公開情報によると、Oasysは2022年にプライベートセールとストラテジックラウンドを通じた資金調達を実施。また同年12月にRepublicにてパブリックセールを実施しています。
2022年7月には、Republic Capitalをリードとするプライベートセールにて評価額$150Mで$20Mを調達。Jump CryptoやCrypto.com、Huobi、Kucoin、Gate.io、bitbank等が参加しています。
出典:https://x.com/oasys_games/status/1544499150124994561
2022年12月、バリデーターネットワークの強化、及びゲームパートナーのプール拡大を目的にGalaxy Interactiveや韓国のゲーム大手Nexon等が参加するストラテジックラウンドを実施。調達額は非公開です。
参考:Oasys Completes Strategic Funding Round From Galaxy Interactive and Nexon
2022年12月、Republicにてパブリックセールを実施。498の投資家が参加し、およそ$1Mを調達。
参考:https://republic.com/oasys
2024年8月、SBIホールディングスと戦略的パートナーシップを締結し、資金調達を実施。
参考:https://www.oasys.games/blog/oasys-forms-strategic-partnership-and-secures-funding-from-sbi-holdings/
1.2. 暗号資産オアシス(OAS)の概要
オアシス(OAS)は調査時点(2024年8月30日)の時価総額ランキング第430位、市場価格は$0.0476、時価総額はおよそ8,800万ドル、24時間出来高はおよそ2,900万ドル規模の暗号資産(仮想通貨)です。
OASはOasysのネイティブトークンであり、Oasys上の①ガス手数料の支払い、②Verse構築時の保証金(デポジット)、③分散型ガバナンスのアクセス権、④ステーキング、⑤Oasysエコシステムの決済通貨として用いることができます。
- ガス料金の支払い:Verse LayerからHub Layerにトランザクションをロールアップする際、ブリッジ・コントラクトを使用する際、またはHub Layer上でコントラクトを実行する際に、コントラクトの実行者はガス料金を支払います。
- Verse構築時の保証金(デポジット):Verse構築には100万OAS以上のデポジットを必要とする
- 分散型ガバナンスへのアクセス権:ステーキングによるインフレ率の変更、トレジャリーの使用、Hub Layer上に構築するコントラクトを決定する投票などを含む
- ステーキング:OASをステークすることで報酬を獲得できます。なお、1,000万OAS以上のOASをバリデータコントラクトを介してステーキングすることで、バリデーターになることも可能です。
- Oasysエコシステムの決済通貨:Oasysエコシステムにおける基軸通貨として用いられます。
※なお、Oasysネットワーク全体は、Oasysのネイティブ・トークンであるOASのみを使用するシングル・トークン・エコノミーではなく、各VerseのプライマリートークンであるVerse Tokenや各ゲーム、各dAppsのGame Token、Dapps Tokenで構成されるマルチ・トークン・エコノミーに基づいています。この点の詳細は公式ドキュメントを参考ください。
1.2.1.暗号資産オアシス(OAS)のトークノミクス
出典:Oasysホワイトペーパー
OASの2022年のローンチ時点の最大供給量100億OASの初期配分は上記の通りです。
上は調査時点でのOAS供給量を可視化したドーナツグラフです。現在のOASはローンチ時点で設定された最大供給量100億OASのうち、18.58%程度に相当する18.58億OASが市場に流通しています。
残りの81.42億OASは以下のメインネットローンチ後6年間(72か月)の配布スケジュールに沿って流通します。
なお、以下のスケジュールではメインネットローンチの6年後にはステーク報酬も枯渇することになりますが、この点はメインネットローンチの6年後に分散型ガバナンスを通じてステーク報酬の追加供給を決定する旨が公式ドキュメント(Tokenomicsの項)に記載されています。
参考:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/tokenomics
出典:Oasysホワイトペーパー
1.2.2.暗号資産オアシス(OAS)の市場価格・時価総額・24h出来高
上グラフは2023Q3~2024Q3(更新日時点)間のOASの市場価格を四半期別にプロットしたグラフです。散布図、箱ひげ図、バイオリンプロットを組み合わせて表示しています。下グラフは同期間の時価総額及び24時間出来高の推移を示しています。
※時価総額推移に関して:グラフ作成時の参照ソースとしたCoingeckoに23年10月24日以前のOASのログが存在しません。そのため、OASに市場価値は付与されているものの、該当期間中の時価総額は$0と表示されている点にご注意ください。
OASの市場価格は2023年10月後半に記録したおよそ$0.04を境に右肩上がりに反転し、2024年2月14日にATHを更新。当時の時価総額はおよそ$250M、市場価格は$0.139を記録しています。
その後の市場価格は軟調となり、調査時点の時価総額は$65.1M、市場価値はおよそ$0.035付近を推移しています。
なお、参考程度の情報ですが、サードパーティのデータプロバイダーcryptorank.ioによれば、2022年7月のプライベートセール価格は$0.0145、2022年に開催されたRepublic.comでのパブリックセール価格が$0.035ですので、調査現在の市場価格はパブリックセール価格とほぼ同等の価格帯を推移していることになります。
出典:https://cryptorank.io/ico/oasys-games
2.Oasysゲーム経済圏の概要及び現状整理
出典:https://x.com/Oasys_games/status/1758083736124731738
Oasysは、既存のゲーム体験や楽しさを損なうことなく、ブロックチェーンがもたらす報酬性やスケーラビリティを組み合わせることで、ブロックチェーン技術を活用した新しいweb3ゲームのパラダイムを提唱しようとしています。
これまでにOasysは数多くのゲームを発表し、2024年中旬までに60 以上のタイトルとパートナーシップを結んだことで、web3ゲームコミュニティにおいての地位を確立しています。
そのようなOasys上では現在、国内外の大手ゲーム会社などがVerse(L2)の展開を進めており、今後もその利用がさらに拡大することが期待されます。
出典:https://Oasys.gamefi.org/
公式サイト(Oasys Navi)によると、執筆時点で展開、また今後リリースが予定されているVerseならびにプロジェクトの現在状況は、以下の通りとなっています。
● MCH Verse
○ Re.Monster
○ DimeTime
○ Dark Throne: The Queen Rises
○ NFTWars
○ LOOTaDOG
○ GOGA
○ TomoOne
○ SingSing
○ Gegege No KitaRo YoKaiYokoCho
○ Race4Sky
参考資料:
https://Oasys.gamefi.org/
2.1. Oasys今後のロードマップ整理(ゲーム経済圏のみ)
出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
本章では、2024年にOasysでリリース予定の主要ゲームタイトルと、それに伴うロードマップを整理します。Oasysのエコシステム拡大に向けた全体的な戦略としては、複数のゲームリリースに加え、コミュニティ参加を促進するキャンペーンを展開し、エコシステムの成長を図る姿勢が鮮明です。
特に注目すべきは、今後ローンチ予定の主要ゲームタイトルです。以下にその概略を示します。
Champions Tactics
出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
● Ubisoftが初めて手がけるWeb3ゲームであり、戦略RPG「Champions Tactics: Grimoria Chronicles」は、NFTとブロックチェーン技術を統合したタイトル
● プレイヤーは、他のプレイヤーと戦略と駆け引きを駆使して対戦する。2024年にリリース予定であり、HOME Verse上で展開される計画
Battle of Three Kingdoms – Sangokushi Taisen
出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
● SEGAの人気アーケードゲーム「三国志大戦」をベースにしたブロックチェーンカードゲーム
● 武将カードをNFTとして収集し、3分間の戦略バトルを楽しむことができる
● 2024年冬にリリース予定であり、秋にはプレリリースイベントも予定されている
De:Lithe Last Memories
出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
● 崩壊した東京を舞台に、少女たちが生き残りをかけて戦うダークアドベンチャー
● ブロックチェーンゲームのベータ版は2024年2月19日にリリースされ、Oasys Chainでは2024年8月にリリースされている
Kanpani Girls RE: BLOOM
出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
● DMM.comが提供する「Kanpani Girls」のブロックチェーンゲーム版
● 2024年内にリリース予定で、Web2からWeb3への移行を象徴するゲームを目指す
2.2. Oasysの将来性考察(ゲーム経済圏のみ)
出典:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro
Oasysは、ゲーム向けに特化したブロックチェーンを2つのレイヤーに分けて構築しており、その技術の先進性が際立っています。特に、ブロックチェーンの報酬性やスケーラビリティを組み合わせた新たなゲームパラダイムを提唱しており、従来のクリプトユーザーだけでなく、新規のゲーマー層にもリーチする可能性が高いと考えられます。UbisoftやSEGAといった大手企業とのパートナーシップの実現は、Oasysが業界内で確固たる信頼を築いている証拠と言えるでしょう。
また、ロードマップで述べられている通り、2024年中旬以降も大手企業との協業や新たなゲームタイトルの発表が予定されており、Oasysのエコシステムはさらに拡大していくことが予想されます。このように、ブロックチェーンゲームの普及が進む中、Oasysはその中心的な存在として成長を続け、ゲーム業界におけるブロックチェーン技術の主流化に向けて大きな役割を果たすことが期待されます。
【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社HashHub(https://hashhub.tokyo/)までお願いいたします。また、HashHub Researchの各種レポート(https://hashhub-research.com/)もご参照ください。
提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research