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GameFi(ゲーミファイ)に特化したブロックチェーンOasys(オアシス)の概要と将来性

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GameFi(ゲーミファイ)に特化したブロックチェーンOasys(オアシス)の概要と将来性

公開日: 2024年9月4日

最終更新日: -

▼目次

    本レポートではGameFi(ゲーミファイ)エコシステムに特化したブロックチェーンOasysの概要、及びそのネイティブトークンオアシス(OAS)、ゲームエコシステムの概況解説を行います。

    【基本情報】
    website:https://www.oasys.games/
    X(元Twitter):https://x.com/oasys_games
    ホワイトペーパー:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro
    GitHub:https://github.com/oasysgames
    エクスプローラー:https://explorer.oasys.games/

    1.Oasys及び暗号資産オアシス(OAS)の概要

    1.1. Oasysの概要

    Oasysは、調査時点でバンダイナムコ研究所や、Sega、Square Enix、Ubisoft、Yield Guild Games、KDDI、Rakuten Wallet等々のバリデーターが参加するGameFiエコシステムに特化したマルチレイヤー採用のブロックチェーンネットワークです。

    メインネットローンチは2022年10月に第一段階を開始、その後第二段階、第三段階を経て、同年12月に正式ローンチを発表しています。
    参考:https://medium.com/@oasys/oasys-mainnet-launches-trading-of-oas-tokens-begins-on-major-cexs-a98fa8b1e672


    Oasysのノードバリデータ群
    出典:https://staking.oasys.games/validators

    レイヤー1には「Hub Layer」と呼ばれるEVM互換のPoSブロックチェーンを採用し、その周辺のレイヤー2には「Verse Layer」と呼ばれる各ゲーム開発者が独自のプライベートな「XX-Verse」を構築できるOptimistic rollupsネットワークを採用しています。

    出典:Oasysホワイトペーパー

    ネットワークの仕様上、トラフィックを各ゲームエコシステムが展開されるVerse Layerに集中させ、一方のレイヤー1であるHub Layerはトラフィックが集中しないようFT、NFT、ブリッジ、ロールアップの各コントラクトのみが使用可能になっています。例外的にガバナンスの承認を得て、L1にコントラクトをデプロイすることもありますが、承認なしではデプロイできませんので、L1ネットワークの安定性を乱すようなイベントは起きにくく、高いネットワーク安定性を確保しやすい設計となっています。

    なお、Oasysが「プライベートなサイドチェーン」ではなく「プライベートなレイヤー2」をGameFiの基盤として採用している理由は①データ可用性(Data Availability)、②スケーラビリティ、③トランザクションスピード、これら3点において「プライベートなサイドチェーン」よりも「プライベートなレイヤー2」の方が優れているという結論に至ったからだとしています。


    出典:Oasysホワイトペーパー

    例えば、データ可用性の観点では、レイヤー2のデータは全てレイヤー1に反映されますから、仮にあるレイヤー2(XX-Verse)がダウンしたとしても、レイヤー1が稼働している限りはデータ復旧を技術的に保証できます。つまり、各Verse上のデジタル資産の可用性はレイヤー1によって担保され得るということです。一方、サイドチェーンではこの点を技術的に保証ができませんから、この点においてレイヤー2の方が比較的データ可用性が高いと言えます。

    より詳細なOasysの仕様は公式ホワイトペーパーをご参考ください。
    公式ホワイトペーパー:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro

    1.1.1. Oasys過去の資金調達実績

    公開情報によると、Oasysは2022年にプライベートセールとストラテジックラウンドを通じた資金調達を実施。また同年12月にRepublicにてパブリックセールを実施しています。

    2022年7月には、Republic Capitalをリードとするプライベートセールにて評価額$150Mで$20Mを調達。Jump CryptoやCrypto.com、Huobi、Kucoin、Gate.io、bitbank等が参加しています。


    出典:https://x.com/oasys_games/status/1544499150124994561

    2022年12月、バリデーターネットワークの強化、及びゲームパートナーのプール拡大を目的にGalaxy Interactiveや韓国のゲーム大手Nexon等が参加するストラテジックラウンドを実施。調達額は非公開です。
    参考:Oasys Completes Strategic Funding Round From Galaxy Interactive and Nexon

    2022年12月、Republicにてパブリックセールを実施。498の投資家が参加し、およそ$1Mを調達。
    参考:https://republic.com/oasys


    2024年8月、SBIホールディングスと戦略的パートナーシップを締結し、資金調達を実施。
    参考:https://www.oasys.games/blog/oasys-forms-strategic-partnership-and-secures-funding-from-sbi-holdings/

    1.2. 暗号資産オアシス(OAS)の概要

    オアシス(OAS)は調査時点(2024年8月30日)の時価総額ランキング第430位、市場価格は$0.0476、時価総額はおよそ8,800万ドル、24時間出来高はおよそ2,900万ドル規模の暗号資産(仮想通貨)です。

    OASはOasysのネイティブトークンであり、Oasys上の①ガス手数料の支払い、②Verse構築時の保証金(デポジット)、③分散型ガバナンスのアクセス権、④ステーキング、⑤Oasysエコシステムの決済通貨として用いることができます。

    1. ガス料金の支払い:Verse LayerからHub Layerにトランザクションをロールアップする際、ブリッジ・コントラクトを使用する際、またはHub Layer上でコントラクトを実行する際に、コントラクトの実行者はガス料金を支払います。
    2. Verse構築時の保証金(デポジット):Verse構築には100万OAS以上のデポジットを必要とする
    3. 分散型ガバナンスへのアクセス権:ステーキングによるインフレ率の変更、トレジャリーの使用、Hub Layer上に構築するコントラクトを決定する投票などを含む
    4. ステーキング:OASをステークすることで報酬を獲得できます。なお、1,000万OAS以上のOASをバリデータコントラクトを介してステーキングすることで、バリデーターになることも可能です。
    5. Oasysエコシステムの決済通貨:Oasysエコシステムにおける基軸通貨として用いられます。


    ※なお、Oasysネットワーク全体は、Oasysのネイティブ・トークンであるOASのみを使用するシングル・トークン・エコノミーではなく、各VerseのプライマリートークンであるVerse Tokenや各ゲーム、各dAppsのGame Token、Dapps Tokenで構成されるマルチ・トークン・エコノミーに基づいています。この点の詳細は公式ドキュメントを参考ください。

    1.2.1.暗号資産オアシス(OAS)のトークノミクス



    出典:Oasysホワイトペーパー
    OASの2022年のローンチ時点の最大供給量100億OASの初期配分は上記の通りです。



    上は調査時点でのOAS供給量を可視化したドーナツグラフです。現在のOASはローンチ時点で設定された最大供給量100億OASのうち、18.58%程度に相当する18.58億OASが市場に流通しています。

    残りの81.42億OASは以下のメインネットローンチ後6年間(72か月)の配布スケジュールに沿って流通します。

    なお、以下のスケジュールではメインネットローンチの6年後にはステーク報酬も枯渇することになりますが、この点はメインネットローンチの6年後に分散型ガバナンスを通じてステーク報酬の追加供給を決定する旨が公式ドキュメント(Tokenomicsの項)に記載されています。
    参考:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/tokenomics


    出典:Oasysホワイトペーパー

    1.2.2.暗号資産オアシス(OAS)の市場価格・時価総額・24h出来高




    上グラフは2023Q3~2024Q3(更新日時点)間のOASの市場価格を四半期別にプロットしたグラフです。散布図、箱ひげ図、バイオリンプロットを組み合わせて表示しています。下グラフは同期間の時価総額及び24時間出来高の推移を示しています。

    ※時価総額推移に関して:グラフ作成時の参照ソースとしたCoingeckoに23年10月24日以前のOASのログが存在しません。そのため、OASに市場価値は付与されているものの、該当期間中の時価総額は$0と表示されている点にご注意ください。

    OASの市場価格は2023年10月後半に記録したおよそ$0.04を境に右肩上がりに反転し、2024年2月14日にATHを更新。当時の時価総額はおよそ$250M、市場価格は$0.139を記録しています。

    その後の市場価格は軟調となり、調査時点の時価総額は$65.1M、市場価値はおよそ$0.035付近を推移しています。

    なお、参考程度の情報ですが、サードパーティのデータプロバイダーcryptorank.ioによれば、2022年7月のプライベートセール価格は$0.0145、2022年に開催されたRepublic.comでのパブリックセール価格が$0.035ですので、調査現在の市場価格はパブリックセール価格とほぼ同等の価格帯を推移していることになります。


    出典:https://cryptorank.io/ico/oasys-games

    2.Oasysゲーム経済圏の概要及び現状整理


    出典:https://x.com/Oasys_games/status/1758083736124731738

    Oasysは、既存のゲーム体験や楽しさを損なうことなく、ブロックチェーンがもたらす報酬性やスケーラビリティを組み合わせることで、ブロックチェーン技術を活用した新しいweb3ゲームのパラダイムを提唱しようとしています。

    これまでにOasysは数多くのゲームを発表し、2024年中旬までに60   以上のタイトルとパートナーシップを結んだことで、web3ゲームコミュニティにおいての地位を確立しています。

    そのようなOasys上では現在、国内外の大手ゲーム会社などがVerse(L2)の展開を進めており、今後もその利用がさらに拡大することが期待されます。


    出典:https://Oasys.gamefi.org/

    公式サイト(Oasys Navi)によると、執筆時点で展開、また今後リリースが予定されているVerseならびにプロジェクトの現在状況は、以下の通りとなっています。

    MCH Verse

    My Crypto Saga

    My Crypto Heroes

    Prompt Monsters

    Loot By Rogue

    ○ Re.Monster

    Dark Blood Reborn

    Chain Colosseum Phoenix

    harbor bcg

    Yooldo Verse

    Trouble Punk: Cyber Galz

    HOME Verse

    Battle of Three Kingdoms

    DimeTime

    Defend the kingdoms

    Alkenome Monsters

    Sheepfarm in Meta-land

    Yomi Gardens

    9Lives Arena

    Brave Frontier Heroes

    Dark Throne: The Queen Rises

    TCG Verse

    NFTWars

    Machi Saga

    CryptoSpells

    OasChoice

    LOOTaDOG

    DragonMaster

    Oasys (HUB LAYER)

    CAPTAIN TSUBASA -RIVALS-

    Saakuru Verse

    GOGA

    TomoOne

    Galaxy Blitz

    SingSing

    Crypto Run

    XPLA Verse

    The Walking Dead: All-Stars

    Summoners War: Chronicles

    DM2 Verse

    Kyrie & Terra

    CoinMusme

    GESO Verse

    Yolofox Game

    Gegege No KitaRo YoKaiYokoCho

    UNIVERSAL STALLION

    Rogue Roll Ruler's

    Chain Verse

    ChainArena

    Voxel Worlds

    Race4Sky

    ChainGunnies

    参考資料:
    https://Oasys.gamefi.org/

    2.1. Oasys今後のロードマップ整理(ゲーム経済圏のみ)


    出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/

    本章では、2024年にOasysでリリース予定の主要ゲームタイトルと、それに伴うロードマップを整理します。Oasysのエコシステム拡大に向けた全体的な戦略としては、複数のゲームリリースに加え、コミュニティ参加を促進するキャンペーンを展開し、エコシステムの成長を図る姿勢が鮮明です。

    特に注目すべきは、今後ローンチ予定の主要ゲームタイトルです。以下にその概略を示します。

    Champions Tactics

    出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
    ● Ubisoftが初めて手がけるWeb3ゲームであり、戦略RPG「Champions Tactics: Grimoria Chronicles」は、NFTとブロックチェーン技術を統合したタイトル
    ● プレイヤーは、他のプレイヤーと戦略と駆け引きを駆使して対戦する。2024年にリリース予定であり、HOME Verse上で展開される計画

    Battle of Three Kingdoms – Sangokushi Taisen

    出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
    ● SEGAの人気アーケードゲーム「三国志大戦」をベースにしたブロックチェーンカードゲーム
    ● 武将カードをNFTとして収集し、3分間の戦略バトルを楽しむことができる
    ● 2024年冬にリリース予定であり、秋にはプレリリースイベントも予定されている

    De:Lithe Last Memories

    出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
    ● 崩壊した東京を舞台に、少女たちが生き残りをかけて戦うダークアドベンチャー
    ● ブロックチェーンゲームのベータ版は2024年2月19日にリリースされ、Oasys Chainでは2024年8月にリリースされている

    Kanpani Girls RE: BLOOM

    出典:https://www.Oasys.games/blog/2024-blockchain-games-showcase-on-Oasys/
    ● DMM.comが提供する「Kanpani Girls」のブロックチェーンゲーム版
    ● 2024年内にリリース予定で、Web2からWeb3への移行を象徴するゲームを目指す

    2.2. Oasysの将来性考察(ゲーム経済圏のみ)


    出典:https://docs.oasys.games/docs/whitepaper/intro

    Oasysは、ゲーム向けに特化したブロックチェーンを2つのレイヤーに分けて構築しており、その技術の先進性が際立っています。特に、ブロックチェーンの報酬性やスケーラビリティを組み合わせた新たなゲームパラダイムを提唱しており、従来のクリプトユーザーだけでなく、新規のゲーマー層にもリーチする可能性が高いと考えられます。UbisoftやSEGAといった大手企業とのパートナーシップの実現は、Oasysが業界内で確固たる信頼を築いている証拠と言えるでしょう。

    また、ロードマップで述べられている通り、2024年中旬以降も大手企業との協業や新たなゲームタイトルの発表が予定されており、Oasysのエコシステムはさらに拡大していくことが予想されます。このように、ブロックチェーンゲームの普及が進む中、Oasysはその中心的な存在として成長を続け、ゲーム業界におけるブロックチェーン技術の主流化に向けて大きな役割を果たすことが期待されます。

    【ご注意事項】
    本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社HashHub(https://hashhub.tokyo/)までお願いいたします。また、HashHub Researchの各種レポート(https://hashhub-research.com/)もご参照ください。

    提供:HashHub Research
    執筆者:HashHub Research