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Web3.0(Web3)とは?注目を集める理由と代表的なサービスを紹介

Web3.0(Web3)とは?注目を集める理由と代表的なサービスを紹介

公開日: 2024年3月21日

最終更新日: -

インターネットはWeb1.0から現在のWeb2.0へ進化し、今後はWeb3.0の時代が始まっているといわれています。ただ、Web3.0の概念は複雑でわかりにくいという人も多いのではないでしょうか。この記事では、Web3.0の仕組みと注目を集める理由、代表的なWeb3.0のサービスについて解説します。
 
 

目次
Web3.0(Web3)とは?
 1,Web3.0(Web3)の特徴
 2,Web3.0(Web3)とWeb1.0、Web2.0との違い
 3,イーサリアム登場後のWeb3.0(Web3)
 4,メタバースとWeb3.0(Web3)の関係
 
Web3.0(Web3)の主な種類と代表的なサービス
 1,DeFi:分散型金融(Decentralized Finance)
 2,GameFi:Gameと金融(Finance)を組み合わせた造語
 3,NFT:非代替性トークン(Non-Fungible Token)
 4,DAO:分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)
 
Web3.0(Web3)への投資動向
 
まとめ

 
             

Web3.0(Web3)とは?           

 

 
Web3.0は、ブロックチェーン技術を活用した新しい価値のインターネットです。この新しい形態では、個人同士が直接つながり、データを双方向で利用・管理できます。ブロックチェーンは、ウェブサービスの利用時にデータの記録や移動を支える役割を果たします。
また、「スマートコントラクト」と呼ばれるブロックチェーン上に保存されたプログラムを活用することで、人間の介在なしに契約などの取引の自動化が可能になります。
 
Web3.0では、特定のプラットフォームに依存せずに自立したユーザー同士を直接つなげることができます。これにより、新たなデジタル経済圏が構築され、Web3.0は「非中央集権的(中央管理者を介さず、個人同士が直接やりとりできる設計)」といわれています。
 

出典:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」
 
Web3.0の環境では、取引コストを削減し、国境やプラットフォームを超えてさまざまな価値の共創や保存、交換が可能です。その結果、文化・経済領域において新たなビジネスモデルの構築や投資、経済活性化、社会課題の解決の促進が期待されています。
 

Web3.0(Web3)の特徴

 

 
Web3.0はブロックチェーン技術に基づいて実現された革新的なテクノロジーで、非中央集権化(Decentralization)、相互検証可能な透明性(Transparency)、自己主権性(Self-sovereignty)、自律性(Autonomy)の4つの特徴を持ちます。そして、参加者同士の分散型の合意形成を実現し、取引の証跡管理を可能にします。Web3.0では、データやサービスがネットワークの参加者間で共有され、権限が集中しません(非中央集権化)。
 
また、取引データはブロックにまとめられ、改ざんが困難な透明性の高いデータとして確定されます(相互検証可能な透明性)。個々人は自己主権を持ち、暗号技術を使って身元を管理しながら価値を取引できます(自己主権性)。さらに、スマートコントラクトを活用して自動実行できる処理プログラムを作成し、自律的にサービスを構築することも可能です(自律性)。このように、Web3.0は透明性と自律性を備えた新たな金融の世界を切り拓いています。
 

Web3.0(Web3)とWeb1.0、Web2.0との違い

 
 

出典:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」

Web3.0は、インターネットの歴史における新たな進化として注目されています。これまでのWeb1.0やWeb2.0とは一線を画し、データの取り扱いやセキュリティの問題に対処しようとしているからです。初期のインターネット(Web1.0)では、ほとんどがテキストベースの静的なコンテンツかつ、一方通行なやり取りが中心でした。そこからWeb2.0の登場により、YouTubeやTwitter(現在はX)、Facebookなどのプラットフォームを通じて、誰もが情報を発信できるようになりました。
 
しかし、Web2.0ではデータの集中管理が問題視されるようになりました。大手プラットフォーマーに大量のデータが集約され、セキュリティ上のリスクや言論の自由の制約が懸念されたからです。Web3.0では、このような問題を解決するためにブロックチェーンなどの技術を活用しています。ユーザーのデータは分散型ネットワークであるブロックチェーンに保存されるため、プラットフォーマーを介さずにデータを管理できます。
 
このような仕組みにより、ユーザーはより自律的にデータを取り扱うことが可能になりました。中央集権的なインターネットの制約から解放され、安全かつ自由なインターネットの世界が期待されています。
 

イーサリアム登場後のWeb3.0(Web3)

 

 
2013年に、暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)を基軸通貨とするブロックチェーン「イーサリアム」が登場しました。イーサリアムの特徴の1つが「スマートコントラクト」です。スマートコントラクトは、ブロックチェーン上にプログラムを書き込むことで、設定した条件を自動的に実行する機能です。例えば、「1年後、自分の口座にある5ETHをYさんに支払う」というプログラムをブロックチェーンに記録すると、1年後には5ETHがYさんに自動的に支払われます。
 
スマートコントラクトは取引内容をあらかじめ決めておき、自動的に取引が実行されるため、業務効率が格段に向上しました。イーサリアムで利用されるスマートコントラクトは、暗号資産の送金だけでなく、商品の売買や不動産取引など、さまざまな分野への汎用性があり、実際の業務効率化や新たなビジネスの構築に活用されています。
 
そして、「NFT(非代替性トークン)の転売手数料の○%を原作者に渡す」などのスマートコントラクトを自動で実行できるブロックチェーン上で、NFT取引やGameFi、分散型金融(DeFi)などのアプリケーションが次々に誕生する「Web3.0」時代が始まったのです。
 
その後、ポルカドット(DOT)、アバランチ(AVAX)、ソラナ(SOL)など、さまざまなブロックチェーンが誕生し、その上で動くアプリケーションが発行するプロトコルトークンも流通しています。
 
 
 

メタバースとWeb3.0(Web3)の関係

 

 出典:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」
 
メタバースとは、新たな価値と体験を提供する仮想空間です。通信ネットワークの進化やコンピューター技術の進歩により、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、代替現実(SR)などのクロスリアリティ技術が急速に発展しています。これにより、これまでにない臨場感を味わうことが可能になりました。とくに、新型コロナウイルスの影響で制限が生じていた時期に、自宅から仮想空間で集まって共有できる「メタバース」に注目が集まりました。
 
世界のメタバース市場は現在急速に成長しており、2030年には9,365.7億ドルにまで拡大すると予測されています(2022年は665.1億ドル)。この成長に見込みを持ち、多くの企業がメタバースに参入しました。
 
実際、総務省がメタバースの認知度を各国でアンケート調査したところ、他国に比べると認知度は低いものの、国内でも「知っている」(「内容や意味を具体的に知っている」「なんとなく内容や意味を知っている」「言葉は聞いたことがある」の合計)との回答が6割以上となり、メタバースという用語は広まりつつあります。
 
 
出典:総務省「情報通信白書」

メタバースはまだ明確な定義がありませんが、総務省の報告書では「ユーザー間でコミュニケーションが可能な仮想的なデジタル空間」とされています。メタバースは、利用目的に応じた臨場感や再現性を提供し、自己投射性や没入感をもたらし、インタラクティブで誰でも参加できる特徴を持っています。
 

Web3.0(Web3)の主な種類と代表的なサービス


 

DeFi:分散型金融(Decentralized Finance)

代表的なサービス
投資、保険、資産管理の自動化
 
DeFiは、ブロックチェーン技術を利用して中央集権型の中央銀行や金融機関を通さずに金融サービスを提供する概念です。スマートコントラクトを使用し、自動的に契約を履行します。そして、ユーザー同士の直接取引や、トークンを使った資産管理などを実現しています。トークンの交換に従来型の取引所の仲介を必要としない分散型取引所(DEX)や、非中央集権型のデリバティブやレンディング、保険などさまざまな取り組みがあります。

GameFi:Gameと金融(Finance)を組み合わせた造語

代表的なサービス
ゲームをプレイして報酬獲得、ゲーム内のキャラクターやアイテムの取引
 
ブロックチェーン技術を使用し、ゲーム産業の金融サービスを提供することを目的とする概念です。ゲーム内のキャラクターやアイテムの取引によって報酬を獲得することが可能です。また、プレイヤーがゲーム内でプレイして報酬を得られる方式(Play-to-Earn)により、通貨やアイテムを得られるサービスもあります。

NFT:非代替性トークン(Non-Fungible Token)

代表的なサービス
デジタルアート、スポーツカードやゲームアイテムの取引、取引履歴の追跡
 
非代替性トークン(NFT)は、ブロックチェーン上にデータが刻まれるため、改ざんが難しいという特徴を有しています。NFTはデジタルデータに唯一性を与え、真贋(しんがん)を確保し、取引履歴を追跡する機能を持っています。NFTの活用により、作品の真正性や唯一性を証明し、作者が二次的な流通でも収益を得ることが可能になりました。これによって、社会課題の解決や共生社会の実現に向けた取り組みが進められています。

DAO:分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization)

代表的なサービス
企業やコミュニティ、投資ファンドなどの運営
 
分散型自律組織(Decentralized Autonomous Organization、以下DAO)は、中央集権的な管理機構を持たず、参加者による自律的な運営を目指す組織形態です。ブロックチェーン技術やスマートコントラクトを活用し、DAOは革新的な方法で運営されます。
 
DAOでは組織の理念に賛同する人が、意思決定に関与できる機能を持った「ガバナンストークン」を保有し、組織運営に参画。所有と経営が一致することで、事業成功へのインセンティブが共有されます。
 

 出典:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」
 
最近、一部の地域ではDAOが注目を浴びています。例えば、新潟県の山古志地域では、「山古志DAO」という組織が立ち上げられ、地域の活性化や課題解決に取り組んでいます。山古志の象徴である錦鯉のアートをNFT化し、販売することで、地域の持続的な発展を支援。このNFTアートを保有することで、参加者は山古志DAOに参加でき、売却益はDAOの活動資金となります。
 
NFTを購入した人はデジタル村民となり、約800人のリアル村民に対し、1,000人を超えるデジタル村民が存在するまでになりました(2022年11月末時点)。DAOの登場は、従来の組織形態に新たな可能性をもたらしています。中央集権のない運営やブロックチェーンの透明性は、人々に新たな価値やチャンスを提供しているといえるでしょう。
 

Web3.0(Web3)への投資動向

 

 
米シリコンバレーのベンチャーキャピタルを含め、Web3.0への資金調達は2021年に急増しました。そして、2022年9月の国内主要ベンチャーキャピタルを対象とした調査では、Web3.0、非代替性トークン(NFT)が注目の投資領域として2位になっています。
 

出典:経済産業省「Web3.0事業環境整備の考え方」

さらに、2020~2021年には世界的な企業もWeb3.0に参入。米資産運用最大手のブラックロックは、暗号資産交換業最大手の米コインベース・グローバルと提携しました。
 
また、米国の有名スポーツブランド、ナイキもメタバース(仮想空間)に進出しました。この新たな取り組みでは、バーチャルスニーカーのNFT販売に加えて、全世界で4000万ダウンロードを突破したオンラインゲーム上にも店舗を構えました。ナイキは現実世界でのブランド力を仮想空間にも浸透させ、リアルとデジタルの両方で存在感を高めていく戦略を展開していく予定です。
 

まとめ 

 
Web3.0の実現に向けては、いくつかの課題が残っています。具体的には、技術的な問題や法的な制約、そして利用者の理解度の低さが挙げられます。しかし、これらの課題を克服できれば、ビジネスにおいて大きな影響を与える可能性があります。
 
まず、技術的な課題としては、ブロックチェーンの処理性能の低さや技術仕様の標準化の進展が課題です。また、法制度の面では、NFTにおける著作権や意匠権の制約、暗号資産を利用したマネーロンダリング対策、そしてDAOの法的位置づけが問題となっています。これらの問題に対しては、社会的な受容までに時間がかかる可能性があります。
 
さらに、利用者のリテラシーの向上も重要です。現在、Web3.0の技術を利用したアプリケーションを使用するには、暗号鍵の管理やトークン、NFTの取引方法などを理解する必要があります。そのため、利用者にとってハードルが高い状況といえるでしょう。
 
これらの課題を克服し、Web3.0の可能性を最大限に引き出すためには、技術の進歩、法制度の整備、そして利用者の理解が必要です。