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第9回 暗号資産のWeb3活用|「DYOR」とは? 「自分で調べる力」で資産を守る

第9回 暗号資産のWeb3活用|「DYOR」とは? 「自分で調べる力」で資産を守る

公開日: 2025年10月29日

最終更新日: -

▼目次

    「暗号資産のWeb3活用」シリーズでは、SBI VCトレードをご利用の皆さまや、暗号資産(仮想通貨)の活用に関心のある皆さまに向けて、暗号資産を「保有」するだけでなく、積極的に「活用」するための視点をご紹介しています。

    Web3の世界では、日々世界中で様々なサービスやプロジェクトが生まれています。そこには新しい技術や投資機会の可能性がありますが、同時に価格変動リスクや詐欺事例も報告されています。
    このような環境の中で、自分の資産を守るために欠かせないのが「自分で調べる力」です。Web3ユーザーの間では、「DYOR(Do Your Own Research)」という教訓があります。では、DYORはどのように実践すれば良いのでしょうか。

    本記事では、DYORの基本的な概念と代表的な情報源やツールを、具体例を用いて解説します。

    ※本記事は、一般的な情報提供を目的としたものであり、いかなる投資アドバイスでもありません。本記事の内容に準拠して投資判断を下すことはお控えいただき、投資に関する判断はご自身の判断で行なってください。


    1. DYORとは何か

    DYOR(Do Your Own Research)とは、「他者の意見をうのみにせず、自分で情報を調べ、理解したうえで判断すること」を意味する言葉です。
     
    SNSやウェブサイトなどでは、日々膨大な情報が発信されています。その中には正確な情報だけでなく、憶測や誤情報、そして悪意ある内容も含まれている可能性があるため、情報の受け取り方には注意が必要です。

    Web3の世界では、取引が分散型(非中央集権)で行われ、公的な監督機関や保証制度が存在しないことがあります。そのため、最終的に自分の資産を守るのは自分自身の判断であり、DYORはそのための必須スキルといえます。

    2. Web3のDYOR

    Web3の世界を理解する上で欠かせないキーワードが、「トラストレス(Trustless)」です。
    この言葉は「信用できない」という意味ではなく、「特定の第三者を信用しなくても取引が成立する」という仕組み(システム)を指します。つまり、人や組織を信用する代わりに、コードという技術的な仕組みそのものが信用を担保するという考え方です。
     
    従来の中央集権型サービス(トラスト型)では、ユーザーは運営者の管理体制や法規制に基づいて安全性を信用します。つまり、「この運営者であれば資産や情報を預けられる」という信用のもとでサービスを利用しています。
     
    一方でWeb3の世界(トラストレス型)では、信用の対象が「人」から「コード」へと移行します。スマートコントラクト(※1)と呼ばれる自動実行プログラムによって、契約が信用できる第三者の介在なしに行われ、取引履歴はブロックチェーン上に公開されます。
    特にパブリックブロックチェーンの場合はコードや取引履歴を世界中の誰でも追跡することが可能であり、この透明性をもとに信用が形成されるのです。

    そのため、Web3のDYORでは、仕組みの正当性を自分自身で確かめる姿勢が求められます。

    3. DYORのための情報源と活用ツール

    DYORを実践する上では、信頼性の高い情報源を選び、複数のツールを組み合わせて分析することが不可欠です。ここでは、Web3のDYORで役立つ情報源とツールの一例をご紹介します。

    ホワイトペーパー・ドキュメント・リポジトリ

    例:Whitepaper、Docs、GitHub
    これらは、プロジェクトの理念と技術的裏付けを確認できる一次情報源です。
    ホワイトペーパーでは、プロジェクトの構想やトークン設計などの基本方針が確認できます。ドキュメントでは、プロダクトの実際の仕様や動作方法などを確認できます。さらに、リポジトリではコードの更新状況を追跡でき、開発が現在も継続しているかを確認できます。
    この3つを組み合わせて参照することで、理念・仕様・実装の一貫性を検証することができます。

    公式発信・コミュニティ

    例:X(旧Twitter)Discord
    プロジェクトの運営チームや開発者は、XやDiscordを通じて最新情報を発信しています。これらのプラットフォームでは、アップデートの告知、パートナーシップの発表、ユーザーからの質問対応など、プロジェクトの「今」を知ることができます。
    また、ユーザー同士の議論が活発であるかどうかも、コミュニティの健全性を測る手がかりになります。

    ニュースメディア

    例:CoinPostCointelegraphCoinDesk
    社会や業界の最新動向を確認できる二次情報源です。
    国内最大級の暗号資産メディア「CoinPost」は、日本語での情報発信が充実しており、国内外の動向を把握するのに適しています。一方で、海外メディアは、業界のグローバル動向を早期に把握できる利点があります。

    ブロックチェーンエクスプローラー

    例:EtherscanPolygonscan
    ブロックチェーン上で行われた取引(トランザクション)履歴や、スマートコントラクトの内容を誰でも直接確認できるツールです。
    特定のウォレットアドレスの資産状況や送金履歴などを閲覧できるため、資金の流れが健全かどうかを検証できます。
    また、コントラクトコード欄に「Contract Source Code Verified(検証済み)」のマークがある場合は、公開されているソースコードがブロックチェーン上にデプロイされたコードと一致していることを示します。

    (画像出典:Moonbirds, Etherscan)


    データアグリゲーター

    例:CoinGeckoCoinMarketCap
    暗号資産の価格、時価総額、取引量など、市場の基礎データを一元的に確認できるツールです。
    これらのツールでは、銘柄別ランキングや市場のトレンドなどが視覚的に把握できるため、どのプロジェクトに資金が流入しているかや、市場全体の動きなどを分析できます。

    Dapps・DeFiトラッカー

    例:DappRadarDeFiLlama
    Web3プロジェクトの利用状況を定量的に確認できるツールです。
    特に注目すべき指標は、アクティブユーザー数(UAW:Unique Active Wallet)と、預けられている資産総額(TVL:Total Value Locked)です。これらの時系列を追うことで、利用者の増減や資金流入の傾向を把握できます。
    DYORでは、表面的な人気よりも、実際に使われているかどうかを確認することが重要です。

    注意点

    SNSやコミュニティでの情報収集時には、フィッシング詐欺や投資詐欺にご注意ください。URLをクリックする前に、公式サイトや公式SNSアカウントからの発信であるかを確認し、不審な案内には絶対に応じないようにしましょう。
    Etherscan の「Contract Source Code Verified(検証済み)」は、ソースコードが公開され、オンチェーンのバイトコードと照合されたことを示すものであり、安全性を保証するものではありません。
    また、データアグリゲーターやトラッカーは、取得元や集計方法の違いによって数値に誤差が生じることがあります。複数の情報源を照合し、単一のデータに依存しない姿勢を持つことが大切です。

    4. まとめ

    DYOR(Do Your Own Research)は、資産を守るために重要な、自分で調べて判断する姿勢です。
     
    ブロックチェーンの構造は、正しくツールを使えば誰でも事実に近づける透明性を持っています。暗号資産をWeb3で活用するにあたり、日々のニュースや市場動向を確認して自ら検証することは、とても大切な習慣です。
    本記事が、皆さまの継続的なDYORにおける実践の参考となれば幸いです。


    (※1)スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上にある契約を自動で実行するプログラムです。


    参考
    ・CoinGecko “CoinGecko API
    ・CoinMarketCap “CoinMarketCap API
    ・DappRadar “DappRadar API
    ・DeFiLlama “DeFiLlama and our methodology
    ・Etherscan “API Documentation
    ・Polygonscan “Polygonscan Information Center