Market Report

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2025/12/22

暗号資産週間レポート(2025.12.14~2025.12.20)
マクロ指標に翻弄される暗号資産市場 ― 米雇用・CPI・日銀利上げを経てレンジ圏内を維持

【12/14~12/20週のサマリー】
・米雇用統計が発表され失業率は2021年9月以来の高水準に
・ウォーラーFRB理事ハト派的発言もその後の慎重発言により利下げ期待修正
・米消費者物価指数、11月分は市場予想下回り一時リスク資産選好に
・日銀利上げ決定により政策金利は約30年ぶりの高水準に
・与党が2026年度税制改正大綱を発表

【暗号資産市場概況】
12/14~12/20週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲1.14%の13,932,350円、ETH/JPYの週足終値は同▲3.26%の470,465円であった(※終値は12/20の当社現物EOD[12/21 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、米雇用統計や米消費者物価指数、日銀の金融政策決定、さらにウォーラー連邦準備制度理事会(FRB)理事の発言など、複数のマクロイベントを受けてボラティリティが高まったものの、全体としては約6,000ドルのレンジ内で推移し、方向感に欠く展開となった。
 週初、16日に発表が予定されている米雇用統計を警戒した米国株式市場の下落とともに暗号資産市場も下落、ビットコインは85,000ドルまで値を落とした。米雇用統計は通常毎月第1金曜日に発表されるが、43日間の米国政府機関閉鎖の影響により今回の発表は通常のスケジュールからずれ込んでいる。
 16日に予定通り米雇用統計が発表され、11月の非農業部門雇用者数は64,000人と市場予想を上回ったものの増加幅は小さく、10月の105,000人減少を完全には相殺できなかった。また失業率は市場予想を上回る4.6%と2021年9月以来の高水準となった。ただし今回の米雇用統計は、米国政府機関閉鎖という一時要因の影響を含む可能性が高く、労働市場の減速を示唆しつつも、FRBの政策判断に直結する材料としては慎重な解釈が求められる内容だった。このためビットコイン価格も発表直後は一時的に下落したもののすぐに反発し、その後も方向感のあるトレンド形成には至らず、反応は限定的となった。
 17日には、次期FRB議長候補の一人として名前が挙がるクリス・ウォーラーFRB理事が公開演説でハト派的と受け止められる発言を行い、「中立的なフェデラルファンド金利は現行水準より50〜100bp低い可能性がある」と示唆。これを受け、市場では将来的な金融緩和余地が意識され、ビットコインは一時90,000ドル台を回復する動きを見せた。しかしその後、同氏が「インフレは高止まりしており、利下げを急ぐ必要はない」と述べたことが伝わると、先行して高まった利下げ期待が修正され、ビットコインは反落し85,000ドル近辺まで急落した。
この下落には、米国のAI関連株の下落が米国株式市場を押し下げ、リスク資産全体のリスク回避意識が強まったことも暗号資産下落の一因となったようだ。この短時間での価格変動について、CoinGlassのデータによると、過去4時間で暗号資産デリバティブ市場において1億9,000万ドル以上の清算が発生したことが確認されている。
 18日、米消費者物価指数が発表。なお、今回発表されたデータは11月分となり、10月分の発表は米国政府機関閉鎖の影響によりキャンセルとなった。発表結果は市場予想を下回り、来年もFRBの利下げが続く可能性を示唆、これを受けてビットコインは89,000ドルまで上昇しリスク資産選好となった。しかし買いは続かず次第に上値の重さが意識され、レバレッジ取引のロングポジション解消が主導したとみられる動きが観測され、未決済建玉(Open Interest)が急速に減少したことで売り圧力が強まり、ビットコインは節目の85,000ドルを一時割り込んだ。
 19日正午過ぎ、日本銀行が政策金利を発表し、市場予想通り25bp引き上げ約30年ぶりの高水準となる0.75%とした。過去3回の利上げ発表時ではいずれもビットコインは大きく下落したが、今回は過去の例に反して上昇。これには、利上げが事前に織り込まれていたことに加え、米国株式先物など他市場との連動でリスクオンに転じたこと、円安進行を背景に日本円からドル建て資産への資金流入が意識されたこと、さらには投資家のセンチメントやポジショニング(レバレッジ取引におけるロングポジション構築)の影響などが考えられる。しかし週内のレンジを抜けるには至らず、88,000ドル台で週末を迎えた。
  今週は24日(水)にクリスマスイブの早引け、25日(木)にクリスマスによる休場とクリスマスや年末休暇に入るため、市場参加者が減少し流動性が低い状態での取引となる可能性が高い。米国では第3四半期実質GDPや新規失業保険申請件数などの発表が予定されているが、低流動性による突発的な値動きには十分注意されたい。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[全取引所のビットコイン無期限先物の未決済建玉、1週間]

(glassnode提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【12/14~12/20週の主な出来事】


【12/21~12/27週の主な予定】


【今週のひとこと】2026年度税制改正大綱による暗号資産市場への影響は?

 自由民主党・日本維新の会は12月19日、2026年度税制改正大綱を決定しました。2026年度の大綱では、物価高対策と税制の公平性が主要な柱とされ、「年収の壁」の引き上げ、住宅ローン減税の拡充、賃上げ促進税制の見直し等が盛り込まれています。暗号資産に関しては、取引への申告分離課税の導入や、取引で生じた損失を最大3年間繰り越せる繰越控除制度の創設、損益通算の導入などが示されました。そこで本稿では、大綱で記載されていた主項目について、暗号資産市場へどのような影響を及ぼすのかを考察します。
 まず、申告分離課税の導入について、大綱では暗号資産取引の課税方式を総合課税から申告分離課税(税率20%:所得税15% + 住民税5%)へ変更する方針が明記されています。従来の総合課税では、利益が大きくなるほど税率が高まる累進課税が投資家の心理的負担となっていましたが、分離課税の適用により税率が一定となることで、暗号資産は株式やFXと同様の扱いに近づきます。その結果、個人投資家の参入ハードルが下がり、市場の流動性向上・国内取引所の活性化が期待できます。
 次に3年間の繰越控除制度に関して、現行制度では、投資家が暗号資産取引で損失が出ても翌年以降に繰り越すことができません。しかし本制度が導入されれば、損失を最大3年間繰り越し、将来の利益と相殺することが可能となります。暗号資産市場は価格変動が大きく単年度の損益が大きく振れやすいため、複数年での損益通算が可能になることは投資リスクの低減につながります。これにより、投資家は短期的な値動きに左右されず、長期的な視点を持って投資判断を下しやすくなると考えられます。一方、損失繰越を前提としたアグレッシブな投資が可能となるため、実際に適用された後の投資判断には注意が必要です。
 2026年度大綱は、暗号資産の税制を株式等の金融商品に近づけ、投資家保護の観点から見ても大きく前進した内容となっており、暗号資産市場のさらなる発展が期待できる内容でした。税制改正の施行時期は、金商法改正法施行の翌年1月1日以降とされていますが、日本の暗号資産業界はこの法改正に伴って、市場の公正性と利用者保護の観点からインサイダー取引規制や情報開示等の規則を遵守する対応が求められることを予想されています。




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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