Market Report

マーケット情報

2024/09/30

暗号資産週間レポート(2024.9.22~2024.9.28)
ハリス、ゲンスラー両氏の発言に市場は好感、中国の金融緩和策が市場に与える影響とは?

【9/22~9/28週のサマリー】
・ハリス米大統領候補「AIやデジタル資産などの革新的な技術を奨励する」
・中国が利下げを含む金融緩和政策を発表
・ゲンスラーSEC委員長「ビットコインは証券ではない」


【暗号資産市場概況】
9/22~9/28週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+2.98%の9,343,050円、ETH/JPYの週足終値は同+3.12%の379,870円であった(※終値は9/28の当社現物EOD[9/29 6:59:59]レートMid値)。
先週は、ハリス米大統領候補やゲンスラーSEC委員長といった米国要人の暗号資産に対する言及が呼び水となり、米ビットコイン・イーサリアム現物ETFに中規模の資金流入があった。特にイーサリアムへの資金流入は長らく観測されなかった金額であり、注目に値する(ただしETF上場以来続いているグレイスケール由来のイーサリアム売却圧力は依然として消化しきれていない点に注意が必要である)。
週初、ニューヨーク州での政治資金集会において、米大統領候補ハリス氏が「AIやデジタル資産などの革新的な技術を奨励する」と発言。親暗号資産的な姿勢を打ち出してきたトランプ氏とは対照的に、ハリス氏にとって、これまでで最も踏み込んだ表明であり、暗号資産市場はポジティブに反応した。週央にハリス陣営が公開した経済政策でも暗号資産に言及があり、週初発言を補強することとなった。一方、政策面での具体的な立案はなく、今後どのような発表が行われるかは、引き続き懸案事項となる。
暗号資産価格への影響は限定されたものの、中国人民銀行が臨時記者会見を開いて発表した金融緩和パッケージは無視できない。政策金利・預金準備率・住宅ローン金利が引き下げられ、住宅購入時の頭金要件を緩和。不況が続く中国不動産市場へのテコ入れとなった。
このタイミングでようやく積極的な経済刺激政策が発表された背景には、前回FOMCでの米国政策金利引き下げがあるはずだ。米国に先行して利下げを行った場合、二国間の金利差が拡大することで中国国内の資金が米国に移転してしまう恐れがあり、利下げに踏み切れない状況が続いていたのではないだろうか。パッケージによって中国発のハードランディングシナリオが後退した意義は大きい。
週後半には、CNBCのインタビューでゲンスラーSEC委員長が「ビットコインは証券ではない」と発言するポジティブサプライズが発生。暗号資産市場は、過去最高値圏に復帰するS&P500を横目にコアPCEデフレーター発表を通過し、底堅い雰囲気のまま週末を迎える運びとなった。
次週は経済指標ウィークである。JOLTS、ISM、雇用統計と、重要指標が並ぶ。特に米株指数との相関が年初来最高水準となっている状況でもあり(下部にチャートを掲載)、米経済指標・米株の動向には十分な注意を払いたい。また、日本では石破茂新総裁による衆議院解散の意向が示されている。政治動向は為替(円建てのビットコイン価格)に影響を及ぼすため、当面は日本のヘッドラインからも目が離せない。


[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)




[BTCとS&P500の30日相関(日足・年初来)]

(白線がビットコイン価格 / ピンク線がS&P価格/ 青線が30日相関)
(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)




[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 紫線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)




[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 紫線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)




【9/22~9/28週の主な出来事】



【9/29~10/5週の主な予定】


【今週のひとこと】BUIDLとは

今年3月、世界最大の資産運用会社ブラックロックは、トークン化ファンド「BUIDL」を開始しました。発表から1ヶ月後には、先行してシェアを築いていた大手資産運用会社フランクリン・テンプルトンの「FOBXX」の運用資産残高を突破。先週は、DeFiプロトコルEthenaがBUIDLを裏付け資産としたステーブルコイン「UStb」の計画を発表し話題となりました。注目を集めているBUIDLとは何なのでしょうか。

[トークン化国債ファンドの銘柄ごと運用資産残高推移]

(オレンジのエリアがBUIDL、緑のエリアがFOBXX)
(rwa.xyz提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)




BUIDLは、ひとことで表すと、「イーサリアムチェーン上で発行されたMMF*」になります。総資産の100%が現金や米国債で運用されており、最低投資額は500万ドル。米国の認定投資家を対象とする、非常に敷居の高い商品です。最大の特徴は、ブロックチェーンによる透明性です。ファンドの発行履歴、資産保有状況、配当の分配状況や取引履歴等の情報を誰もがオンチェーンで確認できます。
BUIDLという単語を見て、「BUILDのスペルミスじゃない?」と疑問に感じた方もいらっしゃるかもしれません。これは、ファンドの設計者が意図して間違えたのだと筆者は考えています。というのも、ビットコインコミュニティには「HODL(HOLDの誤字)」という有名なネットスラングがあるからです。
HODLという単語は、2013年の下落相場中、酔っ払ったビットコイン投資家がSNS掲示板で「I AM HODLING(私はビットコインを売らないぞ!)」というスレッドを作った時に生まれました。その後、辛抱強くビットコインを保有する投資家たちは、スレッド主を思い「HODL」というスラングを使うようになったのです。
古くからビットコインを保有している愛好家は、BUIDLが出てきたときに、思わず「ニヤり」としてしまったことでしょう。BUIDLの名前には、コミュニティ文化を尊重するファンド設計者の遊び心が隠されているのかもしれません。


*MMF = マネーマーケットファンド。詳しくは8/26号(https://www.neweconomy.jp/features/sbivct/412145)の「今週のひとこと」で解説

(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


-----
お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。 また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
-----



マーケット情報一覧へ戻る