Market Report

マーケット情報

2024/07/29

暗号資産週間レポート(2024.7.21~2024.7.27)
イーサリアム現物ETFがついに上場!今週はFOMCを含む各国経済指標に注目!

【7/21~7/27週のサマリー】
・バイデン現米国大統領が選挙戦からの撤退を表明
・米国でイーサリアム現物ETFが上場
・Bistamp、Mt.Goxの弁済資金配布開始を公表
・米国で行われたビットコイン2024カンファレンスでトランプ米大統領候補が演説

【暗号資産市場概況】
7/21~7/27週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+0.32%の10,593,500円、ETH/JPYの週足終値は同-8.68%の505,205円であった(※終値は7/27の当社現物EOD[7/28 6:59:59]レートMid値)。
先週は、米国で初のイーサリアム現物ETFが上場。イーサリアムは事実売りの展開を迎え、ビットコインに対しアンダーパフォームすることとなった。
週初、バイデン氏が選挙戦からの撤退を表明し市場は乱高下。サプライズの大きさにより暗号資産価格は下降したのち、(親暗号資産的な姿勢を見せている)トランプ氏の当選期待から上昇。その後は、ハリス現副大統領の当選期待を織り込む形でトランプ氏の当選織り込みが減退(暗号資産価格は下降)した。
23日には、多くの市場参加者が待望していたイーサリアム現物ETFがついに上場。初日は11億ドルの取引高を数え、直近12ヶ月で上場されたビットコインを除く全ETF中1位の取引高を記録し成功を収めた。上場後の値動きは、前号(https://www.neweconomy.jp/features/sbivct/404888)の「今週のひとこと」で記載していたとおり事実売りの展開(これがイーサリアム固有であることは、下記に掲載するETH/BTCチャートからも読み取れる)。ETF全体の資金流入出についても、グレイスケール(ETHE)からの流出がけん引し、流出超の状況が続いている。
Grayscaleのイーサリアム現物ETF(ETHE)からの資金流出において興味深かった点は、最初の4営業日での運用資産残高に占める資金流出規模の割合が、ビットコイン(GBTC)の事例に比べ高かった点である。具体的には、ビットコインが4営業日で約6%の流出であったのに対し、イーサリアムでは約22%の流出であった。このペースでの流出が続けば、Grayscale由来の売却圧力は、上場前に想定されていたよりも早く枯れる可能性が高い。むろん、イーサリアム全体の動向は他のETFにも左右されるため、全体での資金流入出も確認する必要は継続する。
週央には、Mt.Goxから約10,000BTCが移動。暗号資産取引所Bitstampでの弁済が開始され下押し圧力となったが、規模は限定的であり、一旦は吸収されたといえる。Mt.Goxのウォレット残高は、初期の約142,000BTCから約80,000BTCまで消化された状況だ。ビットコインの移動が市場の調整を伴ってきたのがこれまでの傾向であり、Mt.Goxからの資金移動には、引き続き注意を払いたい。
週末には、潜在的なビッグイベントとして注目されていたビットコイン2024カンファレンスが開催。トランプ大統領候補は2日目に演説を行ったが、リアルタイムで視聴していた市場参加者は肩透かしを食らったかもしれない。というのも、当初予定されていた登壇枠は日本時間28日4時から30分間であったが、時間いっぱいになってもトランプ大統領は壇上に現れなかったからだ。司会者が「あと数分でトランプ氏の演説が始まります」という言葉を幾度も繰り返し、当初予定時刻から1時間が経過した日本時間5時頃になって、トランプ氏はようやく姿を見せた(マーケットの失望はチャートによく表れている)。
主要な発言内容をいくつか抜粋すると、以下のとおりである。
・大統領に就任した場合、初日にゲンスラーSEC委員長を解任する
・暗号通貨に関する大統領諮問委員会を設置し、就任100日以内に透明性のある規制を設計する
・CBDC(中央銀行デジタル通貨)を推し進めることはしない
・ドル・ステーブルコインを推進し、世界的なビットコイン貯蓄を支持する
・米国政府が保有しているビットコインを売却することを阻止する
ビットコイン価格はこれらの発言により上昇することはなく、むしろ、トランプ氏演説が終了した後のルミス上院議員による「米国政府は5年間かけて世界のビットコイン供給量の5%(約100万BTC)を購入し、少なくとも20年間保有する」という法案の提言を受けて初めて上昇を見せた。
理由は主に2点あると考える。1点目は、トランプ氏の演説がこれまでの同氏の暗号資産関連発言を大きく逸脱するような内容ではなかったこと(すなわち、既に「織り込み済み」であること)。もう1点は、「発言内容は得票のためのリップサービスであり、実際に履行される可能性は高くない」と市場参加者が受け止めたことである。一例として、SEC(米国証券取引委員会)は政府と独立した機関であり、仮に大統領権限をもってしても、ゲンスラー委員長を解任するのは容易ではない。他の項目についても、推し進める段階では大きな障害に見舞われることが想定される。
今週はFOMCを含む指標ウィークである。米国経済の減退がデータとして表出し始めた状況で、9月の利下げ判断に今後のデータが大きく影響していくことになると考えられる。Mt.Goxからの資金移動に加え、各国経済指標には十分留意されたい。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ ETH/USD, BTC/USD, ETH/BTC週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[GRAYSCALEからの資金流出状況(BTC)/2024年1月]

(橙線がGrayscaleのビットコイン残高 / 黒線がビットコイン価格)
(Glassnode提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ GRAYSCALEからの資金流出状況(ETH)/2024年7月]

(青のエリアがGrayscaleのイーサリアム残高)
(The Block提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[MT.GOXのビットコイン残高]

(オレンジのエリアが残高(ビットコインの枚数))
(Arkham提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)





【7/21~7/27週の主な出来事】



【7/28~8/3週の主な予定】


【今週のひとこと】韓国の暗号資産税制

韓国では現在も暗号資産売却による利益に対する課税がない状態が続いています。当初は、2021年10月から課税が開始される予定でしたが、2度の延期が決定されており、現在は2025年1月1日に発効予定となっています。
今月14日には、この課税予定をさらに2028年まで延期することが検討されていることが現地メディアによって報じられました。暗号資産への課税が延期されている理由としては、「暗号資産投資家の負担と市場の混乱に対する懸念」が挙げられています。韓国政府は7月末に来年度の税法改正案を発表し、その際に暗号資産税制についても決定する見込みです。
 韓国では暗号資産市場の認知度が高く、KOSDAQやKOSPIなどの株式市場を上回る取引高となっています。暗号資産投資家は昨年末時点で645万人に達しており、人口の約12%が暗号資産投資を行っていることになります。実際に韓国の暗号資産市場は世界的に見ても活発であり、暗号資産データプロバイダーのKaikoによれば、2024年第1四半期の韓国ウォンの取引高は4,560億ドルで、米ドルの4,550億ドルを上回っていると指摘されています。人口に対する投資家の割合が大きく取引も活発であるため、暗号資産課税案は今後も施行しづらい状況が続くかもしれません。

(SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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