2022/11/25
暗号資産は流動性が乏しいなか、更なる連鎖倒産への警戒感から様子見の展開
先週のハイライト先週の動き
暗号資産スポット市場は米CPIの予想比低い結果を受けてBTCは一時18,000ドルへ上昇したものの、その後は信用不安から反落。下落後は17,000ドルを回復することができず、足元は15,500ドルのテクニカルなサポート水準付近で推移している。この1週間はどの取引所も流動性が低下し取引量も少なかったため、スポットはレンジ推移となり、市場参加者はツイッターなどで更なる悪材料が出ないか様子見を強いられた。しかし、日曜にFTXから暗号資産を奪ったハッカーがETHを動かし始めたことで、現金化による売りが出る可能性が高まり、ETHは数時間で1,210ドルから1,110ドルまで8%程度下落。同時にBTCは16,500ドルから15,800ドルに4%程度下落した。その後はBTCが15,500ドル、ETHが1,075ドル程度でサポートラインの近辺で推移している。
フローデータを見ると基本的には売りが多くなっている。地域別では米国圏と欧州・中東圏で非常に売りに偏っており、アジア圏では驚くほど強く買われた。コイン別にみると、ほぼ全ての通貨で売りに偏っているが、ADAとDOGEだけは買いに偏っている。顧客カテゴリー別では、HFT・マーケットメイカー、海外取引所、銀行系が売り越しとなっている。
暗号資産先物市場では市場参加者が現物での流動性確保に動くなか、先物での裁定機会を積極的に取りに来るプレイヤーが減ったことで、様々な取引所やプロダクトで裁定が働かず混乱が生じている。CMEの先物は全ての先物のなかで最も深くディスカウントされている。これは伝統的なプレイヤーが空売りを行うための現物を借りる手段を持たない傾向があり、そのようなプレイヤーはCMEでの先物売りを選好するためである。CMEの12月限月の先物はBTCで年率約20%、ETHで約25%のディスカウントとなっている一方で、DeribitではBTC・ETH共に8%のディスカウント、Binanceでは米ドル建ての場合にはBTCが約5%、ETHが約6%のディスカウント、テザー建ての場合にはBTCが約3%、ETHが4%となっており、テザーへの警戒感も見ることができる。
暗号資産オプション市場では、先週初めに12月物のATMボラティリティがBTCで約80%、ETHで約105%とピークを付け、その後はスポットが様子見のなかレンジ推移となると、期近のオプションは激しく売られ、BTCのカーブは1週間物が55%、2023年以降のものは67%となり、期近物の方がボラティリティが低くなった。ジェネシスの破綻の噂やハッカーの動きを受けて、日曜にスポットが動くとボラティリティは多少ピックアップしたが、引き続き週初の水準は超えることができていない。
今週の展望
暗号資産市場の参加者は過去2週間そうであったようにツイッターで流れてくる倒産や増資のニュースや噂を注視することになるだろう。市場から注目されている企業のニュースが無い間は、その企業の信頼は失われ続け、資金調達はより厳しくなると思われる。一方で、市場のセンチメントが非常に弱いときには、実は暗号資産価格は底を打つことも多い。年末にサンタクロースが運んできたかのようなラリーを見られる可能性はゼロではない。
また、マクロ面ではいくつかの経済指標が予定されているが、足元の暗号資産業界の環境を考えると、これらのマクロ的な経済データが暗号資産価格に大きな影響を与えることができるかには疑問が残る。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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