Market Report

マーケット情報

2025/09/08

暗号資産週間レポート(2025.8.31~2025.9.6)
BTC一時113,000ドル台回復も雇用統計で失速、Nasdaq監視強化と米指標が焦点に

【8/31~9/6週のサマリー】
・ Nasdaq、暗号資産を大量保有する企業に対する監視体制を大幅強化すると発表
・米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回る結果に、失業率も約4年ぶりの高水準
・ Strategy(旧Microstrategy)がS&P500構成銘柄への編入を逃す

【暗号資産市場概況】
 8/31~9/6週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+1.69%の16,252,250円、ETH/JPYの週足終値は同▲1.26%の631,730円であった(※終値は9/6の当社現物EOD[9/7 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、9月の連邦公開市場委員会(以下、FOMC)での利下げ期待から買い戻しが優勢となる一方、米雇用統計の結果を受けてリスクオフに傾斜し急落する展開となった。
 8月22日のジャクソンホール会合でパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が労働市場の下方リスクに言及して以降、9月18日(日本時間未明)に発表が予定されてるFOMCでの利下げ観測が強まり、CME Groupの「FedWacht Tool」では25bpの利下げ確率が先々週末の86.4%から90%超に上昇した。これを背景にビットコインも買い戻しが優勢となり、107,000ドル台前半から下支えされる形で上昇し、一時は112,000ドル台を回復した。しかし、上値の重さが意識されると下落に転じ、9月4日にNasdaqが暗号資産を大量保有する企業への監視強化を発表すると、下げ幅は加速し109,000ドル台前半まで下押した。
 それでも利下げ期待による買いは根強く、ビットコインは113,000ドルまで上昇。9月5日17時(日本時間)に満期を迎えたオプションの売り手による買い上げも影響したとみられる。特にビットコインオプション市場の約9割を占める暗号資産取引所Deribitでは、32億8,000万ドル相当のオプションが期限切れとなり、マックスペイン価格(買い手の損失が最大化し、売り手が最も利益を得る水準)である112,000ドルに価格が収斂し押し上げられた可能性がある。
 同日発表された米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回る2万2,000人増にとどまり、失業率は約4年ぶりの高水準である4.3%に上昇。これを受け次回FOMCでの利下げは確実視され、焦点は利下げ幅に移行している。中には50bpの利下げを予想する見方も出ており、FedWatch Toolでもその確率は一時14%に達した。またホワイトハウスの国家経済会議(NEC)のハセット委員長は「より大きな引き下げが期待され、議論されると見込む」と述べている。こうした流れを背景にビットコインは週内高値である113,390ドルまで上昇した。しかしその後は、米雇用統計が示した労働市場の弱さが改めて浮き彫りとなり、景気後退への不安感が強まったことで、ビットコインは110,000台前半まで急落。特に16~24歳の若年層失業率が10.5%に上昇したことが明らかになると、消費減少や将来の生産性低下を懸念する声が強まった。さらに米国株式市場引け後に、S&P500構成銘柄変更で先日同指数への組み入れ要件を満たしていたStrategy(旧Microstrategy)が編入されなかったことが伝わると、期待外れからビットコインも111,000ドル台から再び下落した。
 9月は歴史的に暗号資産市場にとって「赤い9月」と呼ばれるほど軟調となる傾向があり、2013年以来過去12年のうち8年で下落(平均-3.77%)して取引を終えている。過去データからは調整局面に入りやすい時期といえるだけに、今月は一層の冷静な判断と戦略的な行動が投資家に求められる。


[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコインの月間収益率(%)]

(coinglass提供のデータより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【8/31~9/6週の主な出来事】



【9/7~9/13週の主な予定】


【今週のひとこと】World Liberty Financial(WLFI)が複数の取引所で上場

 日本時間2025年9月1日(月)、トランプ大統領とその家族が支援・関与していることで注目を集めている暗号資産関連企業「World Liberty Financial」が発行するトークン「WLFI(World Liberty Financial)、以下WLFIトークン」が、Binance、Coinbase、OKXなど複数の海外大手取引所にて一斉に上場しました。
 WLFIトークンは上場直後に0.30ドル台で取引を開始しましたが、初期投資家らの利確売りにより価格は下落し、現時点では0.20ドル台で推移しています。総供給量は1,000億WLFIとされており、現在流通しているのはそのうち約24%(約246億7,000万WLFI)にのぼります。これに基づく現在の時価総額はおよそ50億ドルと算出され、すべてのトークンが市場に出回ったと仮定した「完全希薄化後」の時価総額は約200億ドルとなっています。
 米経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』の報道によれば、トランプ大統領およびその家族はWLFIトークンの総供給量の約4分の1にあたる250億枚近くを保有しているとされています。これにより、現時点の市場価格で換算すると、トランプ一家の保有分の評価額はおよそ50億ドルにも達する見込みです。
 影響力の大きい政治家が暗号資産に深く関与することの是非については議論を呼ぶ可能性もありますが、WLFIの動向は今後も暗号資産市場において大きな注目を集めそうです。



(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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