Market Report

マーケット情報・チャート

2022/05/10

暗号資産に降りかかるマクロ的懸念

先週のハイライト
  • ビットコイン等のメジャー暗号資産は13-15%の下落
  • アルトコインのSOL(ソラナ)、MATIC(ポリゴン)、DOT(ポルカドット)、AVX(アバランチ)は15%~20%の大幅な下落
  • 米ドルのステーブルコインTerra USD (UST)がペッグを維持できかなったことを受け、LUN(ルナ/テラ)は大幅下落
  • 先物のベーシスは年初来安値圏、ファンディングレートがマイナスになった資産も
  • 市場の不安定さからボラティリティは上昇

  • 先週の動き
    先週の暗号資産市場は、FOMC後に金融市場全体に広がった一時的な楽観論が後退し、株式とともに下落し1ヶ月ぶりの大幅安となった。パウエル議長の「0.75%利上げは積極的に検討しているものではない」の発言を市場はハト派的と捉え、ビットコインは株式ともに上昇し、40,000ドルをタッチ。しかし、翌日には、その楽観論は即座に後退。米国債券市場では長期債利回りが上昇し、数年ぶりの高水準を更新し利回り曲線はスティープ化し、市場のインフレ懸念が深いことを再認識させた。ビットコインは、37,000ドルのサポートを8日にクリアブレイクし、週明けの5月9日には31,000ドル割れまで下落した。イーサリアムも2,300ドル割れまで下落したが、ビットコインに対してはアウトパフォームしている。ビットコインよりイーサリアムを保有したいマクロトレーダーからのビットコイン売り圧力が、BTC/ETHのクロスを重くさせていると推察する。とはいえ、先週1週間を通して見ると、ビットコイン、イーサリアムともに13-15%の下落を記録した。

    他の暗号資産も10-20%下落しているが、先週のLUN(ルナ/テラ)は25%以上の大幅安となり特筆すべき事象である。LUNは週明けに、50ドルを割り込と下落が加速し、31ドルを割り込む暴落となった。これは週末に大口の市場参加者が、テラフォームラボが発行する米ドルにペッグされたステーブルコインのTerra USD(UST)から、他のステーブルコインへ資産を移行するために巨額な引き出しを行ったことにより、USTが供給過剰になったことでペッグを維持できず急落を引き起こしたためである。LUNはUSTの価格を米ドルにペッグするよう設計されており、USTのペッグ崩壊はLUNの信用問題に繋がった。

    売買動向を見ると、メジャー暗号資産はバランスが取れており、SOL(ソラナ)とMATIC(ポリゴン)に売りが見られた一方、AVX(アバランチ)は買いが優勢であった。地域別では、アジア圏、欧州・中東圏が買いが顕著であり、米国圏においては売りが優勢であった。顧客カテゴリー別では、銀行からの買いが目立っていたが、これは長期的にポジションを保有する市場参加者によるフローによるものだろう。

    暗号資産先物市場は、依然として低調である。先物ベーシスは年初来安値圏で推移しており、1ヶ月物ベーシスは1%近辺で取引されている。また、先週メジャー暗号資産が下落に転じた当初、ベーシスがマイナスとなった。これは事実上、ステーブルコインを貸して暗号資産を借りる場合に支払いが発生するという極めて稀な状況であると言える。また、マイナーが、株式の下落により新規のエクイティファイナンス(株式を発行することで資金を調達すること)が魅力的でなくなったため、デッドファイナンス(金融機関や投資家からお金を借り入れることで資金を調達すること)に関心を持ち始めたことも注目すべき点であろう。

    先週のオプション市場は、市場変動により大きく動いた。FOMC前までは、フロントエンド(期近物)のオプションは買われ、52%から64%まで上昇、FOMC後には再び売られ54%まで下落したが、5月5日に暗号資産市場が大幅下落するとボラティリティは60%台前半まで上昇。しかし、5月6日にはDefiからのオプション売りフローを見込んだ大口プレイヤーが1週間物イーサリアムの行使価格2,400ドルを売り込んだことで、イーサリアムのボラティリティには売り圧力が掛かった。この様なオプションマーケットにはDefiからの売り圧力が恒常的に掛かっており、ボラティリティを押さえつける要因になっている。足元のビットコイン7月物ATM(アット・ザ・マネー)は、64%、9月物は63%で取引されている。

    今後の見通し
    今週のハイライトは、5月11日(水)に発表される米国消費者物価指数(CPI)だろう。 市場予想は前年同月比8.1%上昇、コアが6.0%上昇と、いずれも3月(8.5%上昇、6.5%上昇)に比べて減速する見通しである。今回のポイントは、食料品やエネルギー価格を除いた、住居費の約4割で構成されるコアCPIの数値となりそうだ。 また、二桁の家賃上昇が報告されれば、政治的な問題となる可能性が出てくるだろう。市場は、インフレに対して楽観的になっておらず、今後さらにFRBは積極的な引き締めスタンスになると見ている。その場合、資産価格のダウンサイドリスクが高まる可能性があるかもしれない。








    (提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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