2023/03/08
ロングポジション解消により強気派は守りに
先週のハイライト先週の動き
先週は経済指標等の発表が少なかったものの、金曜日のアジア時間に大量のロング解消売りが出たことが先週のメインイベントであった。BTCは数分間で23,400ドル台から22,000ドル台に下落し、その後は22,200ドル~22,500ドルのレンジに落ち着くこととなった。シルバーゲート銀行に関するネガティブなニュースが連日報道されたが、この話は数か月前から出ており、主要な市場参加者はシルバーゲート銀行なしでの取引に備える猶予はあったと思われる。従って、下落の理由はこのシルバーゲート銀行に関連したものとも推測されるが、実情は不明となっている。暗号資産に対する弱気な動きは、木曜日に米2年債利回りが15年ぶりの高値を付けるといったマクロ経済の動きからの影響を受けた可能性もある。いずれにせよ、BTCとETHは5%近く下落し、他のアルトコインも追随した動きとなった。
フローデータをみると、BTC(買い手が53.6%)がETH(買い手が48.6%)と比べて買い選好が強く、ADA、DOGE、LINKが大きく買い越しとなっており、SOL、AVAX、DOTは売り越しとなっていた。地域別にみると、アジア・オセアニア地域が買い手、北米地域や欧州・中東地域は売り買い交錯。投資家別でみると、銀行系、取引所、OTC業者が買い手となっていた。
暗号資産先物市場では対ドルベーシスが約2%程度低下しているものの、引き続きプラス圏を維持しており、BTCとETHの3月限月と6月限月ではスポットに対して年率5%~6%程度のプレミアムとなっている。
暗号資産オプション市場のインプライド・ボラティリティは前週から低下を続け、BTCの3月限月のATMボラティリティは40%台半ばと、2週間前の60%近い高値水準から大幅下落となっている。ETHのボラティリティはBTCに対してほぼ全ての行使期日で5%程しかプレミアムとなっておらず、通常よりも割安に感じており、上海アップグレードに対するリスクヘッジをしたい人にとっては、オプションロング構築のチャンスかもしれない。金曜日のスポット急落時にも期近物のオプションの買い需要は一時的に留まり、長期物のボラティリティに至ってはほとんど動かず、スポット下落時のオプションの買い需要はほとんどないことが伺えた。これは暗号資産市場では2022年に比べて構造的な価格下落時のリスクが低減されていることを意味している。BTCの期近物のリスクリバーサルは下高の状態となっており、ETHも期近物から長期物までそのようになっているが、スポット下落時にボラティリティ下落が見られるという正の相関を維持しており、スポットの下落が一旦落ち着くと、すぐにオプションの売り需要が見られた。
今週の展望
今週は、先月大きな変動要因となった米雇用統計が控えている。非農業雇用者数の市場予想は+22.4万件となっており、直近のインフレデータは利上げの長期化期待を強める内容となっており、雇用統計が予想を上回る好結果であった場合は、リスク資産を売る動きにつながる可能性がある。
その前には、週中にパウエル米FRB議長の議会証言が控えており、今後数か月の景気や金利見通しを見極めるために注目されている。また金曜日には黒田総裁のもとで最後となる日銀金融政策決定会合が控えており、サプライズ好きの総裁であることから10年債金利のターゲットを拡大する可能性も残されている。
暗合資産市場自体では、BTCが金曜日に付けた22,000ドル、およびその1段下にあるFTX破産前の高値であった21,500ドルが下値抵抗線として意識されており、仮にそれらを下回るようであれば18,500ドルが次のターゲットとなる。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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