2023/01/04
年末年始に伴う材料待ちの動き
先週のハイライト2022年の振り返り
マーケットは売買高とボラティリティの低下から抜け出すことができないまま年明けを迎えたこともあり、ここからは2022年の振り返りと2023年の見通しについて記したい。
第1四半期および第2四半期は、BTC価格は35,000~45,000ドルで推移し、ウクライナ情勢や米金利の上昇といったマクロ情勢を受け、株式市場と非常に相関性の高い動きによってこれまでのブル・マーケットから一転してリスクオフの動きとなった。その後、5月に入ってから状況が変化し、ステーブルコインの一つであるテラ(UST)のペッグが外れ、ルナ(LUNA)マーケットの崩壊によって500億ドルの資産が数日で暗号資産市場から消失することとなった。その間に主要コインは15~20%下落し、BTCは30,000ドル台、ETHは2,000ドル台に下落した。
経験上、短期間での資産の消失は連鎖反応することが知られていることから、この動きは年末まで続き、主要なレンディング業者やファンドといった暗号資産関連企業の破綻や縮小がおこり、世界最大の取引所が破綻する可能性があることをこの時点で十分に想定すべきであった。
その後1か月程度レンジで推移したのち、6月10日に米CPIが市場予想を上回る強い内容であったことから株式市場につれて暗号資産市場も下落し、BTCは25,000ドルを抜けると翌週には18,000ドル台まで下落した。その間、暗号資産先物の対ドルベーシスは現物の売りによって縮小傾向となり、実際にこれは証拠金不足に伴うポジション解消によるものであった。
その後、いくつかの破綻等がみられたが売買高は減少傾向となり、BTCは8月に25,000ドルの上値を試すものの、FOMCの利上げ継続の姿勢や他の関連企業の破綻への懸念もあって押し戻されることとなった。
9月に入ると、ETHのマージ・アップグレードに伴う一時的な上昇がみられたものの、ETHは1,755ドル近辺まで上昇したのちはアップグレードの成功にも関わらず1,300ドル台まで下落となった。
10月から11月にかけては、イーロン・マスク氏のTwitter買収に伴うDOGEへの期待や、MATICとメタ社、SOLとグーグル社等の提携により一時的な上昇局面がみられた。
その後11月5日から6日にかけては、アラメダ・リサーチのバランスシートにしめる大半がFTX社のコインであるFTTで占められていたことがSNS上で駆けめぐったことをうけ、わずか数日でFTTは価値の大半を失い、FTXのエコシステムに組み込まれていた顧客資産にも影響を与え、6月のルナ・テラショックを想起させることとなった。
FTX社の破綻は、取引所からの資産退避につながり、また取引機会リスクよりも信用リスクを優先する動きから取引高の減少につながった。その結果、取引所間のアービトラージ機会は数年前の水準まで拡大している。
また11月下旬には、CME先物のBTCおよびETH先物12月限は、スポット価格と比べて年率20%から25%程度割安で取引され、Deribitの8%、Binanceの5%を大きく上回る乖離となった。
2023年の見通し
2022年に起きた出来事は2023年にも引き続き影響を与えている。企業価値の下落や財務諸表の悪化は取引リスクよりも信用リスクへの対応を優先する傾向へとつながり、市場参加者やこれまでの規制が未成熟な取引所に代わり、より安全な資産保全が実現できる取引所を期待している。
一方で多くの市場参加者は引き続き既存の取引所で取引をせざるを得ず、今後の暗号資産市場の回復には、伝統的な金融市場への参加者による市場への参入が求められている。参入を検討しているところはいくつかあるものの、2022年の動きを受けて参入計画の練り直しや延期につながっており、上述したように安全な資産保全がなされない環境下では新規参入による市場の成長は難しい状態となっている。
上記の想定が正しいようであれば、今はFXと同様のスキームを持ったOTC業者、または株式市場と同様にクリアリングハウスとの協業を行う取引所に売買は動いていくとみている。特にプライム・ブローカーやクリアリングハウスの発達は2023年に注視したい点であり、長期的な市場の成熟を期待する上でも重要視されている。
2022年に崩壊したバブルは、少数の投資家によって保有された企業による、レバレッジを駆使した買い一辺倒のビジネスモデルによって形成されたブル・マーケットと、それらのレバレッジなくしてはありえなかった高値を付ける動きによるものであった。今後の教訓として、レンジ相場または下落相場でも生き残ることができるビジネスモデルの必要性が高まっている。レバレッジを抑えることはすでに信用リスクを抑えるために必要であるが、それと同時に信用リスクを金利リスクから切り離すことが可能になることも期待されている。
価格リスクへの対応は、バランスシートの観点からもオプション取引の更なる活用にもつながり、またレンジ相場や下落相場への対応もオプション取引によって可能となる。デリバティブの活用は、取引高や商品の複雑さにもよるが、同様に2023年のテーマの一つとなる。
2022年と異なり、2023年は上昇機運の無い中でスタートし、現在生き残っている個別コインへの投資家は、将来への期待よりも、より現実を注視するとみられる。つまり、将来的な成長見通しよりも、より早い段階で利益が出せることを示すことができたコインが、2023年の勝者となるのではないだろうか。
市場ではマクロ動向に注目が集まっていることから、中規模の時価総額のコインが選好されるとみており、インフレはすでにピークを付けたかどうかキーとなり、その後の景気回復や新興国でリセッションは回避できるのか等に注目が集まっている。仮にインフレピークがまだであった場合、FRBは引き締め継続につながり、その場合はダウンサイドリスクやボラティリティの低下にもつながる個別企業の市場価値の状況が注視される。
現時点が最悪期であることを期待しており、同時に多くの市場参加者は今後の下落への備えができていることから、さらなる市場の崩壊よりはじり下げの可能性が高い。仮に上昇基調となるようであれば、それは2023年後半以降になる可能性が高く、それまでは当面狭いレンジでの推移が続き、その間は逆張り戦略が望ましいのではと考える。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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