2025/11/10
暗号資産週間レポート(2025.11.2~2025.11.8)
ビットコイン、調整局面続く — ETF資金流出と市場センチメントの悪化
【11/2~11/8週のサマリー】
・中国、米国産農作物への報復関税停止
・米民間雇用者数が4万2,000人増
・金融庁、三大メガバンクによる共同ステーブルコインプロジェクトを承認へ
・米国の政府閉鎖、38日目を迎える
【暗号資産市場概況】
11/2~11/8週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲7.30%の15,679,200円、ETH/JPYの週足終値は同▲12.33%の522,175円であった(※終値は11/8の当社現物EOD[11/9 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、週初から週央にかけて軟調な推移となり、ビットコイン短期保有者の平均取得単価とされる11万2,500ドルを下抜け、一時10万ドル割れを試す展開となった。史上最高値からは約21%下落しており、依然として先月の調整局面の影響を引きずっている。一方で、全供給量の約71%はいまだ含み益の状態にあり、含み損も3.1%程度にとどまっている。このことから、今回の下落局面は、パニック的な投げ売りによる急落というよりも、むしろ比較的穏やかなベアフェーズに位置づけられるだろう。
マクロ環境では米国政府機関の閉鎖が続く中、公式マクロデータが不足していることによる先行きの不安感が存在する。実際に、政府閉鎖は史上最長期間を記録し、議会での合意形成が難航する中で空の便の運航制限や低所得層向け食料支援の遅延といった実体経済への影響が拡大している。また、消費者・企業の信頼感も低下しており、RealClearMarkets/TIPP経済楽観視数は11月に9.1%低下して43.9と2024年6月以来の最低水準を記録した。投資家信頼感は3.1低下して58.6、非投資家信頼感は10.4低下して38.0となり、両者の格差は20.6ポイントに拡大している。こうしたセンチメントの悪化を背景に、株式市場はリスク回避の一週間となった。コモディティ市場では、AI関連株の割高バリュエーションへの懸念で金への逃避買いによる安全資産志向が働いた一方、原油は米国の在庫増やロシアの供給不安にもかかわらず下落しており、リスクオフ色が確認された。依然として慎重な姿勢でとらえられる暗号資産市場の背景から、それらに関連する株の下落も顕著に表れた。
オンチェーン上では表面下における長期保有者の売却が進行している。先週に続き、ビットコイン価格が下落基調にあるにもかかわらず売却が続いていることは、過去のサイクルにおいて上昇局面で売りが出ていた時期とは対照的であることが確認でき、売り圧力が持続している状況を裏付けている。デリバティブ市場では永久先物のロングポジションのファンディングレート(現物と永久先物の価格差を縮めさせるための金利)に対する支払額が4月のピーク時の3億3,800万ドルから急速に減少しており、先週に入って減少ペースがさらに加速している。11月7日には1億1,100万ドルまで縮小しており、投機的ポジションの広範な整理が進行していることを示唆している。また、ファンディングレートの低下は、アグレッシブなロングレバレッジよりも中立的なポジション選好への移行を反映している。
米国のETF市場では、強い純流入の波があった9月、10月から一変し、11月初週のフローは鈍化しており、米国の現物ビットコインETFは1億5,000万ドルから7億ドルの流出となっている。最近のトレンドからは、機関投資家による資本分配が控えめになっていることが示唆される。この動きは、利益確定によるポジションの縮小やリスク選好の抑制など、ETF全体で買い圧力が弱くなっていることに起因している。この活動の鈍化は、価格全体の軟調な推移と連動しており、10月10日の調整局面以降における買い手側の確信が低下していることを示す。
ビットコインが心理的な節目である10万ドル付近を推移する中、オプション市場ではプットオプションが依然として高値圏にある。市場は引き続きヘッジ姿勢を維持しており、少なくとも現時点では底値を探るような押し目買いの動きは見られない。10万ドルのストライクにおけるプット・プレミアムの推移をみると、現在の市場心理がより鮮明に表れている。ビットコインが同水準で安定しつつあるにもかかわらず、プレミアムは高止まりしたままで推移しており、ヘッジ需要の強さを示唆している。この傾向は、トレーダーが新たなリスクテイクよりも防御を優先していることを裏付けるものである。一方で、方向のヘッジコストが依然として高水準にあり、一部のトレーダーはリスク・プレミアムを売ることで割安なバリューを狙い始める可能性も出てきている。
今週は米国における政府閉鎖の引き延ばしリスクが依然として残っている。また、米中関税の緩和やその動向についても、暗号資産市場に影響を及ぼす可能性が高い。したがって、市場参加者は不透明感を踏まえ、慎重な対応が求められるであろう。
[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
【11/2~11/8週 の主な出来事】

【11/9~11/15週の主な予定】

【今週のひとこと】Curator
11月3日、DeFi市場で大きな動きが見られました。DeFiプラットフォームのStream Financeが発行するxUSD(USDCに1:1でペッグされたステーブルコイン)が$1.26から$0.80に急落し、他のステーブルコインも連鎖的にデペッグを起こしたのです。今回はこの騒動の鍵を握る存在であるCuretor (キュレーター)について考察したいと思います。
事の発端はStream Financeの運用に関する疑惑がSNSで拡散されたことによる不安の拡大でした。SNS上で不穏なオンチェーン分析が明らかにされたのです。その内容はStream FinanceがElixirプロトコルでxUSDを担保に資金を借入れ、借入資金でさらにxUSDをミント、そのxUSDを再びElixirで担保にするといったまるで錬金術のような取引を行なっているというものでした。当然、市場ではStream Financeに対する疑念が強まり、冒頭にお伝えしたxUSDのデペッグが発生するに至りました。Stream Financeは本件で約130億円(約$93M)の損失を明らかにし、プラットフォームは出金を一時停止、保留中の入金の処理も停止し、事態が明確になるまでユーザーの資金を事実上凍結する事態となりました。
xUSDはUSDCやDAIのようなグローバル規模のステーブルコインではないものの、CuratorがxUSD市場に顧客資金を大量投入していたことで一連の騒動に巻き込まれたユーザーが多数発生することになりました。Curatorは、2020年代初頭にMorpho、Eulerなどの主要レンディングプロトコルが採用したいわば「DeFiの運用戦略およびリスクマネジメントのプロ集団」のことで上位5社(Gauntlet、Steakhouse Financial等)だけでDeFi全体の推定60%の資産配分に影響を与える市場支配者となっています。CuratorはxUSDの高い年利換算利回り(20〜30%。これは市場平均の2〜3倍)から想起される、TVL(Total Value Locked=預かり資産総額)拡大による管理手数料とパフォーマンスフィーの増加を期待して積極的にxUSDを採用するようになっていきました。しかしxUSDの採用には大きなリスクがありました。xUSDを担保資産として取り扱っていた主要プロトコル(Morpho、Euler、Silo)ではxUSDに対する厳格なデペッグ検知機能を備えていませんでした。xUSDは多くのステーブルコインと同様に、xUSD自体に価格監視ロジックが組み込まれているわけではないのですが、連携先プロトコル(Morpho/Euler等)側も、Chainlink等のオラクル経由で価格を取得していなかったのです。そのためxUSDの実勢価格は反映されず、常に「xUSD=$1.00」とみなしていました。その結果、Stream Finance事件では、xUSDが$0.16まで暴落したにもかかわらず、MorphoやEuler上では「$1.00の担保」として扱われ続け、この誤認が原因で清算処理が発動せず、気づいた時には約400億円(約$285M)もの債務が事実上焦げ付き「清算不可能」な状態で凍結されたのです。その後、USDX(関連ステーブルコイン)も連鎖デペッグを起こしました。
一連の騒動は、Curatorの運用手法を見直す契機となっただけでなく、ステーブルコインやDeFiプロトコルの根幹リスクを浮き彫りにしました。便利で高度に自動化された時代だからこそ、プロトコル運営者には技術的な安全性と倫理観の両立が求められ、私たち利用者も改めてDYOR(Do Your Own Research)=自ら調べる姿勢を改めて見直す必要があるかもしれません。
(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
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