2023/03/23
暗号資産業界の主要決済銀行の閉鎖とインフレ動向を反映しBTC上昇
先週のハイライト先週の動き
先週はBTCに買いが集まった。週初はシリコンバレー銀行(SVB)の破綻の報を受けてリスクアセットは下落したが、FRBが破綻のダメージを抑えるべく流動性の供給を表明したことから反転。市場参加者の米国に対する利上げ見通しは大幅な下方修正を迫られ、FEDが流動性供給を示したこともあり、今後の利上げは短期間で終了するとの見通しが強まった。多くの銀行が暗号資産関連の市場参加者の締め出しを行っており(この事は暗号資産を売っても、実際にUSDを受け取ることが困難な状態を示している)、また直近のステーブルコインの不安定な状況を受け、多くの市場参加者はBTCを保有することが最もリスクが少ないと判断するに至っている。
日曜日から月曜日にかけてBTCは約4,000ドル上昇して24,500ドル台を付け、その後発表された米CPIは予想通りであったもののBTCの選好は続いたため、一時26,500ドルまで上昇。その後24,500まで戻されたものの金曜日のアジア時間から再び上昇に転じ25,000ドルを抜けると27,000ドル台を付け、金曜日の終盤には27,800ドル台の高値を付けた。28,500~28,800ドル台に強い抵抗が見られたものの、現状はそれに近い水準でとどまっている。ETHはBTCと比較して終始アンダーパフォームとなりETH/BTCは0.072から0.063台へ12.5%下落した。アルトコインも連れて上昇したものの、先週の動きはBTCがメインであった。
フローデータを見ると、BTCがETHと比べて買い選好が強く、SOL、MATIC、LINKは強い売り越し、XLM、NEARは強い買い越しとなっていた。地域別ではアジア・オセアニア地域が買い手、北米および欧州・中東地域が売り手となっていた。投資家別ではファンド系が唯一買い手となっていた。
暗号資産先物市場ではSVBの破綻直後は対ドルベーシスはマイナス圏だったが、スポットの上昇を受けてプラス圏に浮上。主要な取引所では対ドルベーシスは1%~3%の小幅なプラスだったものの、CMEだけは週明けに伝統的な参加者から買いが集まったせいか、10%~20%程度まで大幅に上昇した。OTCレンディング市場では、危機の際に見られるように取引高は低水準に落ち込んだ。
暗号試案オプション市場は非常に活発に取引が行われた。先々週のSVB破綻直後にはリスクリバーサルは4%の下高だったが、現状はスポット上昇を受け6%の上高になっている。ここ最近はスポットが下がるとボラティリティも下がるという正の相関が見られていたが、SVBが破綻した際にはパニック的に下サイドのオプションが買われたことで、一旦その相関は崩れたが、その後、米国当局が預金保護などを発表したことで、安心感からスポット上昇につれて上サイドのオプションが買われるという正の相関を取り戻した。ATMのボラティリティは3月限月が約75%、4月限月が約68%と大きく上昇しているが、それはスポットが高値圏にいるということを表している。
今週の展望
今週はFOMCおよびパウエルFRB議長の記者会見に最も注目が集まっており、インフレ対策だけではなく、銀行破綻への対応や労働市場への影響など、現状は最も難しいかじ取りが必要となっている。2週間前までは25ベーシスもしくは50ベーシスの利上げ予想が半々となっているが、現在はインフレ懸念の再発や引き続き堅調な労働環境にもかかわらず、金利据え置きおよび年後半からの利下げを予想する向きも出ている。
FOMCの結果に関わらず、暗号資産市場は独自の材料をメインに動くことが想定される。現在の水準で利益確定の動きが一部見られており、2021年中盤に下落が止まった水準でもある28,500~28,800ドル台は非常に重要なポイントとなっている。多くの強気派は、コールオプションで収益を回転させる動きとなっており、言い換えると高値圏では売りが出やすい局面となっている。いずれにしても今週は上下にかかわらず動きが出やすいと想定される。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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