Market Report

マーケット情報

2025/12/01

暗号資産週間レポート(2025.11.23~2025.11.29)
米中対話・和平合意進展・米国指標改善でリスク選好回復:暗号資産市場は全面高

【11/23~11/29週のサマリー】
・トランプ大統領が習近平国家主席と電話会談
・ロシア・ウクライナの和平合意に進展
・約133億ドル相当のビットコインオプションの未決済建玉が満期を迎える
・現物ビットコインETFが4週間ぶりに純流入に転じる

【暗号資産市場概況】
 11/23~11/29週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+7.86%の14,232,850円、ETH/JPYの週足終値は同+8.89%の468,255円であった(※終値は11/29の当社現物EOD[11/30 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待の高まりに加え、米中関係改善の兆しやロシア・ウクライナ戦争における和平合意進展など、地政学リスクの後退を背景に全般的に強い買いが広がった。特にビットコインは投資家心理の改善を敏感に織り込み、節目となる90,000ドル台に再び到達するなど、週を通じて堅調な値動きを示した。
 市場センチメントの改善を象徴する動きとして、28日に約133億ドル規模のビットコインオプションが満期を迎えたものの、価格変動は限定的に留まり、市場が落ち着きを取り戻している様子が確認された。
 特に注目されたのは、25日にトランプ米大統領が自身のSNS「Truth Social」で習近平国家主席との電話会談について「非常に良い電話会談を行った」と投稿したことである。この発言を受け、ビットコインは89,000ドル台まで上昇し、暗号資産市場のFear & Greed Indexも約2週間ぶりに「極度の恐怖」の水準から脱し、市場心理の改善が明確となった。同日、米国市場が開く前には、ウクライナがロシアとの戦争終結に向けた和平案に同意したとの報道もあり、地政学リスクの低下によりマクロ環境が一段と改善した。
 翌26日には、米国の新規失業保険申請件数が市場予想を下回ったことから、景気の底堅さが意識され、米国株式市場が上昇。これに連動して暗号資産市場でも買い圧力が強まり、ビットコイン価格は上昇し、27日には91,000ドル台に到達した。さらに28日には、銀1オンスあたりの価格が55ドルを超えて史上最高値を更新し、米国株式市場も5営業日連続で上昇。この動きに連動してビットコインも一時93,000ドル台まで上昇したが、上値の重さが意識されると徐々に売り圧力が強まり、29日にかけて3,000ドルほど下落して再び90,000ドル台に戻る結果となった。
 ETF市場の動向では、現物ビットコインETFは10月24日以降、4週間連続で週次ベースの純流出となっていたが、ビットコイン価格の上昇に伴い先週は純流入に転じた。また、現物イーサリアムETFも10月31日以来3週間ぶりに週次ベースで純流入となり、暗号資産市場全体で底打ち感が広がった。
 また、オプション市場の詳細では、28日に満期を迎えた約133億ドル相当のビットコインオプションについて、マックス・ペインは102,000ドルで、コールの未決済建玉が約92,700BTC、プットの未決済建玉は約61,100BTCとなっており、依然として強気の見通しが優勢であることが確認された。一方、プットの権利行使価格が最も多く集中していた価格は80,000ドルとなっており、市場が下落リスクも一定程度意識していることを示唆していた。
 金融政策の方針転換や地政学リスクの低下によりマクロ環境が改善する中、今週はイーサリアムの大規模アップデートや米国の11月ADP雇用統計の発表など重要イベントが控えている。短期的な価格変動だけでなく、オプション市場やETF動向を含む市場全体の需給バランスを総合的に見極めることが、投資家にとって重要な戦略となるだろう。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【11/23~11/29週の主な出来事】


【11/30~12/6週の主な予定】


【今週のひとこと】「フサカ(Fusaka)」アップグレード

 2025年12月3日(日本時間12月4日 06:50頃)、イーサリアムの主要アップグレードとして「フサカ(Fusaka)」が予定されています。(執筆時点の予定時間)今回は、2025年5月の「ペクトラ(Pectra)」に続くメジャーグレードであり、特にレイヤー2(L2)の手数料削減やユーザー体験(UX)の向上を目的としています。「ペクトラ」の流れをくみ、イーサリアムのインフラをさらに拡充するアップグレードです。「ペクトラ」の計画が複雑なため二分割された結果、「フサカ」ではデータ可用性やネットワーク能の向上に焦点を絞った内容となっています。本稿では詳細部分は割愛しつつ、主要なアップグレードの内容に簡単に触れてみたいと思います。
① データ可用性とスケーリング
・PeerDAS(ピア・データ可用性サンプリング)
各ノードが全ブロブ※1データを保持せず、一部だけを管理・確認する仕組みです。L2が送るデータ量を増やしても、各ノードの負担を抑えつつ、手数料を下げて処理速度を向上できます。
・BPO(Blob Parameter Only)フォーク
ブロブの数や容量を調整できる小規模なフォークです。L2の利用増加に応じて、段階的にデータ容量を増やせます。
② ネットワーク性能・安全性の強化
トランザクションのガス使用上限キャップ導入や暗号演算コスト最適化など、ネットワーク安定化の改善が進み、 過度な負荷による遅延リスクを抑える仕組みが強化されます。ネットワークの安定性を高め、極端に重い処理で全体が止まるリスク(DoS攻撃など)を減らせます。
③ ユーザー体験の向上
・ブロブ手数料の最低価格設定
L2がL1にデータを送る際の手数料を安定化。需要が低い時に極端に安くなりすぎず 、L2利用コストを予測しやすくします。
・プリコンパイル対応
プリコンパイルの拡充により、より多様な署名方式を効率的に検証できるようになり、将来的にパスキー等を利用した署名にも対応しやすい基盤が整備されます。

 「フサカ」により、イーサリアムの重要課題の1つである「ロールアップ※2」が投稿するブロブデータ処理の効率が向上し、将来的なデータ量増加に備えた拡張性が強化されます。これによりL2側の負荷が抑えられ、より多くの取引を低コストで処理できる環境が整い、ユーザー体験の向上が期待されます。L2中心のエコシステムを安定的に支える基盤強化が進むことで、L2取引増加やL1データ投稿需要の拡大につながり、中長期的にはイーサリアム全体の活性化が見込まれます。
 次期アップグレードとして検討されている「Glamsterdam(グラムステルダム)」では、EVM Object Format(EOF)や提案者・ビルダー分離などの提案が議論されており、EVM効率化やブロック生成構造の改善を通じて、イーサリアムをより軽量で持続可能なネットワークへ進化させることが目指されています。
 今回の「フサカ(Fusaka)」アップグレードを機会に、イーサリアムの今後の拡大戦略に注目してみるのも面白いのではないでしょうか。

※1本稿での「ブロブ」とは、レイヤー2(L2)が、Ethereum(L1)にデータを記録するため専用のデータ容量のことを指します。
※2 本稿での「ロールアップ」とは、取引処理をオフチェーンでまとめ、その結果だけをメインチェーン(L1)に書き込む仕組みのことを指します。




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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