2025/11/04
暗号資産週間レポート(2025.10.26~2025.11.1)
米中経済協議進展とFOMC方針表明を受けた市場調整:暗号資産は小幅軟調、Zcashが例外的上昇
【10/26~11/1週のサマリー】
・ビットコインは米中経済貿易交渉進展を受け116,000ドルを回復
・FOMCでは市場予想通り25bpsの利下げも12月利下げ観測が後退
・米中首脳会談にて中国への100%関税回避も市場の反応は限定的
・日本初のステーブルコイン「JPYC」発行開始
・Strategy、S&Pグローバルから初めて「B-」の信用格付けを受ける
【暗号資産市場概況】
10/26~11/1週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲0.82%の16,913,800円、ETH/JPYの週足終値は同▲1.50%の595620円であった(※終値は11/1の当社現物EOD[11/2 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、米中経済貿易交渉の進展を受けてリスクオンとなりビットコインが116,000ドルを回復。一方で、連邦公開市場委員会(FOMC)後の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言により12月の利下げ観測が後退したこと、さらに注目された米中首脳会談の合意内容が市場の期待に届かなかったことから、週後半にかけて弱含んだ展開となった。
週初、マレーシア・クアラルンプールで行われた米中経済貿易交渉では、2日間にわたる緊張した議論の末、ベッセント米財務長官が「30日の首脳会談での議論の土台となる極めて良好な枠組みで合意した」と発表した。その後、中国側代表の李成鋼商務次官も「建設的な協議を行い、いくつかの課題で初歩的な合意に達した」と述べ、米中貿易摩擦への懸念が後退した結果、ビットコインは116,000ドルまで上昇。トランプ米大統領は10月11日に中国に対して100%の追加関税を11月1日から発動すると警告していたが、今回の合意により追加関税を回避する可能性が浮上した。特に、今回は米国側だけでなく中国側も公式に合意を認めた点が市場へ大きなインパクトをもたらした。通常、米中の貿易協議では米国側が「合意に近づいている」「協議は建設的だった」と一方的に発表することが多く、中国側は期待値の過度な上振れを避け、交渉カードを保持するために発言を控える傾向が強かった。そのため、中国側の李次官が米国側と同様の内容を同じタイミングで確認したことは、「双方向の合意」 が成立したことを示す異例の動きとなり、市場がより信頼できる材料(fact)として受け止めたことで、暗号資産市場でもリスク選好姿勢が強まった。
週央の10月30日未明、FOMCは市場予想どおり0.25%の利下げを実施し、政策金利は3.75~4.00%となった。ただし、その後のパウエルFRB議長の記者会見では、「12月会合での追加利下げは既定路線ではない」と明確に述べたほか、短期資金市場の逼迫を背景に量的引き締め(QT)政策の一部見直しに踏み切ると発表し、12月から満期償還分の再投資(QT停止)を行う方針を示した。これらは利下げ期待に対して慎重姿勢を示すタカ派寄りのメッセージと受け止められ、ドル高・長期金利上昇が進んだことで、ビットコインは109,000ドルへ下落した。市場心理が「流動性低下」や「金融環境の引き締まり方向」へ傾き、リスク資産全般が売られやすい状況となった。
さらに同日、韓国・釜山で米中首脳会談が開催され、約6年ぶりに両首脳が直接会談を行った。主な合意内容は「レアアース輸出規制の1年間の延期」「フェンタニル関連製品に対する関税の20%から10%への引き下げ」「米国産大豆など農産物の輸入再開」などであった。これにより、中国からの輸入品に対する100%追加関税の発動は回避されたものの、技術覇権、半導体、台湾などの構造的問題には踏み込まず、「1年間の暫定的停戦」と位置付けられた。内容が市場の期待したほどの「抜本的な妥結」ではなく、あくまで限定的な合意にとどまったため、ビットコインへのプラス効果も限定的となり、パウエル議長のタカ派寄り発言と重なってビットコインは106,000ドルへ下落した。
こうした下落も相まって、10月は統計的に強気相場になりやすい「アップトーバー(Uptober)」と呼ばれていたが、CoinGlassのデータによると2025年10月は月間で-3.69%となり、6年連続の上昇記録は途切れた。
今週は通常であれば米雇用統計が発表される週であるが、米政府機関の一部閉鎖が続いているため、発表時期は不透明である。米国の雇用環境は10月にかけて悪化している可能性があり、8月以降の減速が続いている可能性もあるため、米国民間企業が発表するADP雇用統計にも注目したい。
[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
【10/26~11/1週 の主な出来事】

【11/2~11/8週の主な予定】

【今週のひとこと】軟調な暗号資産市場の中でも上昇するZcash
10月は米中貿易摩擦再燃の懸念から過去最大の強制清算が発生し、ビットコインが最大11.8%下落するなど暗号資産業界で大きな動きが見られました。
その後、米中対立の緊張緩和などから米国の株価は上昇に転じ、史上最高値を更新し続ける中、ビットコインをはじめとする暗号資産は全体的に軟調な状況が続いています。そのような状況でも上昇している銘柄があり、Zcashは10月1日から10月31日までの間で約400%も上昇しています。
Zcashとはプライバシーと匿名性に焦点を当てた暗号資産です。Zcashはビットコインのコードベース上に構成されており、ビットコインはユーザー間の取引履歴が公開されていますが、その身元が分からない仮名モデルを採用しています。この仕組みはユーザーの身元は匿名化されているものの、取引パターンの分析によって実世界の個人が特定される可能性があります。
一方Zcashは、ある人が「特定の情報を持っていること」を、その情報自体を一切開示することなく証明する暗号技術「ゼロ知識証明」と呼ばれる暗号技術を活用し、取引内容を公開せずに送金することができ、利用者は匿名性を保ちながらの取引を可能にしています。
今回、Zcashがこのような上昇を見せたのは、この仕組みによるプライバシー重視の取り組みに暗号資産トレーダーが移行したからといわれています。
その背景には世界各国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究や開発が進んでいることによるものと考えられます。
例えば今月は7日にインド準備銀行が預金トークン化に関する実証実験を8日から開始すると発表したり、欧州中央銀行が「デジタルユーロ」を2029年にも発行する可能性があると発言し、2027年の実用化に向けた運用試験を目指すと発表したりとCBDC関連のニュースが多い月でした。
CBDCは取引情報(いつ、誰から、誰に、いくらの金額が移動したか)を記録できるため、監視を受けない自由な市場を希望するトレーダー達から支持を受けて今回の上昇につながったものと思われます。
著名投資家ナバル・ラヴィカント氏は10月初旬に Zcash を「ビットコインは法定通貨に対する保険であり、Zcashはビットコインに対する保険」と表現し、透明性の高いビットコインではプライバシーが脅かされるリスクを指摘しました。Zcashの急騰は単なる投機ではなく「監視社会化に対する市場の反応」としてみることができ、特にCBDCの流通が現実化すればするほど、プライバシー通貨の存在意義は高まる可能性があります。
(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
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