Market Report

マーケット情報

2024/05/20

暗号資産週間レポート(2024.5.12~2024.5.18)
ETF動向とマクロ経済が市場に与える影響とは!?

【5/12~5/18週のサマリー】
・Keith Gill氏のX投稿により米ゲームストップの株価が急上昇、ミーム銘柄DOGE・SHIBも連れ高
・米ウィスコンシン州投資委員会が約1億6,000万ドル相当のビットコイン現物ETF購入を報告
・米先物取引所CMEが現物ビットコイン取扱を計画との報道


【暗号資産市場概況】
5/12~5/18週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+9.78%の10,426,500円、ETH/JPYの週足終値は同+6.72%の485,580円であった(※終値は5/18の当社現物EOD[5/19 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、ビットコイン現物ETFへの資金流入超を背景に堅調な推移を見せるも、米マクロ環境や経済指標の影響で行き来する状況は依然として継続した。
週初は個人トレーダーのKeith Gill氏(Roaring Kitty)が3年ぶりにXのポストを再開、米ゲームストップ株が一時100%の上昇を見せたことで、ミーム銘柄として知られるDOGEやSHIBも連れ高し、他銘柄をアウトパフォームする展開となった。同氏は2021年にゲームストップ株を喧伝することで、大規模なショートスクイーズの一因を担った人物であり、Xでのフォロワー数は5/20時点で133万人を上回る。今回の乱高下で、3年が経過した現在もなお絶大な影響力を保っていることが示された。
週半ばには、大口の資産運用会社や投資家が米国証券取引委員会(SEC)に提出する書類「13F」が開示され、3月末時点でのビットコイン現物ETFへの機関投資家の参入状況が明らかになった。中でも注目されたのは、米ウィスコンシン州投資委員会(SWIB)である。2024年1Qに1億ドル相当のIBIT(ブラックロックのビットコイン現物ETF)に加え、6,400万ドル相当のGBTC(グレイスケールのビットコイン現物ETF)を購入していたことが判明した。SWIBの現在管理資産は1,540億ドル相当であり、ビットコイン現物ETFが運用資産に占める割合は約0.1%、今後も追加購入の余地が残っていることは好材料だ。SWIB以外では、米国のヘッジファンド上位25社のうち13社がETFを購入していたことも話題となった。
機関投資家によるETF保有は基本的には好材料だが、必ずしも全員が「買い」であることを意味しない点には注意が必要だ。具体的には「現物ETFをロング、CME先物をショート」というベーシス・トレード(先物価格の方が現物価格よりも高いことを利用した裁定取引)を行うヘッジファンドも多数存在すると考えられるからである。実際に、CMEにおけるヘッジファンドの建玉状況は、ETF上場前と比べショートが加速度的に増加している。下部にCME先物での機関投資家のポジショニングを掲載するため参照されたい。
この視点は、週後半のCMEによる現物ビットコイン取扱計画の是非を考える際にも応用できる。CMEで現物ビットコインが上場された場合、ベーシス・トレードを行いたい機関投資家にとっては同一取引所内でロング・ショートを組むことができるようになるため資金効率が向上する。したがって、今まで以上に先物のプレミアムが咎められやすくなる環境になっていくことが予測される。また、米国内の現物購入ニーズもよりCMEに集中し、Coinbaseをはじめとする既存の暗号資産取引所が打撃を受ける可能性がある。
マクロにおいては無視できないヘッドラインが2件あった。1件目は、米バイデン大統領が発表した対中追加関税だ。電気自動車の関税は4倍(100%以上)、半導体関税は2倍の50%など、影響の規模は大きくなりそうである。2件目は、中国による記録的な水準の米国債券売却(第1四半期に米国債と政府機関投資家債を合わせて533億ドル)である。短期的には債券需要の低下から金利上昇が予測されるが、中長期的には金利上昇が銀行による貸出の増加につながる(市中に流通する貨幣の量が増加する)恐れがある。これらはともにインフレ要因であり、今後の動向に注視が必要となる。
次週以降について、最注目点は5月23日(日本時間では24日早朝となる可能性が高い)のイーサリアム現物ETF承認可否判断最終期限であろう。現時点で有識者は承認確率が高くないとしており、市場全体でも否認されるのではないかとの見方が優勢である。
 市場の織り込みを観測する方法は主に2つ。グレイスケールのGETH(ディスカウント価格で取引されている)のディスカウント率の推移
https://www.coinglass.com/ja/pro/gray/GrayscalePremium)(※チャート右上で銘柄をETHに変更する必要がある)を見ることと、予測市場ポリマーケット
https://polymarket.com/event/ethereum-etf-approved-by-may-31) を見ることだ。ポリマーケットでは現在11%の予測である。承認可否に関わらず、発表前後は市場のボラティリティが高まることが想定されるため、ポジション状況には十分な余力を持ちたい。





[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[DOGE/USD, SHIB/USD, BTC/USD, ETH/USD 週間チャート(30分足)]

(オレンジがDOGE/USD価格、青がSHIB/USD価格、白がBTC/USD価格、黄がETH/USD価格)
(縦の白線がKeith Gill氏のX投稿時刻)
(TradingView提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[CME先物の建玉状況(ショート)]

(建玉が大きい順にヘッジファンド、その他、アセットマネージャー、報告対象外)
(The Block提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ オレンジ線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【5/12~5/18週の主な出来事】



【5/19~5/25週の主な予定】


【今週のひとこと】トークンアンロック
先週12日にAPTトークンのアンロックが実施され、今週22日にはAVAXトークンのアンロックが予定されています。暗号資産ニュースで度々目にする「トークンアンロック」とはどのようのものでしょうか。
トークンアンロックとは、ブロックチェーン上でロックアップ(自由に譲渡できないように)されていたトークンが解除される(自由に譲渡できるようになる)ことを意味します。トークンアンロックは、初期投資家やプロジェクトのメンバー、プロジェクトの開発・発展に貢献したアドレスなどにトークンの割り当てがある場合に、トークンの設計に組み込まれることがあります。
早期参加者に大規模なトークンの割り当てがされている場合、ロックアップ期間がなければ、ローンチ初期の流動性が薄い局面での大きな価格変動要因になる可能性があります。また、自由に譲渡できる状態のトークンを一部のアドレスが大量に保有していると、市場参加者の心理にマイナスに作用し、価格形成に悪影響を及ぼす恐れもあります。ロック期間があることで、初期投資家やプロジェクトメンバーにとって、保有しているトークンの価値が下がらないようにする(ロック期間中にプロジェクトが順調に発展するよう努力する)動機も生まれます。
トークンロックは様々なプロジェクトで採用されており、アンロック額が大きい場合、度々ニュースで取り上げられます。アンロックの規模が大きいことは必ずトークン価格の下落に繋がるわけではなく、値動きには銘柄ごとに特徴があります。プロジェクトの公式サイトやホワイトペーパーではトークンアンロックに関する情報を紹介していることも多いため、アンロック期間や間隔・規模・アンロック前後の値動きなどを調べてみると、銘柄保有の時間軸を考える際の一助になるかもしれません。




(SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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