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2025/02/03

暗号資産週間レポート(2025.1.26.2025.2.1)
リスクオフの展開!?「DeepSeek」の台頭と米国関税政策の影響とは

【1/26~2/1週のサマリー】
・中国発のAIアプリ「DeepSeek」の台頭により、米ハイテク株が急落しリスクオフの展開
・トランプ米国大統領、カナダ・中国・メキシコに関税を課す大統領令に署名
・パウエルFRB議長「銀行は暗号資産業界にサービスを提供できる」と発言
・米上院、財務長官に暗号資産支持のスコット・ベッセント氏の就任を承認

【暗号資産市場概況】
1/26~2/1週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲4.15%の15,720,950円、ETH/JPYの週足終値は同▲6.12%の489,295円であった(※終値は2/1の当社現物EOD[2/2 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、中国発のAIアプリ「DeepSeek-R1」の台頭や、トランプ米国大統領の関税政策発表、パウエルFRB議長発言等、複数の要因によりレンジ相場を形成する展開となった。
週初、前週にリリースされた中国発AIアプリであるDeepSeek社の「DeepSeek-R1」が米国App Storeでランキング1位を獲得したことが伝わると、既存のAI領域の産業構造変化の懸念が広がり、NASDAQ先物を中心に急落しリスクオフの展開。ビットコインも105,000ドル付近から97,000ドル付近まで約8,000ドル幅の下落を見せる。「DeepSeek」が急激にユーザー数を伸ばした背景としては、低コスト・高性能に加え、競合であるOpen AI社が自社モデルそのものを広く公開していない一方、DeepSeek社はR1等のバリエーションを共有サイトで公開もしており、第三者によるさらなる派生モデルの作成がユーザーの拡大につながったのではないだろうか。
週央にはFOMCが行われ予想通り政策金利を据え置いたが、声明文からはインフレ鎮静化の進捗を示す文言が削除され、BTCは一時下落。しかし、パウエルFRB議長が記者会見で政策スタンスの調整を急ぐ必要はないと示したことに加え、記者からの暗号資産関連の質問に対し「十分にリスクを管理した上で、銀行は暗号資産業界の顧客にサービスを提供できる」、「我々は反イノベーションではない」と発言したことが好感されBTCは急伸し、DeepSeekショック前の価格帯へと値を戻す展開となる。パウエル議長の発言は暗号資産業界にとってポジティブなサプライズであったといえよう。
週末、ロイター通信の米国関税措置延期報道に対し、ホワイトハウスのレビット報道官が「関税措置は2月1日に発表され、即時発効する」と言明したことが伝わると、再度リスクオフの展開となりBTCは反落。トランプ大統領は2/1(日本時間2/2早朝)に自身のSNS「Truth Social」にて、「カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課し、カナダのエネルギーと石油に10%の関税を課し、中国にさらに10%の関税を課す」と記された大統領令に署名したと投稿。関税措置の発表を受け、カナダのトルドー首相は「カナダはアメリカの製品の大規模な範囲に25%の関税を実施する」と演説で述べ、中国商務省は世界貿易機関(WTO)を通じて異議を申し立てると発表、メキシコのシェインバウム大統領は報復関税の措置を表明した。こうした地政学的リスクの高まりを受け、暗号資産市場は軟調に推移し週末を迎えた。
トランプ大統領の関税政策の推進は、米国を中心とした貿易戦争の様相を呈しており、世界経済の下押しの材料となる可能性が高い。今週は関税措置への対抗策を講じる各国の動向と、それを受けた米国の反応に最大限注視する必要があるだろう



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【1/26~2/1週の主な出来事】



【2/2~2/8週の主な予定】


【今週のひとこと】「DeepSeek」

本文でも触れた通り、1月27日、NASDAQ先物はじめ米国株価指数先物が下げたことをきっかけに、暗号資産市場も下落しましたが、その主たる要因として、中国の新興AI企業である「DeepSeek」の台頭が挙げられます。この下落の引き金になった「DeepSeek」とはどんな企業なのでしょうか。
同社は2023年5月に中国・杭州で梁文鋒(リャンウェンフォン)氏が設立した企業で、中国政府の技術政策「AI 2030」などの支援を受け、急速に成長しています。
2024年12月に公開した大規模言語モデル(LLM)の「DeepSeek-V3」をはじめAI分野で革新的な技術やモデルを開発し、その影響力が急速に拡大しています。
特に今回注目を集めたのが、2025年1月20日にリリースされたスマートフォン向け生成AIチャットアプリ「DeepSeek-R1」です。低コストAIモデルで、従来のAIモデルよりも運用コストが大幅に削減され、高性能でありながら、コスト効率の良さが際立っており、小規模企業や個人でもAI技術を利用しやすくなるのが特徴です。
この「DeepSeek-R1」の大躍進により、米国はじめ主要AI企業(NVIDIA、Google、Microsoftなど)に対する競争圧力が急速に高まっており、AI市場でのシェア争いが激化し、これまで業界をリードしてきた企業にとって脅威となる存在とみなされています。
また、米国では1月25日に、日本でも1月28日午前10時頃までにアプリストアの無料アプリランキングでChatGPTを抑え1位を獲得しており、その他の主要国でも急速に普及し、ユーザーから高い評価を得ています。
一方で、まだまだ注意すべき点もあるようです。同社のAIサービスが利用するデータがどのように収集・処理・保存されるかは明確でなく、また中国企業であるため、データが中国の規制に従って管理される可能性があり、個人情報や機密データの取り扱いには慎重になるべきでしょう。
とはいえ、高性能かつ低コストだからこそ市場を揺るがすほどのインパクトがあるので、その後の動向を追ってみるのも面白いでしょう。
なお投資という観点では、現時点で非上場企業のため直接同社の株式を購入することはできません。また、「DeepSeek」の偽トークンも出回っているようなので、安易に「DeepSeek」関連に投資し損失・被害に遭うといったことのないように注意したいところです。






(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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