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2025/08/04

暗号資産週間レポート(2025.7.27~2025.8.2)
ビットコイン4週ぶり安値圏、米雇用の大幅悪化によるリスクオフムードへ

【7/27~8/2週のサマリー】
・米EU、米中それぞれ貿易協議進展
・ FOMCでは利下げ見送り、パウエル議長はタカ派的な姿勢を維持
・トランプ大統領、新たな関税率を定める大統領令に署名(発動は8月7日)
・米雇用統計は予想を下回る、特に過去2カ月データが大幅下方修正に

【暗号資産市場概況】
 7/27~8/2週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲4.42%の16,649,950円、ETH/JPYの週足終値は同▲9.26%の503,360円であった(※終値は8/2の当社現物EOD[8/3 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、米国がEUと関税協定を結び貿易戦争を回避、中国とも関税停止期間の3カ月延長する見通しだと報じられたことで堅調に推移した一方、FOMC後のパウエルFRB議長のタカ派的発言や米デジタル資産報告書における戦略的ビットコイン準備(SBR)購入の具体性の欠如、またトランプ大統領による関税の発動や米雇用統計の大幅下方修正による景気減速懸念からビットコインは下落した。
 週初、米国と欧州連合(EU)は自動車を含む多くのEU製品に15%の関税を課すことで合意し、この協定は全面的な貿易戦争を回避した。また、米国と中国も8月12日に期限を迎える関税停止期間を3ヶ月延長する見通しが報じられ、これらが好感されビットコインは堅調に推移し120,000ドル台に迫った。しかし、7月30日未明(日本時間)に行われた米中閣僚級貿易協議の結果報道では、24%の関税停止を90日延長することで合意したとされるものの、市場では「トランプ大統領が正式に承認するか不透明」との不安も残ることになり、ビットコインは117,000ドル台まで下落。なお正式承認については、「最終的には大統領判断待ち」だとして本稿執筆時点(8月2日)では未決定である。
 週央、7月31日未明(日本時間)には連邦公開市場委員会(FOMC)が開催。トランプ大統領が利下げを主張する中、政策金利は市場予想通り4.25%〜4.50%に据え置かれた。その後のパウエルFRB議長の記者会見では、「利下げを急がない姿勢」「関税が物価上昇要因」というタカ派的見解を示し、利下げ時期の見通しを避けたことから、市場は9月利下げの期待が後退。また同日、ホワイトハウスがデジタル資産報告書を公開。Genius法案や CLARITY法案、CBDC禁止などの制度整備方針が示された一方で、市場が注目していたSBRの追加購入に関する記載はなかった。こうした内容が市場に好感されず、ビットコインは116,000ドルを割り込む場面も見られたが、その後「SBRの詳細については後日発表される」との報道が伝わり、急速に買い戻しが進んだ。
 8月1日の関税発動期限が迫る中、交渉の進展が見られないことへの焦りや強硬姿勢への懸念が市場に広がりビットコインは売り優勢に。さらに8月1日午前(日本時間)にトランプ大統領が10%~41%の相互関税の大統領令に署名し(発動は8月7日)、リスク回避の売りが強まりビットコインは114,000ドル台まで下落した。
 同日夜(日本時間)に発表された米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を下回っただけでなく、5月・6月の過去2カ月間の伸びも大幅に下方修正(合計で25万8,000人減)に。この修正幅の大きさは新型コロナウイルス禍以来の規模となった。これにより、米国の労働市場の減速が市場の認識以上に深刻であることが明らかになり、景気減速への懸念からビットコインは週末にかけて112,000ドル台まで下落し、米国株式にもアンダーパフォームした。
 今回の雇用統計の結果は、FRBの政策判断に大きな影響を与えている。雇用情勢の悪化を受けて、9月のFOMCでの利下げ確率は雇用統計発表前の38〜40%から80%台まで急上昇。市場では利下げへの期待が高まりつつあるため、今後はこれまで以上にパウエルFRB議長をはじめとするFOMCメンバーの言動に注目されたい。(米雇用統計については【今週のひとこと】も併せて参照されたい)


[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【7/27~8/2週の主な出来事】



【8/3~8/9週の主な予定】


【今週のひとこと】米国雇用統計

 先週発表された米国雇用統計において、直近2か月分の数値に対して大幅な下方修正が加えられたことが市場関係者の間で波紋を広げています。具体的には、前回発表された6月の非農業部門雇用者数が当初発表の14.7万人増から1.4万人増へ、5月分も同様に14.4万人増から1.9万人増へと修正されました。これにより米国の労働市場が想定以上に減速している可能性が意識され、米国株式市場および暗号資産市場では売りが優勢となり、価格は大きく下落しました。
 この状況を重く見たトランプ大統領は、雇用統計の集計を担当する米労働統計局の局長の解任を命じるとともに、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に対して改めて利下げ圧力を強める姿勢を見せています。労働統計局は今回の下方修正について、「企業および政府機関からの追加報告の反映や季節調整要因の再計算によるもの」と説明しましたが、市場ではトランプ政権による財政再建策の一環として、連邦職員の削減が統計算出に影響を与えているのではないかとの見方も浮上しています。
 今回改めて注目を集めた米国雇用統計とは、米労働省の外局である労働統計局(Bureau of Labor Statistics:BLS)が毎月発表している、米国の労働市場の動向を示す重要な経済指標です。統計の基準は毎月12日を含む週となっており、その期間の雇用状況が調査され、計測期間から3週間後の金曜日(翌月の第一金曜日になる場合が多い)に発表されます。
 中でも市場の注目を集めるのが「非農業部門雇用者数」で、農業を除く産業分野(製造業、建設業、サービス業など)に従事する就業者数の増減を示すものです。企業の給与台帳をもとに算出されており、業種別の動向を把握する上でも重要な指標となります。また同時に発表される「失業率」も、労働力人口に対する完全失業者の割合を示すもので、16歳以上の非軍隊従事者・非収監者を対象とし、就労の意思を持たない人は統計対象外とされます。そのほか、「平均時給」や「労働参加率」なども併せて公表されます。
 米国雇用統計は景気の現状を映す「一致指数」としての性格を持ち、世界中の投資家や政策当局から注目を集める経済指標です。発表を見越してポジションを調整する投資家も多く、FRBの金融政策、特に金利政策に大きな影響を及ぼすことから、政策判断の重要な材料としても機能しています。
 今回の統計では、過去の下方修正に加え、7月分の新規データも市場予想を下回る結果となり、労働市場の急速な減速が意識される内容となりました。ここ数か月、トランプ政権による関税政策や地政学的リスクといった逆風が続く中でも、株式市場が堅調に推移していた背景には米国の労働市場が安定していたことが大きく寄与していました。
 それだけに、今回の結果を受けて労働市場の持続的な悪化(米国の景気減速)が現実味を帯びたことで、FRBによる金利政策動向やトランプ政権の運営方針に対して市場の注目が一段と高まりそうです。今週以降は、各種経済指標の発表が政策動向や市場心理に与える影響を見極めるうえで、これまで以上に重要な局面となりそうです



(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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