Market Report

マーケット情報

2023/07/19

臨時レポート――暗号資産XRP価格、回復の兆し(提供:SBIリクイディティ・マーケット)




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目次
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1. 提訴
2. SEC提訴の根拠
3. リップル社の主張
4. 判決
5. 今後の展開
6. 今後のXRP相場
7. XRP/USD日足
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1.提訴

2020年12月22日、米国証券取引委員会(SEC)は「連邦証券法に規定される証券募集の登録届出義務を怠ってXRPを販売した」、すなわち「違法な投資契約を行った」と主張し、Ripple Labs,Inc.(リップル社)、同社の創業者の一人クリスチャン・ラーセン氏(2016年12月まで同社CEO)および同社CEOブラッド・ガーリングハウス氏の三者を対象にニューヨーク南地区連邦地方裁判所に提訴した。

SECは、それまでも各種暗号資産の販売は、SECへの届出・登録が義務付けられた「有価証券」の一つである「投資契約」との見解を示し、SECへの届出・登録なく行われた暗号資産の販売を摘発しており、この提訴自体は驚くものではなかった。しかし、XRPは、ビットコインやイーサリアムとともに最も取引されている暗号資産の一つであることに加え、日本ではSBIグループがRipple Labsに出資していることもあり、XRPを利用した送金はグローバルな決済手段として注目されていただけに、暗号資産ビジネス界にショックを与えた。

2.SEC提訴の根拠

・リップル社が発行したXRPは、ハウイ基準※の要件をみたしており、連邦証券法に規定される「有価証券」の一つである「投資契約」である。

※「投資契約」にあたるか否かは、1946 年W.J.Howey事件で連邦最高裁判所が示した以下の審査基準、いわゆるハウイ基準に基づいて判断するという判例が確立している。
1.金銭出資の要件 2.共同事業の要件 3.利益を期待するという要件 4.その利益が他者の努力に依存するという要件

・リップル社以下三者は2012年の時点で、「特定の状況下でXRPが『投資契約』と見做され、『連邦証券法上の有価証券』とみなされる可能性があるとの法的助言を受けていたにもかかわらず、これを無視し、2013年から現在に至るまで販売を行った。

・リップル社以下三者は、XRPが、「消費者が商品やサービスを購入するための手段としての『法定通貨』である」ことを繰り返し公に否定していた。

3. リップル社の主張

・SECは明確な法的な根拠なく三者を提訴したことは、※ヒンマン文書の内容から明らかである。
※2018年6月、当時SEC企業金融部長のウイリアム ヒンマン氏の「イーサリアム(ETH)は、イーサリアム・ブロックチェーンのネイティブ・トークンであり証券ではない」という講演での発言が記された文書

・XRPはオープン・ソースで開発されリップル社の管理外でも利用されており、連邦証券に規定される「有価証券」ではない。

・XRPは、1. 交換機能 2.価値保存機能 3.価値尺度機能という通貨の機能を持ち、市場で取引されている。

・XRPの価格は、リップル社の事業に関連づけられるものではなく、その価格は、ビットコイン(BTC)やETHなど他の暗号資産と連動することも多い

4. 判決

機関投資家向け販売については、連邦証券法第 5 条に違反する未登録の投資契約の募集および販売を構成する。それ以外(「デジタル資産取引所におけるプログラム販売」および「現金以外の対価として書面による契約に基づくその他の分配」)についてはSECの提訴を却下する。

5.今後の展開

機関投資家向けの販売についてはSECの主張が認められたものの、今回の訴訟はSEC提起した数々の訴訟において、初めて暗号資産企業が“勝利”したケースとなったと言えよう。今回は略式判決(Summary Judgement)であり、今後正式裁判(Trial)が開催される可能性はあるものの、ニューヨーク南地区連邦地方裁判所が判決を導く議論の中で「デジタル・トークンとしてのXRPは、それ自体が『契約、取引、あるいはスキームではない』」として、そのうえで、ハウイ基準に照らし機関投資家向け販売のみ「投資契約」と結論付けている。すなわち、それ自体が本質的に有価証券である株式や債券などとXRPを明確に区別しており、XRPの本質に関わる判断を覆すのは難しいのではないかと、個人的には考える。
SECの提訴は、「暗号資産は有価証券である」ことを立証することを強く意識していると思われ、現在係争中の他のケースにも影響を与える今回の判決をきっかけに、SECのある意味強引な手法への批判が高まる可能性があり、SECが暗号資産について新たなるルール作りを検討することもあるかもしれない。

6.今後のXRP相場

市場も今回の判決を歓迎しており、XRP価格は判決前の0.4690ドルから一時0.9359ドルまで急騰、その後は0.7ドル台を中心に推移している。訴訟が重石となっていたことは間違いなく、判決が「XRPそれ自体は有価証券ではない」とその本質に言及したことは、XRPにとってアドバンテージになることは間違いあるまい。また、上記の言及は他の暗号資産にもポジティブな影響を与えることから、暗号資産市場全体の底上げに寄与すると思われる。
欧米主要各国がインフレ抑制を目的として長期にわたり利上げを行い、世界経済に減速の兆しが見えている中、今後はリスク資産への投資が躊躇われる状況になると想定され、暗号資産が一本調子で上昇するとは考えにくいが、出遅れ感もあったXRPは、当面堅調に推移すると思われる。
まずは、判決直後の高値0.9359ドルを目指し、0.9ドル台を固め1ドルの大台を達成できれば、2021年4月14日の高値1.9648ドルから2022年6月18日の安値0.2949ドルへの下落の50%戻し1.1299ドルがターゲットか。

7.XRP/USD日足

(TradingView提供のチャートにてSBIリクイディティ・マーケット株式会社作成)

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