2024/10/07
暗号資産週間レポート(2024.9.29~2024.10.5)
米SEC、リップル社を控訴。次週の暗号資産市場はドル円、中東情勢、CPIに注意。
【9/29~10/5週のサマリー】
・SNS上で破綻した米暗号資産取引所FTXの資産が返還されるとの誤報が拡散
・イランがイスラエルに対し弾道ミサイルを発射
・米SECがリップル社(Ripple Labs)裁判で控訴通知を提出
【暗号資産市場概況】
9/29~10/5週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲1.44%の9,208,900円、ETH/JPYの週足終値は同▲5.82%の357,755円であった(※終値は10/5の当社現物EOD[10/6 6:59:59]レートMid値)。
先週は、中東情勢が緊迫化する中、ビットコイン価格は節目となる$60,000を一時割る展開も、米雇用統計が事前織り込み対比上振れしたことで、米経済のソフトランディングシナリオが強化された。また、円建てビットコイン価格は、石破新総裁の「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」などの発言もあり、円安が進んだことでドル建て価格に比べ下落幅が目立ちにくかった。
週初、SNS上で海外インフルエンサーが「破綻した米暗号資産取引所FTXの資産が返還される前に暗号資産を売却すべきである」との注意喚起を相次いで行い、暗号資産市場全体が下落。MartyParty氏による投稿(https://x.com/martypartymusic/status/1840408322643501205)で言及されたETH、ADA、DOTは他資産に比べ、顕著にアンダーパフォームすることとなった(Dan Held氏やCrypto Rover氏による誤報の影響も大きかったと考えられる)。
不安定な地合いが続く状況で、2日には「イランがイスラエルに対し弾道ミサイル攻撃を差し迫って行う準備をしている」という報道が話題となり、さらなるリスクオフへ。報道から約2時間後、約200発のミサイルが実際に発射されたことが明らかになった。
週中盤から後半にかけ、米経済指標の発表が続いた。ISM非製造業PMIは好調(予想:51.7/結果:54.9)、雇用統計の非農業部門雇用者数も事前予想を大きく上回った(予想:14.7万人/結果:25.4万人)ことで、サービス業・労働市場の強さが示された。これらの結果を受け、現行のソフトランディングシナリオが支持され、利下げの喫緊性が薄れたことで米金利は上昇。次回11月FOMCにおける50bps利下げ織り込みが大きく後退し、25bps利下げが有力な見方となった。連続50bps利下げの後退自体はポジティブな材料とは言い難いものの、ソフトランディング観測が強くなったことと合わせ、短期的にはリスクアセットにとってプラスの結果となったといえる。
次週以降、注視しておきたい点は3点。まず、ドル円の為替状況について、このまま過度な円安トレンドが続くようであれば、日銀は従前よりもタカ的な姿勢を示さざるを得なくなることから、急変リスクが高まる。石破氏の動向とともに注意が必要だ。中東情勢については、より緊迫化(イスラエル対ヒズボラの構図がイラン対イスラエルの構図に移ってしまうことがリスクシナリオ)する可能性もあるため、売買の際はポジション余力を残しておくことが肝要となる。最後に、米インフレ再燃リスクが浮上してきている。米住宅価格は底打ち後反騰しており、家賃(ひいてはCPI)に遅行して反映されることが予想される。
インフレ懸念の最大の問題点は、利下げサイクルが一時停止してしまう可能性があることだ。米金利市場では利下げの継続を前提に膨大な債券のロングポジションが構築されている。利下げサイクルが否定された場合、このポジションは巻き戻されることとなり、余波を受けて株や暗号資産などのリスクアセットも調整を余儀なくされるだろう。次週のCPIは重要な観測点となる。
前回9月FOMCにおいて、インフレ懸念を理由に唯一25bps利下げを支持したのがボウマン理事であった。先週の雇用統計を受け25bps利下げが有力視されている現状では、8日のボウマン氏発言は、平時よりも重要度が増すため、内容を追えるようにしておきたい。
[BTC/USD週間チャート(30分足)]
(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[ BTC/JPY週間チャート(30分足)]
(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]
(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]
(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 紫線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
【9/29~10/5週の主な出来事】
【10/6~10/12週の主な予定】
【今週のひとこと】中東情勢の補足
今週の1日(火)、イランがイスラエルに対し、約200発の弾道ミサイルを発射。イランはこれを、「イスラエルが親イラン武装組織ヒズボラの指導者(ハッサン・ナスララ師)を暗殺したことへの報復である」と主張しました。イスラエルもミサイル攻撃に対する報復を宣言し、現在は米バイデン政権がイスラエルによるイランの核施設や石油施設への攻撃をけん制しています。
軍事力ではイスラエルが圧倒的に優位であり、イラン側からこれ以上の攻撃を行う可能性は低いとするのが現在の市場の見方ですが、10月7日はハマスによるテロの1周忌であり、イスラエル側が何らかの軍事行動に出る可能性はあるのではないかと考えられています。
前回4月のミサイル攻撃とは異なり、今回は30発程度がイスラエルの空軍基地に着弾しており、イスラエルの現在の対空システムでは弾道ミサイルによる被害を防ぎきれないことが判明しました。すなわち、仮に残り3,000発以上保有しているとされるイランの弾道ミサイルに核弾頭の搭載が可能になった場合、イスラエルにとってイランは大きな脅威となる(少なくとも核施設は軍事目標として破壊する必要がある)、というのが最新の状況です。核施設周辺はイランにとって宗教上重要な土地でもあるため、イスラエルがイランへの攻撃に踏み切った場合、後戻りすることが非常に難しくなります。
イスラエルがナスララ師の暗殺後、レバノンに侵攻した(ヒズボラに対する地上作戦)ことで、パレスチナのガザ地区・レバノンの2面でイスラエルの地上戦が展開されています(これは数十年起きていなかった規模の事態です)。仮に紛争相手がヒズボラだけでなく、イランへと拡大してしまった場合、市場が織り込み切れていないリスクシナリオになるため、今後も情勢の変化には細心の注意が必要です。
(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
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マーケット情報・チャート
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