Market Report

マーケット情報・チャート

2022/06/21

暗号資産信用危機

先週のハイライト
  • ビットコインは6/18(土)に20,000ドルを割り込み17,600ドルまで下落、イーサリアムは885ドルで底を打った
  • OTCレンディング市場は事実上閉鎖、「未知数なインシデント」が何処にあるのか疑心暗鬼な状態
  • 7/13に発表予定の米CPI(消費者物価指数)が、市場のドライバーになりそうである
  • ボラティリティは依然として高水準で推移も、下ストライクのオプション買い需要は徐々に解消されつつある

  • 先週の動き
    レンディング業者の引き出し停止や大手暗号資産ヘッジファンドの破綻懸念などを受けて、先週の暗号資産市場は大きく下落、ビットコインは6/15(水)に20,000ドルの節目を前に22,500ドルまで反発するも、再び下落に転じ20,000ドル近辺で週を引けた。翌6/18(土)のアジア時間午後には20,000ドルを突破し17,600ドルまで下値を伸ばし、イーサリアムも885ドル近辺まで下落。その後は、ビットコイン、イーサリアムともに、それぞれ20,500ドル、1,150ドルまで値を戻している。6/10(金)に米CPIが発表される前には、ビットコインは30,200ドル、イーサリアムは1,775ドルで取引されており、10日間の下落率は、それぞれ42%と50%となっている。ビットコインやイーサリアムを担保としたローンの清算が起こっており、その矛先はメジャーな暗号資産に向かっているため、結果としてアルトコインはメジャーな暗号資産と同等か若干良いパフォーマンスとなっている。

    売買動向を見ると、アジア圏と欧州・中東圏が買い手である一方、米国圏はよりバランスが取れている傾向が伺える。顧客カテゴリー別では、引き続きファンド勢が主な買い手である一方、その他のカテゴリーにおいては、それほど強い偏りが見られていない。コイン別に見ると、ADA(カルダノ)、MATIC(ポリゴン)、UNI(ユニスワップ)に強い買いが見られた一方で、SOL(ソラナ)、DOT(ポルカドット)、EOS(イオス)、AVX(アバランチ)には強い売りが見られた。また、イーサリアム/ビットコインのクロスが下落していることから、イーサリアムよりもビットコインに買いが出ていたことが伺える。

    ビットコイン先物ベーシスは、引き続き低下しているが、通常この様にスポット価格が大幅に下落する時に見られる様な弱い動きは見受けられていない。その理由としては、個人や投機筋は既に市場から退出しており、現在売られているのは先物ではなく、ローンの担保がスポット市場で売られているからである。OTCレンディング市場は、現状閉鎖状態であり、信用リスクの所在が不明確なままである。

    オプション市場では、ボラティリティが上昇したままの状態であり、スポット価格にかなり変動があるため、底堅く推移している。先々週70%前後で取引されていたビットコイン1ヶ月物ATM(アット・ザ・マネー)は、先週の月曜日以降、80%-130%というワイドなボラティリティのレンジで取引され、現在は90%前後で取引されている。ただし、ビットコインスポット価格が安値圏にあるため、1ヶ月物ATMボラティリティは少なくとも20%以上上昇しても不思議ではない。

    一方、先々週末から、ビットコイン1ヶ月物リスクリバーサル(上ストライクと下ストライクの需給の差を見る指標。この場合、数字が大きい方がスポット下落の警戒が高いことを意味する。)は40%から20%へと大幅に低下しており、既にスポットが大幅に下落したことで、更なる下落に対する警戒感が幾分薄れてきているように見える。そうは言っても、もし破産や清算等のドミノ倒しの現象が起きた場合、ビットコインスポットは8,000ドル程度の下落する可能性があるだろう。一方で、起きなかった場合には、5,000ドル程度の上昇が織り込まれているということを意味しており、依然注意が必要な水準であることに変わりはない。

    今後の展望
    今週は、重要指標発表予定がない中、週半ばに予定されているハンフリーホーキンス(FRB議長による半期に一度の議会証言)に注目が集まっている。とはいえ、最重要な経済指標である米CPI(米消費者物価指数)の発表予定が7/13(水)と、だいぶ時間が空いている。
    一方、暗号資産市場の水面下には、未知なる危機の前兆が隠れているかもしれない。現時点で暗号資産エコシステム内には、2008年のリーマンショック時のFRBや、2011年のギリシャショック時のECBのような最後の貸し手の存在がないことは十分注意する必要があるだろう。








    (提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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