2025/10/27
暗号資産週間レポート(2025.10.19~2025.10.25)
大規模清算後の暗号資産市場:機関流入が支える回復と、ステーブルコイン時代の行方
【10/19~10/25週のサマリー】
・トランプ大統領、バイナンス創立者チャンポン・ジャオ(CZ)氏を恩赦
・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が30日のAPEC首脳会議で会談することを正式発表
・JPモルガン、年末までにBTCとETHを融資担保として認める方針
・米9月消費者物価指数(CPI)が市場の予想を下回る
・現物ETFではBTCが純流入、ETH 純流出で混在
【暗号資産市場概況】
10/19~10/25週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+5.44%の17,053,600円、ETH/JPYの週足終値は同+2.96%の604,705円であった(※終値は10/25の当社現物EOD[10/26 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、史上最大規模の清算イベントの後、マクロ経済環境の変化に伴うボラティリティの高まりを背景に、軟調ながらも回復基調を見せた。特に銘柄ごとの回復度合いに明確な差異が見られ、これは今月中旬に発生した大規模清算により、リテール投資家(個人投資家)の投資心理が大きく後退したことが一因であると考えられる。
現物ETFの週次フローを見ると、ビットコインは約4億ドルの純流入となった一方、イーサリアムからは約2億ドルの純流出が確認された。これは、イーサリアムを含むアルトコインにおいて大規模清算後の回復が遅れていることを示唆しており、10月5日から26日までの3週間にわたる時価総額推移のグラフ(下部チャート「大規模清算後の各暗号資産の時価総額推移、過去3週間」)にもこの傾向が明確に表れている。
この背景には、機関投資家とリテール投資家の間で暗号資産に対する需要が乖離しているためと考えられる。機関投資家が主に利用する暗号資産取引所としてはCoinbaseが挙げられ、リテール投資家の主要な取引所としてはBinance Globalが代表的だ。Coinbaseの四半期ベースの取引量における機関投資家の取引比率は2025年6月時点で80.7%に達しており、1月~6月の半年間では81.8%に上る。一方、Binanceでは同期間中の取引量の80%以上がリテール顧客によるものである(下部チャート「バイナンスの2025年度リテール顧客取引割合の推移」参照)。
両取引所および全体の取引所における現物Cumulative Volume Delta(CVD)Biasチャートを確認すると、Coinbaseとその他の取引所において、Takerとしての売買行動に明確な違い(偏り)が見られる。この指標では、マイナス値は積極的な売りが優勢であることを、プラス値は積極的な買いが優勢であることを示す(下部チャート「暗号資産取引所における現物BTC累積出来高デルタの偏り(CVD Bias)の推移」参照)。 Coinbaseではプラス圏を維持している一方、その他の取引所では急激なマイナス推移となっており、米国の機関投資家が現物を買い進めている一方で、リテール投資家は売却に動いていると言える。この乖離は、2024年8月5日に発生したエンキャリートレード清算時の水準にまで拡大しており、リテール投資家の投資心理が大きく悪化していることを示す。これにより、機関投資家からの資金流入がビットコイン価格の主要な下支え要因となっていると考えられる。さらに、機関投資家が主に時価総額上位10銘柄への投資に集中している一方、リテール投資家は中小型銘柄へのエクスポージャーが高いため、アルトコインの反発が限定的であることも説明できる。
こうした状況を踏まえると、米国時間の火曜日に起きた金価格の急落にビットコインが反応したという見方もできる。暗号資産の保有者で、リスクヘッジ目的で保有していた金が年初来で60%以上上昇しており、利益確定売りによって得た余剰資金が、再びリスク資産である株式やビットコインに流入された可能性がある。この際、週内高値の114,000ドルに一時的に上昇したものの、勢いは続かず木曜早朝には106,000ドルまで押し戻された。しかし、トランプ大統領がバイナンスの創設者チャンポン・ジャオ氏を恩赦したことや米中首脳会談が今月30日にAPECで開催されると正式発表されたことを受け、ビットコインは110,000ドル台を回復した。さらに、金曜日夜に発表された米国9月消費者物価指数(CPI)が市場の予想を下回ったことで、来週の10月FOMCおよび12月のFOMCでの利下げ観測が強まり、110,000ドル台がサポートラインとして意識される展開となった。
来週は暗号資産を含むグローバル金融市場全体が神経質な値動きとなる可能性がある。27日からトランプ大統領が来日し、28日には日米首脳会談、30日は日銀の政策金利決定会合に加え、米国の10月FOMCが開催される。同日にはトランプ米大統領と中国の習近平国家主席がAPECで通商協議に関する首脳会談を行う。市場の予想と異なる展開になれば、高いボラティリティが想定されるため、引き続き徹底したリスク管理が求められる。
[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[大規模清算後の各暗号資産の時価総額推移、過去3週間]

(2025年10月5日から2025年10月26日の時価総額チャート)
(TradingView提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[バイナンスの2025年度リテール顧客取引割合の推移]

(CryptoQuant提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[暗号資産取引所における現物BTC累積出来高デルタの偏り(CVD Bias)の推移]

(青線がコインベース現物CVD Bias/黄線がバイナンス現物CVD Bias/灰線が全ての現物CVD Bias)
(赤バーがコインベースとバイナンスのCVD Biasの差分/黒線がビットコイン価格)
(Glassnode提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
【10/19~10/25週の主な出来事】

【10/26~11/1週の主な予定】

【今週のひとこと】非ペッグ資産の真価
今週は法定通貨にペッグされたステーブルコインの機運の高まりの中で見出される非ペッグ資産の真価について考察します。
JPYC株式会社は10/24(金)、日本円ステーブルコイン「JPYC」および発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」の正式リリースを発表しました。日本初の円ステーブルコイン「JPYC」は10/27(月)より発行開始となります。また、テザー社は今年後半に米国市場向けの新たなステーブルコイン「USAT」を立ち上げ、12月にローンチ予定、1億人の米国ユーザーベースを目指すとの報道があり、法定通貨にペッグされたステーブルコインへの注目が集まっています。
こうした中で改めて認識されたいことは、法定通貨にペッグされたステーブルコインは他の暗号資産に取って代わる脅威ではないということです。法定通貨にペッグされたステーブルコインは価格安定性・安全性・透明性が高いデジタル資産とされており、その普及は暗号資産の普及に寄与すると考えられます。非ペッグの暗号資産は一般的に価格の変動性が高いとされ、退避先となる法定通貨にペッグされたステーブルコインの普及はその他の暗号資産の普及に一役買うと考えられます。一方、デジタル通貨による決済という面では法定通貨にペッグされたステーブルコインとその他の暗号資産で競合します。しかし、もとをただしてみれば暗号資産は価格変動を伴いながらも、中央管理体制に依存せず、分散性・検閲耐性・自由な価値移転が可能であるという特徴を持ち、法定通貨にペッグされたステーブルコインの中央管理体制に依存するという弱点を補完するとも言えます。よって、法定通貨にペッグされたステーブルコインが市場を独占するというよりも相互補完的に成長することで健全なデジタル通貨経済が形成されると結論付けられます。
最近では、国際送金や流動性供給の領域で XRP が再び評価されつつあり、価格の変動を抑える技術的特性と高い決済効率が注目されています。中央管理体制に縛られない形で「流動性」と「効率性」を両立し得る新しい価値移転の仕組みを提示するXRPは、暗号資産が本来目指してきた金融の民主化という理念を現実の金融システムに近づけるものであり、法定通貨にペッグされたステーブルコインの機運の高まりの中でこそ独自のエコシステムと実需を備えたアルトコインの価値が際立つと考えます。
(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
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