Market Report

マーケット情報

2025/12/15

暗号資産週間レポート(2025.12.7~2025.12.13)
米マクロ指標とハイテク株影響で方向感に乏しい暗号資産市場

【12/7~12/13週のサマリー】
・10月JOLTS求人件数が予想比好調で暗号資産は一時的に上昇
・FOMCは予定通り25bpsの利下げを実施し、その後の会見はハト
・大手テック企業に関連するデータセンターの完成時期延期が報じられリスクオフに

【暗号資産市場概況】
 12/7~12/13週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+1.37%の14,092,550円、ETH/JPYの週足終値は同+2.79%の486,335円であった(※終値は12/13の当社現物EOD[12/14 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、米国の堅調な労働指標と金融政策イベント、さらに米株市場の急落といった複数のマクロ要因の影響を受ける展開となった。週前半はJOLTS求人件数が市場予想を上回る強い結果となったことで米国景気の底堅さが意識され、リスク選好の動きからビットコインを中心に暗号資産価格は上昇基調で推移した。しかし、週後半にかけては米国株式市場の急落を受けて投資家心理が悪化し、暗号資産市場も上値の重い展開となった。
 週初に発表された10月JOLTS求人件数では、米国の労働市場が依然としてタイトな状態にあることが示され、景気後退懸念が後退した。これを受けて米長期金利は一時的に上昇したものの、暗号資産市場では「米国経済のソフトランディング」期待が優勢となり、ビットコインや主要アルトコインは買いが先行した。
 市場の最大の注目イベントであった連邦公開市場委員会(FOMC)では、大方の予想通り25bpsの利下げとなった。パウエル議長は会見において、失業率が6月から9月にかけて0.3%増加したことや雇用統計が過剰計上されている可能性に触れ、労働市場の冷え込みについて懸念を示した。また、インフレについてはやや低下しているとし、総合的にはハト的な会見と捉えられたことでBTCは一時的に上値を試す動きとなった。
 一方で、週後半には米Open AIに関連するデータセンターの完成時期延期が報じられ、AI投資や成長期待への不透明感が急速に広がったことで米国株式市場が大きく下落した。ハイテク株主導のリスクオフの流れは暗号資産市場にも波及し、短期的な利益確定売りが優勢となったことで、週後半にかけては価格が調整する展開となった。
 総じて、今週の暗号資産市場は方向感に欠ける値動きとなった。今後も、米国のインフレ指標や来年の利下げ時期を巡る市場の織り込みがどのような影響を与えるかに引き続き注目していきたい。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【12/7~12/13週の主な出来事】


【12/14~12/20週の主な予定】


【今週のひとこと】OCC、暗号資産関連5社の連邦信託銀行免許申請を条件付き承認

 米通貨監督庁(Office of the Comptroller of the Currency:OCC)は12月12日、暗号資産関連企業による連邦信託銀行(national trust bank)の設立・転換に係る申請5件を条件付きで承認しました。具体的には、Circleの「First National Digital Currency Bank」およびRippleの「Ripple National Trust Bank」の新設申請に加え、BitGo、Fidelity Digital Assets、Paxosの各州信託会社が連邦レベルの信託銀行へ移行する申請が対象となりました。OCCは既存の約60行の連邦信託銀行と同様の枠組みで監督する方針を示しました。
 今回の条件付き承認は、暗号資産業界を既存金融の外に置くのではなく、連邦監督の下で信託・カストディ等の機能を制度内に取り込むという政策的進展と位置付けられます。他方、連邦信託銀行は一般に、預金受入や貸出といった商業銀行機能を想定しないため、いわゆるフルバンク免許とは異なります。
 承認条件は各行で異なるものの、共通して①一定額のTier 1資本の維持、②Tier 1資本の一定割合(または下限額)を適格流動資産として保有、③運営開始後の当初3年間における資本・流動性規律の適用等が求められます。例えばRipple National Trust Bankの場合、最低1,170万ドルのTier 1資本維持に加え、そのうち少なくとも50%(または585万ドル)を適格流動資産として保有することが条件に含まれています。
 こうした制度整備が進む中、既存金融によるオンチェーン活用も具体化しつつあります。12月11日にはJ.P. MorganがGalaxy Digital向けに5,000万ドル規模のコマーシャル・ペーパーをSolana上で発行し、CoinbaseおよびFranklin Templetonが購入しました。発行・償還の資金決済にはCircleのUSDCが用いられ、Coinbaseはウォレット/カストディ機能面でも関与したと報じられています。規制(免許)と市場実装(トークン化資産)が並走し始めたことは、暗号資産ネイティブ企業と既存金融機関の融合が実務のレイヤーで進み得ることを示唆しています。




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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