2022/02/22
地政学的リスクの割にボラティリティは低い、暗号資産市場はリスクを織り込めているのか?
先週の暗号資産は、FOMC議事録において真新しい内容が出てこなかった事に加え、ロシア軍がウクライナ国境から軍隊を一部撤退するという報道により一時的に上昇し、ビットコインは45,000ドル手前まで上昇した。しかし、木曜日には、そのロシア軍は撤退していないこと明らかになり、ビットコインは40,000ドル付近まで下落。その後も継続的に重く推移し、日曜日には週末の流動性の低下もあり38,000ドルまで更に下落した。今週は、週初に「プーチン露大統領とバイデン米大統領が会談に原則合意」との報道が伝わると、一時的に39,000ドル超えまで上昇して始まったが、昨夜の「ロシアによるウクライナ東部の新ロシア派の独立承認」との報道を受け、リスクオフの動きが増し37,000まで再び下落した。
売買動向を見ると、相対的にイーサリアムよりビットコインに買いが集まっていた。他のコインを見ると、XRP(エックスアールピー)、SOL(ソラナ)、MATIC(ポリゴン)、AVAX(アバランチ)、EOS(イオス)とUNI(ユニスワップ)が買い優勢である一方で、ADA( カルダノ)、LINK(チェーンリンク)、 LUNA(ルナ/テラ)は売りが優勢であった。地域別に見ると、アジア圏と欧州・中東が買い手で、顧客カテゴリー別に見ると、富裕層、海外取引所・銀行と個人が買い越しになっていた。
先週の海外取引所の先物市場のビットコイン対米ドルベーシスは、あまり動いておらず、OTCレンディング市場においても目立った動きはなかった。1ヶ月物は、1~2%程度で推移しており、引き続き米ドルやステーブルコインの借り入れ需要は低調であった。
オプション市場において、ボラティリティとATM(アット・ザ・マネー、スポット価格と権利行使価格が等しいオプション)は週半ばに下落した。これは、先述したウクライナ情勢の一時的な緩和ニュースによるものであり、6月物のビットコインATMは62%に低下した。このレベルは歴史的低水準であり、現在の地政学的リスクの高さ、またヒストリカルボラティリティ(過去の価格変動実績から算出されるボラティリティ)が、現在のインプライドボラティリティ(将来の値動きを予想したボラティリティ)より高いことを考えると、非常に驚くべきことである。つまり、地政学的リスクが高まっているにもかかわらず、今のオプションの価格は、過去の値動きよりも小さい値動きでもプレミアムが回収可能な状態となっているということである。
これは、市場にはオプション売りのフローが十分に供給されているということであり、新たな供給のほとんどがDefi(非集権型金融)から発生するオプションであることを踏まえれば、この過剰供給の正体は全てコールサイド(上のストライク)であると考えられる。その結果、スポットが下落し、ストライクから離れてしまうと、市場は突如としてボラティリティがショートと感じてしまうことが想像できる。今後は、スポット価格の下落にボラティリティが激しく反応することが予想される。
今週発表される注目米経済指標は、22日の住宅価格指数、24日の新規住宅販件数、24日のGDP改定値、25日の耐久財受注とPCEデフレーターである。また、3月のFOMC前のブラックアウト期間前にFRB高官(ボスティック(22日)、メスター(24日)、ウォラー(25日))の発言にも注目される。更に、緊迫が増したウクライナ情勢が、引き続きリスクセンチメントを左右しており、市場の最も注目するところであろう。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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