Market Report

マーケット情報

2024/08/13

暗号資産週間レポート(2024.8.4~2024.8.10)
景気後退か?マクロ経済指標に今後も注意。XRPは訴訟結果の好感を受け、一時約30%上昇!

【8/4~8/10週のサマリー】
・円高や日米金利差の縮小を起因とするキャリートレードの解消が発生
・景気後退懸念による世界的リスクオフ(株や暗号資産からの退避)が発生
・Ripple社はSECとの訴訟で和解に達し、約1億2,500万ドルの支払い命令が下される

【暗号資産市場概況】
8/4~8/10週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+0.58%の8,963,700円、ETH/JPYの週足終値は同-10.40%の383,490円であった(※終値は8/10の当社現物EOD[8/11 6:59:59]レートMid値)。
週初、キャリートレードの解消(最下部「今週のひとこと」で解説)に加え、景気後退懸念による世界的リスクオフ(株や暗号資産からの退避)が発生。ビットコイン価格は一時50,000ドルを下回った。
背景には日銀による政策金利の引き上げ以降急伸していた円高や日米金利差の縮小、8/2に発表された米雇用統計の非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回ったこと、失業率がサーム・ルール(失業率の3カ月移動平均が過去12カ月間の最低値を0.5以上上回ると景気後退に陥るというシグナル)に抵触し悲観ムードが醸成されていたこと、などのマクロ環境要因が挙げられる。
景気後退懸念とは、市場参加者による「FRB(連邦準備制度理事会)の利下げ開始が遅すぎたため経済は景気後退に陥ってしまうのではないか」とする疑念であり、現在は前週レポート(https://www.neweconomy.jp/features/sbivct/408013)でも考察していたとおり、CPIを注視する段階を通過し、雇用の強弱が経済の体温を測る指標となっている状況だ。「雇用データが弱いので、本格的な景気後退が始まる前にリスク資産を法定通貨に交換して(売却して)、資産の減価を回避しておこう」という動きが今回のリスクオフである。
雇用者数のデータに対してはハリケーン「ベリル」の影響が大きかったとする分析が進んできたほか、サーム・ルールの提唱者自身も抵触について「誇張された結果かもしれない(https://stayathomemacro.substack.com/p/sahm-thing-more-on-the-sahm-rule)」と述べる中で、8/5のISM景況指数(48.8から51.4に回復)や8/8の新規失業保険申請件数(市場予想対比ポジティブ)の結果を受けて景気後退懸念が後退し、暗号資産を含むリスク資産価格は週初水準まで巻き戻すこととなった。
週央にはSECがRipple社を提訴していた訴訟への判決が下り、Ripple社は1億2,500万ドルの罰金支払いを命じられた。この金額はSECが当初要求していた約20億ドルに比べ格段に低く、市場は好感。XRPの価格は約30%上昇した。現状ではSECが控訴する可能性が残されており、控訴期限は10月初旬となっているため、今後も関連ヘッドラインには注意を払う必要がある。
次週以降も、引き続きマクロ経済指標の内容(主に「インフレ状況がネガティブサプライズとならないか」「雇用の強弱」「短期金利の上振れリスク」を抑えられれば概ねカバーできるのではないかと考える)や、大口の売り手(直近であればGrayscaleからの資金流出、Jump Tradingによる継続的な売却、破綻したGenesisによる清算、中国政府によるプラス・トークンからの押収等が、イーサリアムが他通貨比アンダーパフォームしている要因であろう)に関するヘッドラインを意識したい。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートよりSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)




【8/4~8/10週の主な出来事】



【8/11~8/17週の主な予定】


【今週のひとこと】キャリートレード

週初の世界同時株安に関し、「円キャリートレードの解消が一因」といった報道を目にした方も多いのではないでしょうか。今回は、キャリートレードについて解説します。
キャリートレードとは、金利差を利用した投資戦略のことです。具体例としては、低金利通貨(円など)を借り入れ、高金利通貨(ドルなど)や高利回り資産(債券など)に投資する手法が挙げられます。
日本の中央銀行(日銀)は、長らく低金利政策を続けてきました。一方で、2022年に米国は利上げ(政策金利の引き上げ)を開始、世界の多くの国々が追随しました。このような状況では、ほぼゼロに近い金利で日本円を借り入れ、ドルに交換(借りた円を売ってドルを買う)し、米国債を購入すれば、年率約4%(2024年8月時点)の利回りを低リスクで得ることができます。
もちろん円高が進行した場合、為替の損失が発生してしまいますが、2024年7月までの間は、金利差を背景に円安のトレンドが続いていたため、そのような心配をする必要はありませんでした(円高が進んだらポジションを解消すればよい、と考える参加者も多かったと考えます)。
2024年7月31日に日銀は利上げを発表しました。利上げ幅は0.15%でしたが、植田総裁の会見はタカ的な内容で、今後も利上げが続く可能性が示唆されました。景気後退懸念も相まって、日米の金利差が縮小。また、米国では2024年9月以降、利下げが始まることがほぼ確定的であり、時間が経つほどに金利差は縮小していく見込みです。円高方向にトレンドが続いた場合、借りている円の価値も高くなるため、為替差損も発生してしまいます。キャリートレードのポジションが解消されるのは必定でした。
借り入れた日本円は、債券だけでなく、リスク資産(株や暗号資産)の購入にも使われていました。今回は、キャリートレードで借り入れた円を原資としたリスク資産のポジションも解消(売却)され、週初の下落に一役買ったのではないかと言われています。
最後に、米国での利上げ開始以降のドル円価格のチャートを掲載します。


[ドル円価格と日米金利差]

(TradingView提供のチャートより SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


左方の縦線が米国の利上げ開始時期、白線がドル円価格、黄線が米政策金利、紫線が日政策金利、橙線が米2年債と日2年債の金利差、水色線が米10年債と日10年債の金利差です。政策金利が金利差の根幹を生み、金利差が為替レートに影響している様子が観察できるのではないでしょうか。


(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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