Market Report

マーケット情報

2025/03/17

暗号資産週間レポート(2025.3.9-2025.3.15)
貿易摩擦と休戦交渉が暗号資産市場に与えた影響とは!?今週は各国政策金利に注目!

【3/9~3/15週のサマリー】
・カナダ次期首相Mark Carney氏が対米関税報復を示唆、BTCは一時76,500ドル台をタッチ
・USDC発行元のCircle社、クロスチェーンの決済時間を「数秒」に短縮するアップデートを開始
・米経済指標のCPIとPPIが予想を下回るも、市場は関税政策と地政学的緊張に麻痺
・Ripple社、ドバイ金融サービス局から決済事業ライセンスを取得
・米ステーブルコイン規制確立法案「GENIUS Act」が米上院銀行委員会で通過、下院へ



【暗号資産市場概況】
3/9~3/15週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲1.74%の12,545,900円、ETH/JPYの週足終値は同▲11.62%の290,030円であった(※終値は3/15の当社現物EOD[3/16 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、米国とカナダ間の貿易摩擦の激化やロシア・ウクライナ戦争の休戦合意難航など不確実性が高まり、市場にポジティブなニュースが浸透しにくい状況であった。言い換えれば、各国要人の発言に振り回される一週間でリスク回避の動きが強まった。 ビットコインは月曜朝、次期カナダ首相に指名されたMark Carney氏が対米関税報復の可能性を示唆したことで80,000ドルまで下落した。これはトランプ大統領による対カナダ関税圧力が続き、緊張感が高まったことが主因と考えられる。さらに、共和党のつなぎ予算案が阻止される可能性が指摘され、市場の不安が増した。
その影響で、米国市場が開く月曜夜から翌朝の東京市場オープンにかけて暗号資産と株式の売りが加速。資金は米国債へ避難したことで金利が低下し、ニューヨーク主要3指数も下落した。火曜朝にはトランプ大統領勝利後の11月初旬水準である76,000ドル台まで下落した。 火曜夜、トランプ大統領がカナダ産鉄鋼とアルミニウムの関税を25%から50%へ引き上げると発言、翌朝(現地時間)から適用するとした。この追加関税発言を受け、ビットコインは回復していた80,000ドルを再び割り込んだ。しかし、ウクライナが30日間の休戦を受け入れる意向を示し、カナダ・オンタリオ州のフォード州首相が米国向け電力への関税賦課を猶予することを受けて市場心理が改善された。
 週央では米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)が市場予想を下回った。一方、米商務長官が鉄鋼・アルミニウム関税を継続すると発言し、カナダ外務長官も対米圧力を欧州と協力して強めると表明したため、市場の不透明感は払拭されなかった。
 さらに、ロシアのプーチン大統領は休戦を支持しつつも交渉には多くの課題があると発言し、交渉進展に難航が示された。こうした混乱の中、ビットコインはCPI発表時の84,000ドルから79,000ドル後半まで下落し、週内3回目の80,000ドル割れとなった。  金曜午前からは市場が上昇へ転じた。主な背景として、米国政府のシャットダウンの回避とオンタリオ州の電気関税猶予の延長が挙げられる。これによりリスクオフ局面がやや改善し、ビットコインは84,000ドルを回復して週末を迎えた。
 目まぐるしいマクロ環境下でも、暗号資産セクターでは注目すべきポジティブな動きがあった。米大手資産運用会社Franklin TempletonがXRP現物ETFを米証券取引委員会(SEC)に申請し、米上院銀行委員会ではステーブルコイン規制法案「GENIUS Act」が通過した。その他は下段の「3/9~3/15週の主な出来事」を参照されたい。
特筆すべきはステーブルコイン規制法案「GENIUS Act」の通過である。発行元の監督機関明確化、月次流動性報告や裏付け資産構成報告の義務化、マネーロンダリング防止(AML)およびKYC基準の順守などが骨子となる。ステーブルコインの制度整備は米国債の需要と密接に関連しており、米ドル需要をグローバルに確保し、MAGA(Make America Great Again)実現を目指す青写真の一環と考えられる。
来週は主要国、特に日米英の政策金利発表が予定されている。日本と米国の政策金利発表が連日控えており、最近の関税政策による不確実性の高まりを各国中央銀行がどのように評価するかが注目される。









[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【3/9~3/15週の主な出来事】



【3/16~3/22週の主な予定】


【今週のひとこと】トランプファミリーのポートフォリオ

暗号資産業界のみならず、世界中の各分野で話題を集めているトランプ大統領ですが、ここでトランプ氏の一族が主導する暗号資産プロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」の動向を探ってみましょう。(WLFプロジェクトの詳細については暗号資産週間レポート(2025.1.19-2025.1.25)をご覧ください)
WLFIとは、トランプ一族が推進する分散型金融(DeFi)プロジェクトです。「金融の民主化」を掲げ、「自由」や「プライバシー」を重視するとされています。 人々の利益のために新しい金融システムを構築し、民主化を推進するという壮大なDeFiプロジェクトです。また、様々なトークンを保有しており、マーケットでも時折その動向が注目されています。執筆時点(3/16)ではありますが、オンチェーンデータより確認できる情報をもとに現在のポートフォリオを分析してみましょう。
現時点で保有が確認できるトークンは主に11種類であり、投資金額としては3.4憶ドル(約500億円)です。主な保有トークン のティッカーは以下の通りです。(ETH/WBTC/TRX/LINK/AAVE/ENA/MOVE/ONDO/SEI/AVAX/MNT)
実際に保有している、耳にしたことがあるトークンも多いのではないでしょうか。
そしてWLFIは、現時点で約1.1億ドルの含み損を抱えています。中でもイーサ(ETH)はポートフォリオ全体の58%を占めており、ETH単体で8,800万ドルの含み損となっています。しかし、先述したように「金融の民主化」を標榜し、投資についてはプロジェクトの基盤強化や、各プロジェクトとのパートナーシップを目的としている側面もあり、WLFIにとって短期的な市況変動による含み損は大きな問題ではないのかもしれません。
直近ではブルームバーグやウォールストリートジャーナルといった既存メディアによるトランプ氏の暗号資産関連のネガティヴな報道に対し、同氏とともに徹底抗戦の構えを見せています。
トランプ氏の大統領就任当初より注目を集めているビットコインの戦略的準備金政策とは異なる側面がありますが、付随的にWLFIの動向を追ってみるのも面白いのではないでしょうか。











(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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