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2025/09/16

暗号資産週間レポート(2025.9.7~2025.9.13)
雇用統計大幅修正で景気不安、利下げ期待強まりBTC堅調

【9/7~9/13週のサマリー】
・米雇用統計の年次改定で雇用者数が91.1万人下方修正され、同統計史上最大の修正幅に
・アトキンスSEC委員長、グローバル金融市場円卓会議で基調講演
・ 米生産者物価指数(PPI)下振れと米新規失業保険申請件数の増加により利下げ期待が一段と高まる

【暗号資産市場概況】
 9/7~9/13週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+5.31%の17,115,400円、ETH/JPYの週足終値は同+9.02%の688,705円であった(※終値は9/13の当社現物EOD[9/14 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、利下げ観測をめぐるインフレ指標と労働関連指標の綱引きの中で、最終的には「雇用悪化を重視した利下げ期待」が優勢となり、ビットコインは機関投資家からの資金流入も相まって堅調に推移した。
 週初は先々週に引き続き、9月の連邦公開市場委員会(以下、FOMC)での利下げ期待を背景に買いが優勢となり、ビットコインは一時113,000ドルを超える水準まで上昇した。しかし、9日に米労働統計局(BLS)が公表した米雇用統計の年次改定の推計値では、2024年3月から2025年3月までの1年間の雇用者数の伸びが91.1万人分下方修正される見通しとなった。これは同統計史上過去最大の下方修正幅であり、月平均では約7.6万人分のマイナス改定(従来の発表値は約180万人増であったため、実態は大きく下振れていた可能性)となった。この結果が嫌気され、ビットコインは一時111,000ドル割れまで下落した。なお、この推計値の確報は来年2月に公表される予定である。
 もっとも、利下げ期待に支えられた需要は依然として強く、むしろ絶好の押し目買いの機会と捉えられたようで、その後ビットコインは再び堅調に推移した。特に10日に発表された米生産者物価指数(PPI)がいずれも市場予想を下回ったことで、企業の生産コストの上昇ペースが鈍化したことが示され、将来的なインフレ緩和を示唆する内容となった。これにより9月利下げ観測が一段と強まり、ビットコインは114,000ドル台に到達した。今回のPPI下振れはインフレ圧力の緩和を示すものであり、景気急減速ではなくソフトランディングへの楽観的見方を広げる要因となったことで、相対的に高いリターンを狙える株式や暗号資産といったリスク資産への資金流入が強まった。
 同日、経済協力開発機構(OECD)初のグローバル金融市場円卓会議が開催され、米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長が基調講演を行い、「ほとんどの暗号資産は有価証券ではなく、SECは境界を明確に定義」「暗号資産の時代が来た」などと発言し、暗号資産の規制改革を進めることを発表した。ただし、これら発言による市場インパクトは限定的なものに留まった。
 翌11日に発表された米消費者物価指数(CPI)は市場予想をやや上回る結果となったものの、同時に公表された週次の米新規失業保険申請件数が市場予想を大きく上回り、2021年10月以来の高水準を記録した。これは雇用情勢が予想以上に悪化していることを示唆するものであった。この結果を受けて、インフレ懸念は残るものの、労働市場の軟化を背景に連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が改めて意識され、米国債利回りが低下。投資家のリスク許容度が高まり、ビットコインも116,000ドル台後半まで上昇した。加えて、ビットコイン現物ETFへの資金流入再燃など、機関投資家による継続的な買いも背景にあり、投資家心理の支えとなっていると言える。市場はインフレと雇用という二つの要素を秤にかけた結果、雇用悪化をより重視し、利下げ観測の強まりが株式やビットコインなどリスク資産への資金流入を後押しする展開となった。
 今週はいよいよ18日(日本時間未明)にFOMCでの政策金利発表が予定されている。CME GroupのFedWatch Toolをはじめ、市場関係者の大方の予想では25bpの利下げが有力視されている。また、年内に3回の利下げが実施されるとの見方が70%以上の確率を占め、市場では既に有力なメインシナリオと見なされている。したがって、予想通りの結果となるのか、それとも市場予想を覆すサプライズとなるのか、今後の相場動向を占ううえで大きな注目点となるだろう。


[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【9/7~9/13週の主な出来事】



【9/14~9/20週の主な予定】


【今週のひとこと】ビットコイン・オプション取引

 国内におけるビットコイン・トレジャリー戦略の採用とともに、ビットコイン・オプション取引も増加傾向にあります。これは単なるバイ&ホールド戦略を超えて、価格変動リスクのヘッジあるいはプレミアムを通じた収益機会の増加を目指す動きと言えます。
 オプション取引は、多くの枠組みの中では権利の取引として知られています。主な取引目的は価格変動リスクのヘッジですが、永久先物の売りポジションのように、下落相場を予想したポジション構築(この場合はプットオプションの購入)などを主とした利益の獲得も可能となります。上記以外にも様々な戦略を組むことが可能であり、国内の暗号資産デリバティブ取引の一例としてはビットコインの保有量が国内最大であるメタプラネット社を挙げられます。同社は去年の10月に、223ビットコインのプットオプションの売却を実施し、約23.97BTCをプレミアムとして獲得しました。
 先月に上記のオプション・プレミアムを通じたインカム戦略をとる事例も出現しています。コンヴァノ社は8月4日に発表した「コンヴァノ21,000ビットコイン補完計画」の一環としてオプション取引によるビットコイン・インカム事業を開始しました。同社はSBI VCトレード社(以下、当社)の「SBI for prime」という大口顧客向けサービスを用いてビットコイン計画の遂行に乗り出しています。
 グローバル市場で暗号資産トレジャリー戦略が拡大する中、国内における上場企業のビットコイン・オプション取引戦略はリスク管理と収益源の多様化が可能であることを示しています。法制度の整備により、リスク管理や新規収益源の確保など、様々なニーズに応えられる暗号資産商品も展開されていくのではないでしょうか。



(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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