2022/11/08
不安材料もある中での上昇
先週のハイライト先週の動き
FOMCの内容は、利上げペース減速期待を後退させるタカ派的なものであったことから主要コインは上値の重い動きとなった一方、米雇用統計で失業率が悪化したことで米国の利上げ織り込みが後退したことや、前週にイーロン・マスク氏によるTwitter社の買収を受けてDOGEが上昇したことで、いくつかのアルトコインは強気な動きとなった。
しかし、週末にかけてFTXのオーナーであるSam Bankman-Fried(SBF)氏が所有するもう一つの会社であるAlameda Research社のバランスシートと称される文書がリークされ、Alameda社の資産は数十億ドル規模のFTTを含み、その大部分がローンの担保であることや、大量のSOLを含んでいることが示唆された(FTTはFTXの取引所トークン、SOLはSBF氏が支援するSolanaブロックチェーンのネイティブトークン。いずれも簡単には現金化できない資産)。
またBinance社のオーナーであるCZ氏が保有しているすべてのFTTを今後売却するとツイートし、FTTは10%を超える急落となったが、このツイートはSBF氏とCZ氏の規制当局が業界で果たす役割に関する意見の食い違いから、両社の関係性が悪化していることを明確に示した。これらを受け、Alameda社が保有しているFTTの価値がローンに対して十分なのか、もしそうでなければAlameda社やFTXが今後どうなるのかという疑念が強まっている。
フローデータをみると、いくつかの興味深い強い買いの動きが見られている。地域別でみると、アジア・オセアニアや欧州・中東が強い買い手となっており、アメリカ地域は売り買い拮抗している。コイン別でみると、DOTは顕著な買い越しとなっている。また売買高でみるとDOGEはETHを抜いて全体の2番目となった。顧客別でみると、ファンド系と銀行系が買い手となっており、他の顧客層では売り買いが拮抗している。
暗号資産先物市場では暗号資産の対ドルベーシスが上昇したが、これは市場参加者が先物の期間を延ばしたことや、ショートを減らしたことを示唆している。
暗号資産オプション市場ではスポット市場の動きに反応して大きく動いており、12月限月のBTCのボラティリティは先週金曜日の上昇を受けて49%から54%程度まで上昇。また、短期物のBTCとETHのボラティリティの差は、ETHの値動きが相対的に大きいことを受けて、17%のETH高から27%のETH高に上昇した。しかし、その後は上記のFTX/Alameda関連のニュースを受けて、スポットの上昇トレンドが反転したことで、下サイドのオプションの需要が高まった。また、先週は話題の中心の一つであったSOLオプションの取引高が大きく、12月限月のボラティリティは80%から100%程度に急騰した。
今後の展望
今後もFRBはデータ重視の政策判断を取っていくことを強調しているが、来年はインフレが緩和すると期待している市場参加者が多くなっているなか、今週の米CPIが予想を上回る結果となった場合は再びリスクオフの動きとなることが想定される。一方でここ最近の暗号資産市場はネガティブなニュースへの反応は限定的であることから、実際の動きは現時点では読みづらい。
今週の米CPIは市場で幅広く注目されている一方、FTXとBinanceという世界の2大暗号資産取引所の間でのいさかいを受け、FTTとSOLの価格動向が暗号資産市場全体の主要な変動要因となる可能性が強まっている。FTTで22ドル近辺、SOLで31ドル近辺をそれぞれ下回ることは、他のコインにも波及するシグナルとなる可能性があるため注意が必要か。仮にそうならなかった場合は、不安材料はありつつも再度上昇に転じるのではないか。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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