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マーケット情報

2025/04/21

暗号資産週間レポート(2025.4.13-2025.4.19)
BTC底堅さを維持、貿易摩擦や景気後退懸念の中での市場動向

【4/13~4/19週のサマリー】
・ 米国の通商政策問題は依然として燻り相場の重石に
・パウエルFRB議長、米経済の減速とトランプ関税の影響が想定よりも大きなものとなる見解を示す
・パウエルFRB議長、「銀行の暗号資産関連規制に関して緩和される余地がある」
・トランプ大統領、自身のSNS上にパウエルFRB議長の解任を求める発言を投稿





【暗号資産市場概況】
4/13~4/19週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲0.62%の12,138,550円、ETH/JPYの週足終値は同▲2.49%の230,520円であった(※終値は4/19の当社現物EOD[4/20 6:59:59]レートMid値)。 先週の市場は、貿易摩擦や景気後退懸念を背景にドル建て資産からの資金逃避が確認される中、BTCは底堅い動きを見せた。
週初は、前週末に報じられた関税緩和の報道を受けて投資家心理が改善。さらに、FRBのウォラー理事が「景気後退回避の為、利下げが選択肢となる可能性がある」と発言したことを背景に、主要なリスク資産が堅調に推移した。また、トランプ政権のデジタル資産担当高官ボー・ハインズ氏が「関税収入を活用したBTC購入の可能性」に言及したこともBTCにとってはポジティブな材料となった。 一方で、貿易関連のトピックに揺さぶられる地合いは継続した。EUと米国の貿易交渉が難航しているとの報道を受けて一時的に市場は下落。その後、中国側が米国との協議継続に前向きな姿勢を示したことで持ち直すなど、引き続き通商問題が市場の方向感を左右した。
木曜日、パウエルFRB議長がシカゴ経済クラブの講演にて、利下げに慎重な姿勢を示し、「米経済の減速とトランプ関税の影響が想定よりも大きなものとなる」との見解を示すと、米株・暗号資産ともに急落。しかし、パウエル議長が銀行の暗号資産関連規制に関して緩和される余地があると発言した影響もあり、主要リスクアセットと比較してBTCの下落は限定的なものとなった。
米国の金利政策動向については、パウエル議長の慎重姿勢を受けても、FF金利先物市場は依然として年内4回の利下げがコンセンサスとなっており、今回の発言の影響は一時的とみてよいだろう。前週の米国の経済指標の下振れや、ウォラー理事のハト派発言を受け利下げへの期待感が高まっていたため、市場参加者は期待を裏切られた格好だ。
米国の主要株価指数が軟調に推移する中、BTCは「デジタルゴールド」としての動きを見せ80,000ドル台を堅持した。BTCの底堅い推移の背景には、機関投資家や企業の買い支えが要因となっている可能性が高い。ビットコイン現物ETFローンチ以降、主要な買い手が個人投資家から機関投資家・企業へとシフトし、市場に放出される供給を吸収する構造が徐々に確立されつつある。2025年1〜3月期には、上場企業によるビットコイン取得が過去最高の9万BTCを超えた。さらに大口投資家のBTCの蓄積傾向もオンチェーンデータより確認されており、こうしたファンダメンタルズがBTCの価格下支え要因となっているといえるだろう。
週末には、トランプ大統領が自身のSNS「Truth Social」にてパウエルFRB議長の解任を求める投稿を行い注目を集めた。イースター休暇により欧米市場が休場していたことから直近の市場反応は限定的であったが、翌日のホワイトハウス演説でも同様の主張が繰り返され、波紋を広げている。こうした発言は利下げ圧力を高める政治的パフォーマンスとも受け取れるが、政権とFRBとの金融政策スタンスの対立が深まる場合、市場への影響も無視できない。今後の動向には引き続き注視が必要である。






[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【4/13~4/19週の主な出来事】



【4/20~4/26週の主な予定】


【今週のひとこと】パウエルFRB議長の解任論

トランプ大統領は2025年4月17日に自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」で、米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長について「(利下げの判断が)いつも遅すぎるし、間違っている。パウエル議長の解任を一刻も早く実現すべきだ」と投稿しました。この発言は、パウエル議長が前日に行った講演で、トランプ政権の関税政策がインフレを加速させ、経済成長を抑制するリスクがあると警告したことへの反発と見られています。トランプ大統領は、利下げを行わないパウエル議長に対する不満を強めており、解任を検討していると報じられました。
このような動きに対し、金融市場ではFRBの独立性や政策の安定性に対する懸念が高まっています。
FRBは「雇用の最大化」「物価の安定」の役割があり、政治からの干渉を受けずに自らの判断で金融政策を決定できる政府機関です。
仮にパウエル議長が解任された場合、FRBの独立性が政治介入によって脅かされたと市場が認識すれば、米国の金融政策への信頼が揺らぎます。特に米国債やドルへの信頼が低下し、米国債の利回りは上昇し、ドル安、株安といった動きが起きやすくなり、リスク回避の動きが世界中にも波及するでしょう。そして暗号資産市場においても、一時的に影響を受けると考えられます。
とは言え、強制的な解任は法律上非常に難しく、トランプ大統領がパウエル議長を任期中に一方的に解任することは、ほぼ不可能と考えられます。なぜならFRB議長は「任期付きの独立機関の長」でありその任期は4年、そして法律上、議長の任期中に大統領が「自由に解任する権限」は明記されていないためです。(FRB議長の解任には「正当な理由(for cause)」が必要とされており、政策判断の違いだけでは解任は難しいとされています)
パウエル議長の任期は2026年5月であり、現時点で同議長は任期の残りを全うする意向を強く表明しています。
本稿執筆時点(4月19日)での予測プラットフォームPolymarketのオッズによると、トランプ大統領が2025年末までにパウエル議長を解任する確率は22%となり、市場参加者はパウエル議長の解任も可能性のひとつとして考えている様子は窺えるものの、まだまだ実現性は高くないと言えるでしょう。
また過去において、FRB議長が大統領の意向で任期途中に解任された前例は一度もありません。
ただしトランプ大統領は先日記者団に対し、「私が求めればパウエル議長は辞任するだろう」、「私がパウエル議長を辞めさせたいと思えば、すぐにそうできる」などと語りました。これが現実になる日は来るのか否か、対立する両者の言動にこれからも目が離せません。






(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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