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マーケット情報

2025/06/23

暗号資産週間レポート(2025.6.15-2025.6.21)
イラン情勢緊迫化でリスクオフ加速、暗号資産市場に下押し圧力か

【6/15~6/21週のサマリー】
・FOMCでは2025年中に2回の利下げ見通しが示されるも、成長率の鈍化とインフレに対して懸念が示された
・トランプ大統領、米国によってイランの3ヶ所の核施設(Fordow、Natanz、Isfahan)を攻撃し、「完全に破壊された」と声明(6/22)
・イラン議会がホルムズ海峡封鎖承認、これを受けBTCは100,000ドル割れ(6/22)



【暗号資産市場概況】
 6/15~6/21週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲2.19%の14,847,150円、ETH/JPYの週足終値は同▲8.35%の333,915円であった(※終値は6/21の当社現物EOD[6/22 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過したものの、中東情勢の不透明感が重石となり軟調な展開が続いた。日本時間6月22日には、イラン議会がホルムズ海峡の封鎖を承認したとの報道を受け、ビットコイン(BTC)は節目となる100,000ドルを割り込む場面も見られた。
 週初は中東情勢を巡る楽観的な観測が広がり、週明けの米国先物を含む株式市場が堅調にスタート。これを受けて暗号資産市場もリスク選好の流れに呼応し、BTCは東京時間終盤にかけて反発。背景にはイランがアラブ諸国を通じて米国にイスラエルとの停戦を働きかけているとの報道が伝わったことがあり、前週末の急落局面からの買い戻しが進行。BTCは一時109,000ドル付近まで値を戻す展開となった。
 その後はイスラエル・イラン間の緊張が再燃し、米国の軍事介入観測も台頭したことで、BTCは再び上値の重い展開に転じる。中でも注目されたのは、「今後2週間以内にアメリカがイスラエル・イラン空爆に関与するかどうかを決定する」とホワイトハウスの声明が出され、トランプ大統領がイランに対し「無条件降伏」を要求し、同国の核施設フォルドゥへの攻撃を含む軍事行動を本格検討しているとの報道である。2週間の猶予があると市場に安心感を与えたが、実際には想定よりも前に米国はイランに後述の攻撃を仕掛けたことになる。
 日本時間6月22日午前には、米国によってイラン3ヶ所の核施設(Fordow、Natanz、Isfahan)を攻撃し「完全に破壊された」とトランプ大統領による声明が出される。6月22日深夜にイラン議会がホルムズ海峡の封鎖を承認したとの報道が伝わると、他の市場が休場であった為BTCは資金逃避として売られ、100,000ドルを割り込む展開となった。
 ホルムズ海峡は世界の原油輸出量の2割超が通過する戦略的要衝であり、仮に封鎖された場合、エネルギー物流網が麻痺し、原油価格の急騰→インフレ圧力の再燃という連鎖が現実味を帯びる。実際、原油先物は週末にかけて急伸し、エネルギーコスト上昇への懸念が強まった。このような環境下では、トランプ政権がFRBに求めている利下げ圧力がむしろ後退する可能性もあり、政策金利の引き下げ期待が剥落すれば金利感応度の高いリスク性資産となる株式・暗号資産ともに逆風を受けやすい地合いとなる。
 FOMCでは、市場予想通り政策金利の据え置きが決定された。加えて公表された経済見通しでは、成長率の下方修正とインフレ率の上方修正が同時に示されるなど、スタグフレーションを想起させる内容となった。一方、ドットプロットにおける政策金利見通しの中央値は、2025年中に2回(計50bp)の利下げが実施されるとの従来の見通しが維持された。ただし、年末までの金利据え置きを見込む参加者は増加しており、FOMC内での意見の分散が窺える結果となった。
 今週も引き続き、イスラエルとイランの軍事的な動きや、米国の対応が市場に与える影響に注意を払う必要がある。特にホルムズ海峡の封鎖可能性に伴う原油価格の動向に注目すべきであり、暗号資産市場へも影響を与える可能性がある。


[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【6/15~6/21週の主な出来事】



【6/22~6/28週の主な予定】


【今週のひとこと】GENIUS法案の上院可決について

 先週の6月17日(米国現地時間)、ステーブルコイン規制を明確にする「GENIUS法案」が米上院で可決され、注目を集めました。今回は、この法案の背景と意味を考察します。
 「GENIUS法案(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins Act)」は、米国におけるステーブルコインの規制を明確にし、発行体に対する一定の基準を確立することを目的としています。特筆すべき点は発行者が保有すべき準備資産として、満期93日以下の米国債や米国債担保のレポなど、安全性が高く償還期間が短い国債の保有が義務付けられていることです。
 この点から読み取れるのは、法案の主眼が決済手段としての効率性よりも、「短期国債に対する安定的な需要の確保」に重きを置いているという点です。政府は国債を発行して資金を調達し、適材適所に流動性を供給します。しかし、過度な国債発行は財政健全性に対する警戒感を呼び起こし、国債需要の低下、金利上昇、政府の利払い負担の増加といった悪循環を招く恐れがあります。したがって、政府は国債の安定的な買い手を必要としており、発行額以上に準備資産として国債を保有するステーブルコインが注目され始めたと考えられます。
 加えて、政策金利を決定する米連邦準備制度(FRB)は政府から独立した機関であり、金融機関の国債購買力は経済環境や心理要因によって大きく左右されます。その点で、制度上強制力伴う形で創出される国債需要は、政府にとって魅力的な選択肢となり得ます。仮に本法案が成立し、新しく安定した短期国債の需要が生まれれば、米政府は国債発行で得た資金で特定産業への補助金や医療・教育などの公共支出に振り向けることが容易になります。
 「GENIUS法案」の上院可決は、暗号資産市場にとっても大きなマイルストーンになりました。現時点において、ステーブルコインの主な用途はビットコインをはじめとする暗号資産の取引であり、市場の流動性が高まることで価格上昇への材料となる可能性もあります。
 さらに最近では、米小売り大手のWalmartやAmazonが独自のステーブルコインを検討しており、従来VisaやMastercardに支払っていた巨額の決済手数料の大幅な削減を図っています。米国を起点として政府、産業、個人の間でステーブルコイン利便性が徐々に認識されつつあり、我が国も制度的整備が期待されます。



(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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