Market Report

マーケット情報・チャート

2022/06/07

動きを待つ

先週のハイライト
  • 引き続き横ばいの動き、何かしらのきっかけがなければ、レンジ相場が続く展開を予想
  • 売買動向を見ると、ビットコインからイーサリアムやアルトコインへ移行の兆しが見える
  • アジア圏のファンドマネージャーが顕著な買い手である一方、銀行勢はバランスが取れており、その他の顧客カテゴリーは若干売りに傾く
  • 市場は、7月のECB(欧州中央銀行)の利上げ幅のヒントを得るために、6/9(木)の政策決定会合に注目
  • 6/10(金)に発表される米CPI(消費者物価指数)は、インフレのピークアウトを確認するための最重要指標

  • 先週の動き
    先週の暗号資産市場は、引き続き目立った動きがない中、取引額も減少してきている。先週初め、ビットコインは32,000ドル、イーサリアムは2,000ドルまで共に10%程急上昇後に、それぞれ29,000ドル、1,700ドルまで反落した事は、注目すべき点であった。昨日の6/6(月)の海外市場では、再びビットコインは31,500ドル、イーサリアムも1,900ドルまで上昇したが、上昇のきっかけとなる材料が無ければ、レンジ相場後に下落に転じる可能性があるだろう。

    売買動向を見ると、下落した暗号資産に対して強い買い意欲が見られた。ビットコインのバランスが取れた売買動向に対して、先々週に下落幅が目立ったイーサリアムは、買い越し比率が56.8%となっている。DOT(ポルカドット)、XLM(ステラルーメン)、AVX(アバランチ)などの多くのアルトコインの値動きは印象的ではなかったものの、強い買い意欲が見られた。先々週と同様に、アジア圏が、引き続きファンド勢を中心とした強い買い手(63.0%)となっている。銀行勢は売りと買いのバランスが取れている一方で、その他の顧客カテゴリーでは、若干売りの傾向が見られた。

    OTCレンディング市場では、ビットコイン6月限月物が4%台まで上昇した一方、長期物は週足で横ばいを推移している。この期近物の上昇の動きは引き続きレンジ内での動きである。アルトコインの無期限契約取引でのショートポジションに対する維持手数料は未だコストが高いが、ステーブルコインの借り入れ需要が増加傾向であり、これは一部のトレーダーが、現在のレベルで暗号資産ロングのリスクを取ることを検討している事を示唆している。

    オプション市場では、ほとんど全ての期間においてボラティリティの低下が見られてきている。ビットコイン1ヶ月物ATM(アット・ザ・マネー)ボラティリティは69%から63%、6ヶ月物は70%から67%へ低下し、イーサリアム1ヶ月物も85%から77%へと低下した。特筆すべきは、イーサリアムの長期物のボラティリティが週半ばに83%まで上昇した後に77%まで下落、週明けには再び82%まで上昇した動きであろう。このようにイーサリアムのスポットの値動きが限定的であるにもかかわらず、市場参加者はこのボラティリティの動きが継続すると思っていないようで、割安となった際には長期物のオプションを拾う傾向がある。一方、オプション市場では、引き続きイーサリアムのリスクは下方向と見られており、期近物のリスクリバーサルは15%、長期物は8%とプットサイド(下方向のストライク)へ傾いている。ビットコインの期近物のリスクリバーサルは、20%から16%とプットサイドへの傾斜が緩和されてきているものの、市場のプットサイドへの需要は引き続き見られており、これは市場のセンチメントを表している。

    今後の展望
    今週の注目イベントは、6/9(木)のECB(欧州中央銀行)の金融政策発表と6/10(金)に公表される米CPI(消費者物価指数)だろう。5/23のラガルド総裁のブログによれば、ECBは7月初めにQEの純購入を終了し、7月に利上げを開始し、9月の利上げでマイナス金利を終了するとなっている。現在の市場の注目点は、この7月と9月の利上げ幅である。そのうちの1回が50BP利上げになるか、又は2回とも50BPになるかと幾分不透明である。5月の域内のインフレ率は大幅上昇しており、市場は今回のECBの据え置きを予想しているが、7月・9月の利上げ幅のヒントを得るために注目している。

    経済指標では、6/10発表される米国のCPI(消費者物価指数)に注目が集まる。前年比インフレ率に軟化が見られ、インフレのピークアウトを確認することができれば、FRBの金融引き締めペースが落ちリスクセンチメントを高める希望が出てくるかもしれない。 来週6/14-15に開催されるFOMC前の、最重要指標であろう。

    マクロ的要因以外では、暗号資産市場では以下の3つの事を注視している。
    ・LUNA(ルナ・テラ)と同様な事が起こりそうな暗号資産への警戒感
    ・ビットコイン28,000-32,750ドル、イーサリアム 1,700-2,100ドルのレンジをブレイクさせる何らかのシグナル
    ・6/9-12にテキサス州オースチンで開催される「The 2022 Consensus」からの何かしらの新しいニュース

    もし、上記のことに関して、新しいヘッドラインが出なければ、引き続き横ばいの展開が続くだろう。









    (提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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