2022/12/21
マクロリスクの残る中、行って来いの動き
先週のハイライト先週の動き
暗号資産スポット市場は新しいトレンドを形成するには至っておらず、先週のBTCは16,750ドル~17,450ドルのレンジ、ETHは1,220ドル~1,300ドルのレンジでの推移となった。BTCにとって17,000ドルはクリプト・ウィンターに入ってからの重要な上値抵抗線となっている。またアルトコインはバイナンスの財務懸念から週末にかけて下落することとなった。
フローデータをみると、全体的には売り越しとなっているが、地域別でみるとアジア圏は売り買い拮抗、米国圏は若干の売り越し、欧州・中東圏は大きく売り越しとなっている。コイン別でも同様に全体では売り越しであるものの、BTC、UNI、AVAXは拮抗、MATIC、XLM、DOGE、XRPは強い売り越しとなっている。顧客別でみると、銀行系が買い越しとなった以外、その他は売り越しとなっている。
主要コイン以外を見ると、バイナンスのネイティブ・トークンであるBNBは財務面に対する不安から下落し、週明け290ドル台であったものが220ドル台まで下落し、その後240ドル台まで戻している。BNBは底打ちからの回復とはいえず、引き続きバイナンスの事業継続性に対する疑念が残っている。
暗号資産全体では、バイナンスによるプルーフ・オブ・リザーブおよび顧客資産の表明によって不安感が増大することとなっている。バイナンスは過去7日間で63億ドル相当の顧客資産の流出があり、大半は12/14にみられている。債務不履行に対する不安は売り圧力へとつながっている。ユニスワップ及び取引所への流入は底堅く推移していることから、投資家の大半は資産を売却することなく取引所から引き揚げて保有することに注力している傾向がみられる。
暗号資産先物市場ではETHの対ドルベーシスは比較的安定しているが、主要取引所におけるBTC先物の対ドルベーシスは若干の下落が見られた。ETHでは、1ヶ月物の対ドルベーシスが-1.5%前後、3ヶ月物が-1.5~-2.0%前後と前週と同水準で堅調に推移している。一方、BTCは3ヵ月物が-1.5%と、週明けの-0.5%~-1.0%から低下している。
暗号資産オプション市場ではATMのボラティリティの動きには若干の違いがあるものの、いずれもリスクリバーサルにはセンチメントの悪化が表れている。BTCの1ヶ月物のボラティリティは52%で週初スタートしたが、56%に上昇、リスクリバーサルは18%の下高から22%の下高に上昇している。一方、ETHの1ヶ月物のボラティリティは6%下落し64%ととなったが、1ヶ月物のリスクリバーサルは14%の下高から20%の下高に上昇した。リスクリバーサルには市場の恐怖感が表れており、短期的にはバイナンスなどのヘッドラインリスクが存在する一方、長期的には経済状況の悪化に対する恐怖があると思われる。
今週の展望
引き続き、主要な経済指標などヘッドラインに対する反応が注視される。バイナンスからの資金流出が続いている中、顧客売買は回復しているが、依然状況は混沌としている。
それ以外に目をむけると、マクロ動向による影響が引き続き注目されている。いくつかのインフレデータは落ち着きを見せているものの、パウエル米FRB議長が現在の政策を転換するには追加のインフレ鎮静化を示すシグナルが必要とコメントしていたことから、タカ派基調を弱める兆候はまだ見られていない。
(提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。)
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