2025/12/29
暗号資産週間レポート(2025.12.21.~2025.12.27)
S&P500・金銀は最高値、ビットコインは軟調 ― ETF流出が重石となった1週間
【12/21~12/27週のサマリー】
・ゴールドとシルバーが史上最高値を更新
・米国の第3四半期の実質GDPが市場予想を上回る
・S&P500指数が史上最高値を更新
・約237億ドル相当のビットコインオプションが満期を迎える
【暗号資産市場概況】
12/21~12/27週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲1.34%の13,745,450円、ETH/JPYの週足終値は同▲2.19%の460,170円であった(※終値は12/27の当社現物EOD[12/28 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は週初にビットコインの価格が節目である90,000ドル水準を回復する場面が見られたものの、週央に米国株式市場がクリスマス休暇に入り、流動性が低下する中で、週を通じて暗号資産の現物ETF市場から継続的な資金流出が続いたことにより、週次ベースではビットコイン価格が下落する結果となった。
22日、一時的にビットコインの価格が90,000ドル台にまで上昇する場面が見られたが、米国株式市場がオープンすると、ビットコインの現物ETFから資金が流出し、ビットコインの価格は下落に転じた。米国株式市場やコモディティ市場が好調に推移する中、ビットコインは下げ幅を拡大し、翌23日にかけて86,000ドル台にまで下落する展開となった。
さらに、23日に発表された米国の第3四半期の実質GDPが市場の予想を上回ったことで、米国経済の底堅さが改めて意識され、米国株式市場やコモディティ市場には追い風となった。ゴールドは2営業日連続で史上最高値を更新し、シルバーも3営業日連続で史上最高値を更新した一方で、マクロ環境の好材料は暗号資産市場には十分に波及せず、ビットコイン価格は続落。特に、ビットコインの現物ETFからの資金流出が続いていたことが、ビットコインの売り圧力を強めた。
24日と25日はクリスマスイブとクリスマスで、グローバル市場が早引け、あるいは休場となったことで暗号資産市場の流動性が低下。ビットコインの価格は横ばいで推移していたが、この期間中も米国株式市場やコモディティ市場は堅調に推移。5営業日連続で上昇していたS&P500指数が史上最高値を更新して取引を終えたことで、暗号資産市場が米国株式市場やコモディティ市場に比べて、アンダーパフォームしている傾向が顕著に表れる展開となった。
また、週後半の26日には、約237億ドル相当のビットコインオプションの満期が迫る中で、ビットコイン価格が約3,000ドル急騰し、89,000ドル台にまで回復する場面が見られたが、米国株式市場が開くとその後、ビットコインの価格は再び反落し、27日にかけて再度86,000ドル台にまで値を戻す展開となった。
総じて、先週の暗号資産市場は軟調な推移が続き、S&P500指数やゴールド、シルバーといった主要な株価指数や安全資産がいずれも史上最高値を更新する中で、ビットコインは相対的に見劣りする値動きとなった。特に、暗号資産の現物ETF市場からの資金流出が継続している点は、暗号市場全体にとって大きな下落圧力となっており、価格の上昇を抑制する要因となっている。
今週は年末年始の週にあたり、重要な経済指標の発表は予定されていないことから、市場参加者の減少によって暗号資産市場の値動きは落ち着く可能性が高い。ただし、来年はビットコインの半減期サイクルの中でも、歴史的に最もパフォーマンスが悪くなりやすいとされる「半減期の翌々年」に該当する。そのため、流動性が乏しい局面では想定外の価格変動が生じる可能性もあり、引き続き注意を払う必要があるだろう。
[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)
【12/21~12/27週の主な出来事】

【12/28~1/3週の主な予定】

【今週のひとこと】金融庁の組織改編
今週、日本の暗号資産行政において、一つ注目すべき動きがありました。今年7月に新設された金融庁の「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官室」を、正式な「課」へと昇格する方針を固めたことが報じられました。前週に日本政府より発表された「2026年度税制改正大綱」にも関連した動きと言えるでしょう。これは単なる組織改編にとどまらず、日本の暗号資産政策が新たな段階に入ったことを示しているように思われます。
これまで暗号資産は、資金決済法を中心とした枠組みの中で、主に決済手段や交換業規制の観点から管理されてきました。しかし、市場規模の拡大や投資対象としての性格の強まりに加え、ステーブルコインやDeFiといった新しい領域が広がる中で、従来の体制では対応が難しくなってきたのも事実です。制度設計や監督、国際的な調整といった業務が高度化・複雑化するにつれ、参事官室という枠組みには一定の限界があったと言えるでしょう。
今回の「課」への昇格は、こうした状況を踏まえた自然な流れと受け止められます。課となることで、人員や予算面での裁量が広がり、暗号資産政策に継続的かつ専門的に取り組む体制が整います。特に、暗号資産を将来的に金融商品取引法の枠組みに位置づける議論や、インサイダー取引規制、情報開示ルールの整備といった「投資商品としての規律」を、腰を据えて検討できる点は注目されます。
また、この動きは国際的な規制環境との整合性という観点でも意味を持ちます。FATF(マネロン・テロ資金供与対策の政府間組織)やIOSCO(証券監督者国際機構)などの国際基準への対応は、もはや一部の室だけで対応できるものではありません。専任の課が設けられることで、日本としての考え方や方針を、より分かりやすく示せるようになるでしょう。
暗号資産は、「野放し」でも「過剰規制」でもうまく機能しません。その中間にある、予見性の高いルール作りこそが、市場の健全な成長につながります。今回の課昇格は、日本がこの難しいテーマに、ようやく腰を据えて向き合い始めたサインと受け取ることができそうです。
(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)
年末のご挨拶
2025年の暗号資産レポートは本号で最終号となります。
新年の再開は2026年1月5日を予定しております。
2025年中はご愛読いただき、ありがとうございました。
来年も何卒宜しくお願い申し上げます。
よいお年をお迎えください。
SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部
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| 商号等 | : | SBI VCトレード株式会社 |
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