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暗号資産(仮想通貨)ジパングコイン(ZPG)の概要とビットコイン投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討

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暗号資産(仮想通貨)ジパングコイン(ZPG)の概要とビットコイン投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討

公開日: 2024年6月28日

最終更新日: -

目次

·        前提
·        ジパングコインの概要
·        Bitcoin投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討
·        金へのエクスポージャー手段
·        総括

前提

本レポートでは暗号資産(仮想通貨)ジパングコイン(ZPG)の概要を解説します。ジパングコイン(ZPG)は三井物産デジタルコモディティーズ社が2022年2月から発行している金(ゴールド)の価格に連動する暗号資産です。
金とビットコイン(BTC)はその性質が近く暗号資産投資家、特にビットコイン投資家にとって金に関心がある方は多いでしょう。
 
そのため本レポートでは、ビットコイン投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討を行います。金に対してエクスポージャーを保つ手段はジパングコイン以外にも様々な手段があるので、他の手段も概観してそれぞれのメリットとデメリットも整理したうえで、ジパングコインの評価を総括します。

暗号資産(仮想通貨)ジパングコインの概要

ジパングコイン(ZPG)は三井物産デジタルコモディティーズ社が2022年2月から発行している金(ゴールド)の価格に連動する暗号資産です。
 
利用者が取引所であるデジタルアセットマーケッツを通じて本トークンを購入する場合、デジタルアセットマーケッツは、発行者から本トークンを受領すると同時に、当該受領したトークンの数量と同等の金現物を発行者から購入したうえ、当該購入した金現物を発行者に対して消費寄託することになります。デジタルアセットマーケッツ以外の取引可能な取引所としては執筆時点(2024年5月)で、SBI VCトレード、DMM Bitcoin、bitFlyerとCoinTradeの4社しかなく、海外を含め、それ以外の取引所での取扱いはありません。
 
日本の金融庁より改正資金決済法金で認可された初の商品担保型のステーブルコインでもあります。ビットフライヤー社が開発するプライベートブロックチェーンmiyabiを基盤にしています。
手数料についてはプライマリー市場であるデジタルアセットマーケッツを通じてジパングコインを売買する場合は手数料が発生しますが、保有するだけで手数料が必要ということはありません。

参照:三井物産デジタルコモディティーズ
参照:ジパングコインホワイトペーパー

ビットコイン(BTC)投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討

次に本節ではビットコイン投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討をします。一般的にビットコイン投資のカタリスト(仮説)とは、政府発行通貨は希釈し続ける・供給が限定された資産はSoV(ストアオブバリュー)の観点で優位性があるというものです。このストーリーはビットコインとゴールドにある程度共通します。
 
直近10年のパフォーマンスであればビットコインは全てのアセットクラスの中で最も大きな値上がりをしており、金と比較しても大きくアウトパフォームしました。
ただし、それでもビットコイン投資家が金をポートフォリオに組み込むことの利点は以下が挙げられます。実際に筆者自身は長期間に渡りビットコインも保有していますが、金も保有しています。

1.暗号資産(仮想通貨)の分散投資

ビットコイン(BTC)の過去のパフォーマンスは素晴らしかったですが、全資産またはポートフォリオの過半をビットコインに投資をするというのは洗練された投資家の行動としては疑問が残るというのは一般的な反応です。全てのアセットには何かしらのリスクがあり多少の分散効果を働かせることは検討したいです。既に述べたようにビットコインへの投資も、金への投資も無国籍アセットという意味では同様のカタリストを共有しています。そのうえでゴールドのエクスポージャーを加えることは同じシナリオを維持しながらかつ分散効果を働かせられます。
 
またビットコインはリスクアセット、金はリスクオフアセットに分類されるのが一般的で、地政学リスク発生時にはビットコインが売られて金は買われる局面が多いです。結果としてパフォーマンスは安定しやすくなります。

tradingview

2.資金調達可能性

ジパングコインにおいては難しいですが金の場合証券化されたETFを担保に資金調達が可能です。特に日本においては円の資本コストが低いこともあり、投資戦略を多様化する1つの方法です。
ビットコイン(BTC)においても担保ローンを提供している会社や、DeFiでの資金調達は可能ですが、その資金調達コストは割高になりがちで、証券担保ローンのほうが資金調達コストは低いことが多いです。

3.金とビットコイン(BTC)の異なる成長ストーリー

過去数年に渡り金の価格は上昇相場でした。しかしながら直近1年では米国市場で上場している金のETFの残高は横ばいです。つまり金価格は上昇していていも直近数年間、欧米の投資家は金をあまり購入していません。ではこの金相場を最も強く牽引しているプレイヤーはといえば、非西側諸国(中国、ロシア、インドなど)です。中央銀行が金購入を増やしている他、中国の現物市場では近価格にプレミアムが発生しています。これは中国株式市場が低迷していて個人投資家も金に向かっていることが要因です。また伝統的に金を宝飾品として好む傾向もあり需要を後押しさせています。宝飾品需要増加は、近年所得が増えているインドでも同様です。これら金の需要ドライバーは米国投資家が牽引するビットコインとは様相が異なります。

金へのエクスポージャー手段

金へのエクスポージャー手段は様々あります。国内の一般投資家がアクセスできる代表的な金融商品をいくつか概観します。
 
SPDR Gold Shares(ティッカー:GLD)
世界最大の金ETFです。NYSEに上場しています。経費率は0.40%。
 
ウィズダムツリー・ゴールド・2x・デイリー・レバレッジド(ティッカー:LBUL)
Bloomberg Gold Sub Excess Return Indexに対して、日々の値動きの2倍の投資成果を目指します。レバレッジETFなのでレンジ相場では資金調達コストがパフォーマンスを悪化させることは留意したいです。経費率は0.98%。
 
ヴァンエク金鉱株ETF(ティッカーGDX)
金鉱株のETFです。一般論として金鉱株はオペレーションレバレッジの効果が働くので上昇相場において一般的に金現物より価格が上昇しやすいです。ただし最近ではエネルギーコストや人件費コスト、金利高、環境配慮の観点から金鉱株のパフォーマンスは必ずしも金より優れたものではなくなっているので注意が必要です。経費率は0.51%
 
SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド
ETFではなく投資信託です。為替ヘッジなしですが日本人が投資するには最も投資しやすいビークルでしょう。ブラックロックのiシェアーズ・フィジカル・ゴールド ETCに投資します。経費率は0.1838%。
 
ジパングコイン(ZPG)
暗号資産(仮想通貨)のジパングコインはその他のETFと異なり経費率がありません。これはゴールドの長期投資家にとって極めて大きなメリットになります。一方でプライマリー市場であるデジタルアセットマーケッツで売却(償還)時のレートおよび手数料は変動する可能性がありこの点がリスクになります。経費がかからない点は非常に大きいメリットではあるものの、償還レートが変更され、金とのスプレッドが拡大するリスクや、交換業者での低い流動性はリスクに注意が必要です。

総括

本レポートではジパングコイン(ZPG)の概要の解説、およびビットコイン(BTC)投資家が金をポートフォリオに組み込むことの検討を行いました。
 
ジパングコインは限定的ではありますが経費率の観点でメリットがあります。一方でより暗号資産(仮想通貨)の文脈で利点を提供するのであれば、パブリックブロックチェーン上で展開をしてDeFiなどで活用できるなどのシナリオを今後の展開としては筆者としては期待したいところではあります。
 
今後ジパングコインが金のエクスポージャー手段として現実的な選択肢になることを期待しています。
※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。
 


【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社HashHub(https://hashhub.tokyo/)までお願いいたします。また、HashHub Researchの各種レポート(https://hashhub-research.com/)もご参照ください。

提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research