Market Report

マーケット情報・チャート

2023/10/25

臨時レポート―リップル社裁判その後(提供:SBIリクイディティ・マーケット)

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目次
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1.2023年7月13日の判決までの経緯
2.2023年7月13日の判決以降の動き
3.今後の展開
4.今後のXRP相場
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1.2023年7月13日の判決までの経緯

https://www.sbivc.co.jp/market-report/i6lhmywvyw

2.2023年7月13日の判決以降の動き

♢8月9日
SECが、本訴訟の担当判事であるニューヨーク南部地区連邦地方裁判所のAnalisa Torres氏(以下、「トレス判事」)宛に、以下のような主張の下に※中間控訴申立てを認めるよう求める書簡を提出。
・証券法執行にとって重要な問題であり、多数の係争中の訴訟にも影響を及ぼす可能性がある。
・*支配的な論点に関して連邦地裁間で意見の相違がある。
・訴訟の効率的な進行が可能である。
*同裁判所のラコフ判事は、2023年7月31日に別案件(SEC vs. Terraform Labs Pte. Ltd.)において「販売(購入)方法によってトークン法的性質を区別すること」を明確に否定。
※米国民事訴訟法における中間控訴
訴訟の他の部分が進行中に行われる第一審の判決に対する控訴。中間控訴は、連邦裁判所および各州裁判所によって定められた特定の状況下でのみ許可される。

♢8月18日
SECが「中間控訴」を申立て。

♢9月1日
リップル社が、ニューヨーク南部地区連邦裁判所に「中間控訴が必要とされる特別な状況」ではないとして、控訴に却下を求める文書を提出。

♢10月3日
トレス判事が中間控訴を却下。

♢10月19日
SECとリップル社は、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に「ガーリングハウス・リップル社CEO(以下、「ガーリングハウスCEO」)とクリス・ラーセン・同社会長(以下、「ラーセン会長」)に対するSECの告訴取り下げ」に合意したとの文書を提出。

3.今後の展開

トレス判事は、「『認定された争点は多数の訴訟において判例的価値がある』ため、当該争点が『支配的な法律問題』である」というSECの主張を退け、また、「SECは意見の相違に実質的な根拠があることを示すという法律上の責任を果たしていない」、さらに「SECは本控訴が訴訟の最終的な終結を著しく促進することを示す責任を果たしておらず、むしろ通常の控訴審で再審理を行うことによって訴訟を最も迅速に進めることができる」と悉くSECの主張を否定し、法的要件を満たしていないとしてSECの中間控訴を却下した。2023年12月4日までに、SECは制限付き申立てを提出できるとされていたが、その後、10月19日にリップル社と合意の上でガーリングハウスCEOおよびラーセン会長に対する告訴をSECが取り下げたことから状況は大きく変わった。
2024年に予定されていた二人への提訴に関する公判は当然なくなり、再び提訴されることもなくなった。提出文書によれば、SECとリップル社は、リップル社の機関投資家向けXRP販売に関する違反については引き続き協議するとしており、11月9日までに新たなスケジュールをニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提出する予定としている。
しかし、継続協議される「機関投資家向けXRP販売」については、略式判決でSECが勝訴しており、リップル社が今後正式裁判で争うつもりがないのであれば、SECと協議の上、和解に至る可能性は十分あろう。SECも「機関投資家向けXRP販売」について正式裁判で勝訴しても、「個人投資家向け販売」について控訴できるわけではなく、裁判外で落としどころを見出すことに必ずしも否定的ではないだろう。
このところSECには逆風が吹いている。10月19日GrayscaleのETFの申請を巡る争いで敗訴が決定、また、同じ日にUS Chamber of Digital Commerce(米デジタル商工会議所)がBinanceに対する訴訟を取り下げるようSECに求める意見書を提出した。これまでも、暗号資産の法的位置づけを行うことなく、また明確なガイドラインを示すことなく規制を行ってきたSECに対し不当な規制との批判も強かったが、今後は、SECに対して明確な規制ルールの策定が求められるとともに、暗号資産自体を規制する新たな法整備が必要との声も大きくなるかもしれない。
いずれにしても、本件だけでなくそのほかの多くの訴訟を通じて様々な論点が整理され、様々な問題が解決されつつあり、暗号資産業界は、本件の「SECの降伏」を素直にポジティブに受け止めてよいと思われる。

4.今後のXRP相場

7月13日の略式判決の直後急騰したXRPだが、大きな利食いの売りの波に飲み込まれ下落、SECが中間控訴を申し立てたことが足枷となり、さらに米国長期金利が上昇したことも向かい風となって、 BTCが急落した8月18日には、判決前の水準を下回る0.4405まで下値を広げた。その後はゆっくりと回復し0.5155近辺で10月3日の「SECの中間控訴却下」を迎え0.5480近くまで急騰したものの、0.48台前半まで押し戻されるなど買いが長続きしない中、10月19日に「SECの告訴取り下げ」が報じられると0.53台まで上昇した。その後、10月24日に米国でのビットコインの現物ETFの承認期待が高まり暗号資産が前面高となる中で、一時0.5860近辺まで上値を伸ばした。
10月3日の中間控訴を却下と10月19日のガーリングハウスCEOとラーセン会長の告訴取り下げ合意は、XRPのサポート要因となり将来への明るい希望を抱かせたことに疑いはない。しかし、XRPがリスク資産であることを考えると、眼下には様々なリスク要因が横たわっており、このまま順調に上昇するとは考えづらい。ロシアのウクライナ侵攻問題が解決しない中、10月7日のパレスチナ武装組織ハマスの奇襲攻撃をきっかけにハマスとイスラエルが戦闘状態に入り、イランを巻き込んで戦火が拡大する恐れもあり、中東情勢が一気に緊迫している。このような状況においては、XRPのみならず暗号資産を積極的に買うという選択肢はなかなか取りづらい。
また、米国のインフレは鈍化しているものの、米国の財政悪化懸念もあり、米国長期金利は高い水準にある。一時「暗号資産はインフレヘッジとなり得る」との声もあったが、今年5月には格付け会社S&P Global Ratingsが「BTCと米国のインフレとの相関性は低い」としている。「暗号資産の実績はこれを証明するには短過ぎる」とも説明しており、将来的にインフレヘッジとなる可能性を否定するものではないが、少なくとも現時点では、金と同列に扱うわけにはいくまい。
ただ、XRPを利用した国際送金サービスが広がりつつある中、今般のgood newsがXRPの大きな重石を取り除いたことは間違いなく、今後XRPが個人投資家に広く受け入られることとなり、これまで以上に高い流動性が得られるとするならば、XRP価格の安定とともに上昇して行くと思われる。
当面の上値として、まずは100日移動平均線が位置する0.5645レベル、7月13日の高値0.9359から8月18日の安値0.4405への下落の38.2%戻しとなる0.6297、そして同50%戻しとなる0.6882が意識され、0.5000、10月15日・16日の安値水準0.4850、10月12日の安値水準0.4735が下値目処となるか。

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