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176日前

スタンダードチャータード銀行、「ステーブルコインが28年までに世界の銀行から1兆ドルを奪う」と警告

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 スタンダードチャータード銀行は、米ドルに連動したステーブルコインの世界的な普及が加速する中、2028年までに新興国市場の銀行から1兆ドル以上がステーブルコインに流出する可能性があると警告した。

 同行のグローバルリサーチ部門が7日に発表した報告書によれば、ステーブルコインの普及は近代銀行制度における最大級の構造的変化を引き起こし、伝統的な銀行の預金がブロックチェーン上の代替手段へと流れる恐れがあるという。

 同報告書は、新興国におけるステーブルコイン保有額が現在の1730億ドルから3年以内に1兆2200億ドルに拡大する可能性があると推定しており、これは事実上、銀行システムから1兆ドルが流出することを意味する。

●インフレ進行で伝統的銀行の空白を埋めるステーブルコイン

 同行のデジタル資産リサーチ責任者ジェフリー・ケンドリック氏とエコノミストのマドゥル・ジャ氏によれば、ステーブルコインは米ドルにアクセスしづらい地域に住む何百万人もの人々にとって、事実上の「ドル建て銀行口座」となっている。

 彼らは、従来は大口保有者に限られていた利用が、今では流動性、信頼性、そして24時間365日アクセスできる利便性を求める小規模利用者にまで広がっていると指摘している。

 スタンダードチャータードは、エジプト、パキスタン、コロンビア、バングラデシュ、スリランカを最も預金流出のリスクが高い国とし、加えてトルコ、インド、中国、ブラジル、南アフリカ、ケニアもリスクがあるとした。

 テザー社のUSDTやサークル社のUSDCといったステーブルコインは、1対1で米ドルに連動し、現金や短期米国債に裏付けられている。これらは高インフレや通貨安に苦しむ経済において不可欠な存在となっている。

 例えばベネズエラでは、インフレ率が300%に達したこともあり、ステーブルコインが事実上の通貨代替手段として広く使われている。地元ではUSDTが「バイナンス・ドル」として流通し、商人たちは価格表示にも使用している。

 ブロックチェーン分析企業チェイナリシスによれば、2024年におけるベネズエラの暗号資産普及率は世界13位で、前年比110%の増加を記録した。また、同国における54億ドルの送金のうち約9%が暗号資産で行われている。

 アルゼンチンやブラジルでも同様の傾向が見られ、ステーブルコインが暗号資産取引の約60%を占めるという。ファイアブロックス社によれば、両国の企業はインフレや為替変動リスクへの対策として、USDCやUSDTの利用を拡大している。

 報告書ではまた、今年初めに成立した米国のGENIUS法にも言及しており、この法律は米国準拠のステーブルコイン発行者による利回り提供を禁止している。しかしスタンダードチャータードは、利回りよりも元本の確保が重要だとして、普及は今後も続くと見ている。

 同行は、2028年末までに世界のステーブルコイン市場が2兆ドル規模に達すると予測しており、これは米財務省の見通しとも一致している。

 一方で、同報告書は、新興国市場が最も大きな影響を受けると警告しており、ステーブルコインへの資金流入が銀行の融資原資を減らし、預金と信用創造の伝統的な関係を弱める可能性を指摘している。

●ステーブルコイン拡大を牽引する新興国、供給の3分の2を保有

 この懸念は、伝統的金融界でも共有されている。10月1日、イングランド銀行(BOE)のアンドリュー・ベイリー総裁は、ステーブルコインが「英国の金融システムを再構成しかねない」と警鐘を鳴らした。

 彼は、ステーブルコインによって「お金の保有」と「信用の提供」が切り離され、商業銀行の貸出機能が縮小し、金融システムの不安定化につながる可能性があると述べた。

 BOEは現在、システミックなステーブルコインに関する制度設計のためのコンサルテーション文書を準備中であり、個人に対しては1万-2万ポンド、企業に対しては1000万ポンドの保有上限を提案している。

 同措置は銀行預金からの流出を抑制する狙いがあるとされているが、暗号資産業界からは批判の声も上がっている。

 コインベース社の国際政策担当副社長トム・ダフ・ゴードン氏は、こうした上限は「英国の預金者に不利益をもたらす」とし、イノベーションの阻害要因になると主張。決済業界団体「ペイメンツ・アソシエーション」も、所有制限は不要で実効性にも疑問があると反発している。

 一方、民間企業の中には、銀行に変革を求める声もある。決済大手ストライプ社のパトリック・コリソンCEO(最高経営責任者)は、ステーブルコインの普及が銀行に対して預金利回りの引き上げを迫る可能性があると指摘し、「消費者にとって不利な状況を続けるのは敗北戦略だ」とX(旧ツイッター)上で発言。米国では普通預金金利が0.40%、EUでは0.25%にとどまっていると批判した。

 米GENIUS法の施行により、ステーブルコインの規制が進む中で、伝統的銀行と暗号資産の対立は一層深まっている。コインベース社は、ステーブルコインが銀行の安定性を脅かすとの見方に反論し、「預金流出」の懸念は過度に誇張されていると主張している。

 同社はまた、米国の銀行がFRB(米連邦準備制度理事会)の準備預金から年間約1760億ドルの利益を得ている一方で、顧客への利回りはほとんど支払われていないとも指摘した。

 スタンダードチャータードの報告書は、新興国市場におけるステーブルコインの普及はもはや一過性の流行ではなく、すでに始まっている構造的な転換であると結論づけている。

 現在供給されているステーブルコインのうち約3分の2は、新興国の保管用ウォレットに保有されており、今後数年のうちに、伝統的銀行からデジタルドルへの資本移転という歴史的な転換が起こる可能性があると警告している。

(イメージ写真提供:123RF)

https://cryptonews.com/news/banking-giant-issues-dire-warning-stablecoins-could-drain-1-trillion-from-global-banks-by-2028/

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