2026/05/18

暗号資産週間レポート(2026.5.10~2026.5.16)
CLARITY法案の米上院委可決も、米PPI大幅上振れと金利急騰によるリスクオフが相場を支配


【5/10~5/16週のサマリー】

・米上院銀行委員会、CLARITY法案を一部民主党議員の支持を得て可決、米国の暗号資産制度整備が前進
・トランプ大統領がイラン交渉案を「完全に受け入れがたい」と否定
・米PPI上振れや長期金利急騰を背景に金利高止まり観測が強まり、ビットコインは一時78,000ドル割れまで下落
・米上院、ケビン・ウォーシュ次期FRB議長就任を承認、ジェローム・パウエル議長は任期満了


【暗号資産市場概況】

5/10~5/16週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲1.77%の12,430,600円、ETH/JPYの週足終値は同▲5.08%の346,655円であった(※終値は5/16の当社現物EOD[5/17 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、米インフレ指標の上振れや米金利急騰によるリスクオフに加え、CLARITY法案の審議を巡る期待と警戒が交錯し、週を通じてボラタイルに推移した末に下落して着地した。

週初、トランプ大統領がイランの交渉案を「完全に受け入れがたい」と否定的な見解を示したことを受け、ビットコインは一時急落したものの、その後はショートカバーや押し目買いを背景に82,000ドル台まで急反発した。しかし、実需買いは限定的で上値追いは続かず、ロング・ショート双方の清算を伴う不安定で荒い値動きとなった。

その後は米・イラン間の和平期待後退を背景に原油価格が上昇し、リスク資産全体が軟調に推移。特に13日に発表された米PPIは市場予想を大きく上回り、インフレ懸念の再燃やFRBの高金利政策長期化観測から売り圧力が強まった。また、82,000ドル台への上昇が定着しなかったことで戻り売りや利益確定売りが優勢となり、ビットコインは79,000ドル割れまで下押しされた。

14日には、米上院銀行委員会でCLARITY法案(暗号資産市場構造法案)のマークアップ(審議・修正・採決)が実施され、一部民主党議員の支持も得て15対9で可決された。これに先立ち、ステーブルコイン、DeFi、AML、倫理条項などを巡り100件超の修正案が提出され、市場では法案前進への期待が高まる一方、規制強化への警戒感も意識されていた。なお、本マークアップは当初1月に予定されていたものの延期されていた経緯があり、制度整備進展への期待は事前に相応に織り込まれていたとみられる。

特に注目されたのは、ステーブルコインの報酬設計に関する修正論点であり、銀行預金と「同等(equivalent)」な利回り提供を禁止する表現を、「実質的に類似(substantially similar)」へ変更する案が提示された。条文構造自体に大きな変更はないものの、規制当局による解釈余地を広げることで、将来的に預金類似型リワードをより広範に規制しやすくする意図があるとみられている。もっとも、実際のマークアップでは委員長側が事前調整した統合修正版をベースに審議が進行し、AML強化や一部Yield規制は反映された一方、政治家の暗号資産利益相反規制やSEC権限拡大など、民主党色の強い修正案の多くは採用されなかった。

ビットコインは法案審議開始直後に制度整備前進期待から買いが優勢となり、80,000ドル台から一時82,000ドル台まで上昇した。しかし、その後は上値を維持できず反落しており、現物・先物CVD(累積出来高デルタ)の低下からも積極的な買い継続は確認されていない。短期的には「事実売り」的な反応による上値抑制と解釈できる一方、規制が必ずしも緩和ではなく整理・強化方向にも作用し得るとの見方が徐々に優勢となった結果とも考えられる。なお、今回の可決により法案は上院本会議での審議段階へ進んだものの、倫理条項をはじめ複数の未解決論点が残されており、最終成立に向けてはなお不確実性が残る点には留意が必要である。

15日には、米国株式市場の開場前後から売り圧力が強まり、ビットコインは79,000ドル割れまで急落した。背景には、インフレ再加速や原油高を受けた米金利の急騰があり、米10年債利回りは4.59%と2025年5月以来の水準まで上昇、30年債利回りも5.12%と5%台に乗せ、2023年10月以来の高水準を記録した。また、CMEのFedWatch Toolでは利下げ期待の後退に加え、追加利上げを含む金利高止まり観測への警戒感も強まり、金融政策見通しは再び引き締め方向へ傾斜した。NASDAQをはじめとする米国株式市場も下落し、クロスアセットでリスクオフが進行した。

こうした環境下で、先物市場ではロングポジションの清算を伴うレバレッジ解消が進み、ビットコインの下落が加速した。さらに週末にかけては、イラン・ホルムズ海峡を巡る緊張の高まりも下押し要因となり、一時78,000ドルを割り込む場面も見られた。

今週は米長期金利の動向が最大の注目点であり、高水準維持や一段の上昇となればリスク資産の上値を抑える要因となり得る。加えて、英国でも超長期金利の上昇が顕著となっており、金利上昇圧力がグローバルに波及している点にも留意が必要である。



[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米BTC現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、BTC価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がBTC価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米ETH現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(週足)、ETH価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がETH価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[米XRP現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計(日足)、XRP価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がXRP価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【5/10~5/16週の主な出来事】


【5/17~5/23週の主な予定】



【今週のひとこと】パウエルFRB議長が任期満了、次期議長にケビン・ウォーシュ氏

15日(米国時間)、ジェローム・パウエル氏のFRB議長としての任期が満了しました。後任には、米上院で13日に承認されたケビン・ウォーシュ氏が就任する予定で、正式な就任宣誓が行われるまでは、パウエル氏が引き続き議長職を務める見通しです。

パウエル氏は2018年にドナルド・トランプ大統領によってFRB議長に指名され、約8年間にわたり金融政策を主導してきました。在任中は、新型コロナ禍での大規模な金融緩和に加え、その後の急激なインフレに対応するための利上げを進めるなど、米国経済の安定に向けた政策運営を担ってきました。

FRBは「物価の安定」と「雇用の最大化」を使命としており、政府から独立した立場で金融政策を決定しています。しかし、トランプ大統領が2期目に入って以降は、利下げを強く求める大統領との対立がたびたび注目を集めてきました。

こうした中、トランプ大統領が次期議長にウォーシュ氏を指名したことで、FRBの金融政策の方向性にも関心が高まっています。パウエル氏自身は議長任期満了後もFRB理事として留任する意向を示しており、イラン情勢の緊迫化によるインフレ懸念が強まる中で、トランプ大統領が求める早期利下げの圧力に対し、FRBが今後どのように対応していくのかに注目が集まっています。




(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



-----
お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。 また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。
-----

マーケット情報一覧へ戻る