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2023/06/08

臨時レポート――XRPの動向(第2回)



■2023年5月のチャート
5月1日始値を基準とした各暗号資産価格の騰落率において、他の暗号資産の多くが低迷する中、XRP(エックスアールピー)は約9.5%上昇(*1)と、目立って力強いパフォーマンスを示した。以下は当社取扱17銘柄の値動きを比較したチャートとなる。

各銘柄は、騰落率順にXRP、LTC、ETH、XLM、BCH、ADA、BTC、LINK、MATIC、XDC、SOL、DOT、XTZ、DOGE、OAS、AVAX、FLRと続く。

本レポートでは、前回に引き続き、XRPを取り巻く直近の情勢に焦点を当てる。
TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成



■CBDCとXRP
5月18日、リップル社は、政府や中央銀行・金融機関が独自の「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」を発行するためのプラットフォーム「Ripple CBDC Platform」を立ち上げたことを発表した(*2)。

CBDCは「Central Bank Digital Currency」の略で、一般的に「中央銀行が発行するデジタル通貨」を意味する。日本銀行の定義では、以下の3点を満たすものとして定義される(*3)。

(1)デジタル化されていること
(2)円などの法定通貨建てであること
(3)中央銀行の債務として発行されること

Ripple CBDC Platformでは、CBDCの発行、流通、償還、無効化といったライフサイクル全体を管理・カスタマイズすることができる(*2)。

CBDCの導入は、デジタル決済の効率性向上や、キャッシュレス社会の推進、金融包摂(銀行口座を持たない人々が金融サービスにアクセスできるようになること)など、さまざまな目的から検討されているのが現状だ。

リップル社は既に20ヵ国以上もの中央銀行と協議を進めていることを明らかにしている(*4)ほか、直近では暗号資産規制の明確化を推し進める香港のCBDC試験運用プログラムに参加した(*5)ことも話題となった。


■公開を待つヒンマン文書
5月17日には、リップル社との係争において「ヒンマン文書」の非公開化を求めていたSECの要求が却下されたことが報道された(*6)。

ニューヨーク州南部地区連邦裁判所のアナリサ・トーレス判事は、同文書について「司法手続きに有用であるため、一般公開の強い推定を受ける司法文書」であり、「ヒンマン文書は、裁判所の裁定に影響を与える可能性がある」としている(*7 P.5)。

「ヒンマン文書」とは、元SEC企業金融部長のウィリアム・ヒンマン氏が2018年に行ったスピーチ(*8)に関連したメモや電子メールのやりとりを指しており、XRPの証券性を判断するための材料となることが期待されている。
ヒンマン文書の公開は従来の期限より一週間延期されており(*9)、本レポート執筆時点(*10)では、6月13日までの公開となる見込みだ。


■増加するアクティブアドレス数
以下は、オンチェーン分析プラットフォームSantimentが提供するダッシュボード「Sanbase」で過去1年間(*11)のDaily Active Addresses(1日あたりの「送金があったアドレスの数」:オレンジ色)とXRP価格(黄緑色)を可視化したチャートだ。



大きな値動きの前にはDaily Active Addressesが目立って増加することが多く、直近も同様の傾向を見て取ることができる。 足もとでは、SEC(米国証券取引委員会)による暗号資産取引所の提訴が続いている。6月5日には、世界最大規模の暗号資産取引所「Binance Holdings Ltd.」が、翌6日には大手暗号資産取引所「Coinbase, Inc.」が、相次いで訴えられた(*12, *13)。

Binanceへの訴状では12銘柄(*14 P.85)、Coinbaseへの訴状では13銘柄の暗号資産(*15 P.33)が証券性を指摘されたが、その中にXRPは含まれていない。

6月に予定されている「ヒンマン文書」の公開は、2020年12月から続いてきたSECとの裁判に影響を与えることが想定されるほか、上述のSECによる暗号資産取引所への訴訟(各暗号資産に対する証券性の指摘)を受け、リップル社裁判の行方は、より一層の注目を集めている。状況進捗に際しては、一時的な相場急変への備えが必要となる。


*1)2023年5月1日 7:00~2023年6月1日6:59
*2)https://ripple.com/ripple-press/ripple-launches-cbdc-platform-for-the-development-of-cbdcs-and-stablecoins/
*3)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/money/c28.htm
*4)https://www.kitco.com/news/2023-03-01/Ripple-is-working-with-more-than-20-countries-on-CBDC-plans-Brooks-Entwistle.html
*5)https://coinpost.jp/?p=461993
*6)https://www.theblock.co/post/231112/ripple-judge-sec-hinman-speech
*7)https://www.courtlistener.com/docket/19857399/819/securities-and-exchange-commission-v-ripple-labs-inc/
*8)https://www.sec.gov/news/speech/speech-hinman-061418
*9)https://twitter.com/FilanLaw/status/1659574815655710720
*10)2023年6月3日
*11)2022年6月3日~2023年6月3日
*12)https://www.sec.gov/news/press-release/2023-101
*13)https://www.sec.gov/news/press-release/2023-102
*14)https://www.sec.gov/files/litigation/complaints/2023/comp-pr2023-101.pdf
証券性を指摘された各銘柄はBNB、BUSD、SOL、ADA、MATIC、FIL、ATOM、SAND、MANA、ALGO、AXS、COTI。
*15)https://www.sec.gov/litigation/complaints/2023/comp-pr2023-102.pdf
証券性を指摘された各銘柄はSOL、ADA、MATIC、FIL、SAND、AXS、CHZ、FLOW、ICP、NEAR、VGX、DASH、NEXO。

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