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前提
2025年10月下旬の1週間(10月21日〜27日頃)、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の価格が力強く上昇し、伝統的な金融市場(TradFi)の主要株価指数であるNasdaq 100やS&P 500を上回るパフォーマンスを見せました。
特に、この期間には金(ゴールド)価格が急落しており、安全資産の王である金(ゴールド)に対するビットコイン(BTC)の優位性が再び意識されつつあります。
ビットコイン(BTC)は以前から「デジタルゴールド」と呼ばれてきましたが、この1週間の市場動向はその異名を裏付ける展開と言えるかもしれません。
こうしたことを踏まえて本レポートでは、この1週間の出来事を順を追って確認し、ビットコイン(BTC)が「なぜ強かったのか」について整理していきたいと思います。
【2025年10月下旬】ビットコイン(BTC)価格上昇の全体像

出典:https://www.tradingview.com/
まず、この1週間(2025年10月21日〜27日頃)におけるビットコイン(BTC)価格は、週初めの約11万ドル台から週末にかけて約5%上昇し、11万4,000ドル台を回復しました。
一時は11万1,000ドル前後の狭いレンジを上放れし、月間で停滞していた価格帯から抜け出す動きを見せており、実際に週末あたりには、一時11万6,000ドル台まで急伸する場面もありました。
同期間の米国株式市場も上昇基調でしたが、その上げ幅はビットコイン(BTC)に及びません。
例えば、10月末時点でS&P 500指数は過去最高値圏の約6,800ポイント台に達し、Nasdaq 100指数も上昇しましたが、週間上昇率はそれぞれ数%程度にとどまりました。
10月27日単日では、Nasdaq 100が+1.5%、S&P 500が+1%の上昇に対し、ビットコイン(BTC)は前週末比で見るとそれを上回る伸びを示しています。
つまり、ビットコイン(BTC)は主要株価指数を明確にアウトパフォームした形です。
出典:https://tradingeconomics.com/commodity/gold
一方で、安全資産の代表である金(ゴールド)は、この週に大きく値を下げました。
週初めの10月20日前後に金(ゴールド)相場は1オンス=4,380ドル超と史上最高値を更新しましたが、その後8週続いた上昇トレンドが止まり、利益確定売りに押されて急落しました。
特に、10月24日には一日で5.5%もの大幅安を記録し、4,118ドルまで下落しています。
これは2013年以来最大の下げ幅であり、金(ゴールド)市場から資金が流出したことを示唆します。
その結果、金(ゴールド)の価格は週末までに高値から6%以上下落し、直近の上昇分を大きく削る形となりました。
ビットコイン(BTC)価格上昇の要因考察

出典:https://www.coingecko.com/en/coins/bitcoin
今回のビットコイン(BTC)上昇と伝統市場・金(ゴールド)市場の動きには、いくつかの背景要因が考えられます。
要因1:安全資産からリスク資産への資金ローテーション
まずは、地政学リスクの緩和や経済指標の安定化を受けて、投資家は「安全資産」とされる金(ゴールド)などから資金を引き揚げ、ビットコイン(BTC)を含むリスク資産へとシフトしたと考えられます。
実際、10月下旬には中東など地政学的緊張の一服感や、米国のインフレ指標が市場予想よりも落ち着いたことが伝わり、市場全体に短期的なリスク選好が戻ったと指摘されていますが、こうした動きによって金(ゴールド)のようなディフェンシブ銘柄が売られ、代わりに暗号資産市場に新規資金が流入したと考えられます。
要因2:米中貿易協議への楽観と政策要因

出典:https://www.coindesk.com/markets/2025/10/27/crypto-stocks-climb-as-trump-signals-progress-on-china-trade-talks-ahead-of-fed-meeting
また、ドナルド・トランプ米大統領が10月下旬に対中関税を巡る「100%関税」発動の可能性を和らげ、中国との貿易交渉に前向きな姿勢を示したことも市場心理を好転させたと考えられます。
トランプ大統領や米財務長官の「中国との合意に自信がある」との発言を受け、週末にはビットコイン(BTC)の価格が一時11万6,200ドルまで急騰する局面もあったほどです。
また、この合意期待により米国株も上昇基調となり、市場全体でリスクオンの動きが強まりました。
それと同時に、FRBが週明けのFOMCで追加利下げに踏み切るのではないかとの憶測も出ていますが、金利低下による資金調達コストの減少がハイリスク資産(ハイテク株や暗号資産など)への追い風になるとの思惑も広がっており、FRBが年内に0.25%の利下げを実施すれば、暗号資産(仮想通貨)や株式などリスク資産にとってさらなる燃料となる可能性も考えられます。
要因3:金(ゴールド)市場の過熱と調整
年初来で金(ゴールド)価格は60%近く上昇し(10月時点)、投資マネーが集中しているとも言われていましたが、その過熱感からETF市場では金(ゴールド)からの資金流出などが相次ぎ、利益確定の売りが出やすい状況でした。
CoinDeskの記事によれば、金(ゴールド)相場は8週連続上昇という記録的なラリーの後に「伸びきった弓が緩むように」反落したといいます。
そして、そのタイミングでビットコイン(BTC)は前四半期から金(ゴールド)に劣後していた分を一気に取り戻す動きを見せました。
実際、ビットコイン(BTC)と金(ゴールド)の価格比(BTC/Goldレシオ)の14日相対力指数(RSI)は、先週22.2まで低下し、約3年ぶりの極端な「売られすぎ」水準に達していましたが、歴史的に見てこのような極端な局面ではビットコイン(BTC)がその後に相対的な強さを発揮する傾向があります。
よって、今回もその例に漏れず、金(ゴールド)市場の調整局面でビットコイン(BTC)が相対的優位を示した形になったと考えられます。
要因4:企業決算などその他の要因
さらに、米国企業の好調な第3四半期決算も投資家心理を支えたと指摘されています。
例えば、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)は関税負担の軽減を背景に業績見通しを上方修正し、ウォール街では「予想以上の企業収益が相次いでいる」との評価が広がりました。
こうした好調な企業業績は株式市場を下支えすると同時に、ビットコイン(BTC)などリスク資産にも間接的にプラス材料となります。
加えて、米労働市場の堅調さを重視するFRB高官の発言から、「景気減速局面でも金融当局は労働市場維持を優先し、必要なら緩和スタンスを取る」との観測が強まったことも、市場に安心感をもたらしたとも言われていますが、これら複合的な要因が絡み合い、投資マネーが再びビットコイン(BTC)に流入する環境が醸成されたと考えられます。
総括
ここまで見てきたように、2025年10月下旬の1週間(10月21日〜27日頃)の市場動向は、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)が依然として世界の投資マネーにとって重要な位置を占めていることを改めて示したと言えます。
ビットコイン(BTC)は一時、「デジタル時代の金(デジタルゴールド)」として安全資産の代替とも目されながら、今年後半は金(ゴールド)の独走を許す展開となっていました。
しかし、今回の金(ゴールド)急落とビットコイン(BTC)上昇の同時発生により、その様相に変化の兆しが見られたため、ビットコイン(BTC)は今後も金(ゴールド)に対して相対的な優位を維持し、価格上昇を続ける余地があるでしょう。
もっとも、市場は常に変動要因にさらされています。米中関係の行方やインフレ指標のサプライズ、さらには米国の規制動向やETF承認問題など、不確実性は依然として残ります。
ビットコイン(BTC)が主要株価指数を凌駕し、金(ゴールド)に肩を並べる存在感を見せたとはいえ、それが恒常的な傾向となるかどうかは今後の環境次第だと考えます。
参考:
https://www.coindesk.com/markets/2025/10/26/gold-s-pause-is-bitcoin-s-pulse-as-risk-appetite-returns-ahead-of-the-fed-week
https://www.coindesk.com/markets/2025/10/27/crypto-stocks-climb-as-trump-signals-progress-on-china-trade-talks-ahead-of-fed-meeting
https://decrypt.co/345263/bitcoin-ethereum-rise-gold-sinks-record-highs-why
https://www.coindesk.com/markets/2025/10/21/xrp-spikes-3-as-gold-slips-and-bitcoin-extends-gains
【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社HashHub(https://hashhub.tokyo/)までお願いいたします。また、HashHub Researchの各種レポート(https://hashhub-research.com/)もご参照ください。
提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research
