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企業のビットコイン(BTC)投資戦略|メリットや注意点、実際の企業事例を交えて徹底解説

企業のビットコイン(BTC)投資戦略|メリットや注意点、実際の企業事例を交えて徹底解説

公開日: 2025年6月12日

最終更新日: -

▼目次

近年、企業が資産の一部として、インターネット上の資産である暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を保有する動きが注目を集めています。
これは、これまでの資産管理のあり方に新たな選択肢を加える可能性を持つ一方で、ビットコインの価格変動の大きさや、各国の規制やルールがまだ整っていないといった注意点もあります。

本稿はこのテーマの入門編として、なぜ企業が暗号資産のビットコイン(BTC)を持ち始めているのか、どのような企業が実際に取り組んでいるのかを紹介しながら、ビジネスリーダーや投資家が押さえておくべき機会とリスクについて、わかりやすく解説します。

1. 企業の暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)保有戦略–メリットと注意点

企業のビットコイン保有戦略
図1.企業のビットコイン保有戦略(出所:筆者作成)

◾️「ビットコイン(BTC)財務を行う企業」とは? – 新しい資産の置き場所としての可能性

「ビットコイン財務を行う企業」とは、資産の一部を、計画的に暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)で保有する企業のことを指します。
こうした取り組みにはさまざまな理由があります。
例えば、現金の価値が目減りするのを防ぐため、為替変動に対応するため、インフレへの備えとして、あるいは長期的な企業価値の向上を目指すためなどです。
また、企業によっては、顧客からビットコインで支払いを受ける中で、そのままビットコインを保有するようになったケースもあります。

こういう動きは、企業がデジタル資産(ビットコインなど)をどう見て、どう使おうとしているのかという点で、今までの資産の持ち方とは少し違う新しい考え方です。
これまでの企業の資産は、現金や、すぐに現金に換えられるもの、そしてあまりリスクの無い証券(株や債券など)で持っておくことが普通でした。
ビットコインのように値段が変わりやすいものを企業の資産として持つというのは、どれくらいリスクを取れるか、将来どうなるか、といったことを考えての戦略的な判断と言えるでしょう。
これは、ビットコインが長い目で見て資産価値を保つかもしれない、あるいは、今までの資産とは違う値動きをするかもしれない、という期待があるのかもしれません。
この新しいやり方は、リスクをどう管理するか、企業の成績をどう計算するか、そして投資家の人たちにどう説明するか、といった新しい課題も出てきます。

この分野で代表的な企業の一つが、早くから暗号資産(仮想通貨)であるビットコインを資産の一部として持つ戦略をとってきた「Strategy Inc.(ストラテジー社)」(旧マイクロストラテジー社)です。
この企業は、ビットコインを自社の主要な資産の置き場所にすると明言しています。

そのやり方は、株を発行したり借金をしたりして集めた資金や、本業で稼いだ資金を使ってビットコインを買い集め、デジタル資産としてのビットコインの役割を広めようというものです。
このような動きは、企業がビットコインを持つことの良い点と悪い点を考える上で、参考になる例と言えるでしょう。

企業によるビットコイン(BTC)採用の広がりは、ビジネスパーソンがそのメカニズム、潜在的な機会、そして内在するリスクをバランス良く理解する必要性が高まっていることを示しています。
ビットコインは過去に高い成長率を示した時期もありましたが、同時に価格変動が大きいという特性も持っています。

本稿は、ビットコイン財務モデルの複雑な金融戦略とその影響を念頭に置きつつ、Strategy Inc.(ストラテジー社)を事例として、その戦略と財務の多面性を解き明かすことを目的としています。
ビットコイン財務モデルの採用は、ビットコイン市場のダイナミクスや伝統的な金融システムに影響を与える可能性があります。
これは、Strategy Inc.のような企業が試みるトレンドが、金融の進化の一側面となり得る一方で、新たな課題も提示することを示唆しています。

2. デジタル金庫に資金を集める:ビットコイン(BTC)を持つ企業はどうやって資金を集めて、何を考えるべきか

暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を持つ企業、特にStrategy Inc.のように積極的にビットコインを買い集める戦略をとる企業は、その目標を達成するために色々な方法で資金を集めます。
これには、市場の状況に合わせて少しずつ株を売る方法や、特別な種類の株(優先株式)、将来株に変わる可能性のある借金(転換社債)などがあり、それぞれに良い点と気をつけるべき点があります。

◾️At-The-Market(ATM)オファリング:市場を見ながら株を売る方法と、その影響

ATMオファリング(アット ザ マーケット オファリング)とは、企業が新しい株を売って資金を集める時に、一度にまとめて売るのではなく、普段株が取引されている市場で、その時の値段で、ある程度の期間をかけて少しずつ売っていくやり方です。

企業は証券会社と契約して、あらかじめ決めた範囲の中で株を売ってもらいます。
大々的な宣伝活動をしないことが多いので、市場の値段に大きな影響を与えずに、比較的静かに資金を集められる可能性があります。
Strategy Inc.は、ビットコイン(BTC)を買ったり、他のことに資金を使ったりするために、このATMプログラムを使っています。
(参照:Strategy Announces First Quarter 2025 Financial Results

このやり方の良い点は、いつ、どれくらいの株を売るかを柔軟に決められること、他の方法に比べて株主全体の価値が薄まりにくい(希薄化しにくい)可能性があること、費用が比較的安いこと、そして企業の経営陣があまり手間をかけなくて済むことなどです。
一方で、一度に多額の資金を集めたい場合には向いていないこともあり、普段どれくらい株が取引されているかや、その時の株価に左右されるという面もあります。
また、企業の市場での評価額が、持っているビットコインの価値よりも低い場合(これを「ディスカウント状態」と言います)、この方法で株を売ると、元々株を持っていた人たちの取り分が減ってしまう可能性があり、資金集めの効率が悪くなることも考える必要があります。

◾️優先株式:特別な株で資金を集める方法と、そのコスト管理(Strategy Inc.のSTRKとSTRFを例に)

優先株式とは、普通の株とは少し異なり、配当金(会社が出す利益の分配金)をもらう時や、企業が解散する時に資金を受け取る順番が普通株より先になる特別な株のことです。
ただし、企業の経営方針を決める投票権(議決権)は無いのが一般的です。Strategy Inc.は、条件の違ういくつかの優先株式を出して、資金の集め方を多様にしています。

◾️Strategy Inc.のSTRK(8.00%シリーズA永久ストライク優先株式)

執筆時点の$STRK情報
執筆時点の$STRK情報(出所:https://www.strategy.com/strf

  • 条件:これは「永久」とあるように、返す期限が決まっていない株で、「累積型」というのは、もし配当金が払えなくても、その分は積み重なっていくという意味です。最初の配当率は年8.00%です。配当金は年に4回払われます。
  • 現物配当(PIK)オプション: Strategy Inc.は、このSTRKの配当金を現金で払うか、自社の普通の株で払うか、またはその両方で払うかを選べます。もし株で払う場合、その株の値段は配当を払う日の3営業日前の平均的な取引価格の95%で計算されますが、最低価格も決まっています(最初は1株あたり$119.03)。このやり方は、一時的に現金を温存できるという柔軟性がある一方で、将来的に普通の株主の取り分が減ってしまう(希薄化する)可能性も考える必要があります。
  • 転換: この株を持っている人は、0.1の割合(つまり10株のSTRKで1株の普通株。転換価格は$119.03)で普通の株に換えることができます。もし配当金が未払いの場合に転換できるかどうかは、目論見書等で確認する必要があります。
  • ATMプログラム:Strategy Inc.はこのSTRKという株についても、市場で少しずつ売って資金を集めるATMプログラム(例えば2025年3月に発表された210億ドル規模のもの)を行っています (参照)。

◾️Strategy Inc.のSTRF(10.00%シリーズA永久ストライフ優先株式)

執筆時点の$STRF情報
執筆時点の$STRF情報(出所:https://www.strategy.com/strf

  • 条件: これも返す期限のない「永久」の株で、「累積型」です。額面$100に対して年10.00%の配当率で、年に4回、現金で払われます。これは比較的高い配当を約束するものですが、企業にとっては継続的に資金が出ていくことになります。
  • 未払い配当に対する複利: もし決まった日に配当金が払えなかった場合、払えなかった分に対してさらに追加の配当金(「複利配当」)が積み重なっていきます。最初は年率10%に加えて1%上乗せした利率で計算されます。これは、配当をきちんと払うことを促すためのものですが、企業にとっては一度支払いが滞ると負担がどんどん増えていくことになります。
  • ATMプログラム: Strategy Inc.は2025年5月にこのSTRFについても、21億ドル規模のATMプログラムを始めました (参照)。
  • 優先順位: このSTRFは、配当金をもらう時や企業が解散する時の資産分配で、前掲のSTRKや普通の株よりも優先されます。

これらの優先株式は、Strategy Inc.が資金を集めるための重要な手段の一つです。
投資家にとってはそれぞれ違うリスクとリターンの魅力がありますが、企業にとっては配当金の支払いや株主の取り分が減る可能性といった資金面での影響を慎重に管理していく必要があります。
Strategy Inc.の主要金融商品概要(STRKおよびSTRF優先株式)– 特徴と考慮点
表1:Strategy Inc.の主要金融商品概要(STRKおよびSTRF優先株式)– 特徴と考慮点

◾️転換社債:将来、株に変わるかもしれない借金

転換社債とは、企業の借金方法の一つで、将来、決まった日や何かの出来事があった時に、その借金を会社の普通の株に換える権利が付いているものです。
成長途中の企業が、まだ企業の価値がはっきり決まる前に、普通の借金よりも低い利子で資金を集めるために使われることがあります。
これは、将来、株に換わることで元々株を持っていた人の取り分が減る(希薄化する)かもしれない代わりに、今借金する時のコストを抑えるという戦略です。
Strategy Inc.は、ビットコイン(BTC)を買うための資金を集める方法として、色々な種類の転換社債を使ってきました。
(参照例:Strategy Completes $2 Billion Offering of 0% Convertible Senior Notes Due 2030
 
これらの転換社債が返す期限を迎える時、株価の状況によっては、企業はビットコインを売って現金を用意するか、新しく借金をし直すか、あるいは株への転換を受け入れるか、といった選択を迫られるかもしれません。
これは、将来の会社の資本構成(資金の集め方のバランス)や株主の価値に影響を与える大事なポイントです。

Strategy Inc.の色々な方法を使った積極的な資金集めは、ビットコインを手に入れるための資本戦略の一部であり、伝統的な企業の健全さの目安(例えば、借金が少ないことや、本業でしっかり稼いでいることなど)とは違う優先順位の付け方をしていることを示しています。
ATMプログラムの規模の大きさや、色々な種類の借金は、その積極性を示しています。
STRKという優先株の配当を普通の株で払えるようにしていることは、将来、普通の株主の取り分が減るかもしれない代わりに、今すぐ使う現金を確保するという選択肢です。
一方で、STRFという優先株の配当が現金のみで利率も高いことは、違うリスクの取り方やリターンを求める投資家をターゲットにしているのかもしれません。
これらの戦略は、ビットコインの値段が将来上がるという期待に基づいており、その期待が実現するかどうかが、この資金集めのやり方が正しかったかどうかを左右します。

さらに、Strategy Inc.が出している金融商品の複雑さやその規模は、ビットコインを中心とした色々な投資のチャンスを提供していると見ることができます。
これにより、ただビットコインを直接持つだけでなく、さまざまなリスクとリターンの組み合わせでビットコインに関わることができます。
これは、より多くの機関投資家(大きな組織の投資家)を引きつける可能性がある一方で、もし企業の経営状況が悪くなった場合には、市場全体への影響も考える必要があります。
米国では、投資家はビットコインを直接買うか、ETF(ビットコインの値段に連動する投資信託のようなもの)を通じて買うことができますが、Strategy Inc.は普通の株(ビットコイン投資にレバレッジがかかっている可能性)、転換社債(ビットコインの価値が上がれば得をするかもしれない借金)、優先株式(ビットコインと関連があり、優先順位の違う利回り商品)といった形でビットコインへの関わり方を提供しています。
これは、投資銀行がビットコインへの間接的な投資商品を作るのに似ています。
これにより、投資の方針やリスクの許容度から直接ビットコインに投資できないかもしれない資金を引き寄せます。
しかし、これらの金融商品がお互いに関連し合っていることや、ビットコインの価格、そしてStrategy Inc.の支払い能力に依存していることは、一部の金融商品に問題が起きた場合に連鎖的な影響が出る可能性を考える必要があり、Strategy Inc.の規模を考えると、ビットコイン市場全体の雰囲気に影響を与える可能性があります。

3. デジタル・ゴールドラッシュの測定:ビットコイン(BTC)を持つ企業の戦略を測るモノサシ

暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を持つ企業、特にStrategy Inc.のような企業は、その戦略がうまくいっているかどうかを評価するために、従来の企業の成績を見るモノサシに加えて、ビットコインを中心とした新しいモノサシを重視する傾向があります。
これらのモノサシを理解することは、企業の戦略や成績を色々な角度から知るのに役立ちますが、それぞれのモノサシが何を表していて、どのような限界があるのかも知っておくことが大切です。

◾️ビットコインNAV(純資産価値):持っているビットコイン(BTC)の市場での価値

ビットコインNAVとは、企業が持っているビットコインが、今の市場でどれくらいの価値があるか(ビットコインの価格 × 持っているビットコインの数)を示すものです。
これは、企業の貸借対照表(会社の財産や借金の一覧表)に載っているビットコインだけの純粋な価値を表していて、この指標では他の財産や借金のことは考えません 。
このモノサシは、企業の資産の中でビットコインがどれくらいの規模なのかをざっくりと知るためのものですが、企業の総合的な資産の健康状態を示すものではありません 。
普通の投資信託などで使われるNAV(純資産価値)の考え方も参考になりますが、ビットコインを持つ企業のビットコインNAVは、さらに焦点を絞った考え方です。

◾️mNAV(市場純資産価値)とプレミアム/ディスカウント:市場の評価と戦略へのヒント

mNAVとは、企業の株式市場での全体の価値(時価総額、または関連する株や証券の市場価値)を、その企業が持っているビットコインの価値(ビットコインNAV)と比べるものです。
もしmNAVが1.0倍より大きければ、市場はその企業(またはその株)を、持っているビットコインの価値以上に高く評価している(プレミアムが付いている)ことを意味し、1.0倍より小さければ、ビットコインの価値よりも低く評価されている(ディスカウント状態)ことを意味します。

プレミアムが付いているということは、将来さらにビットコインを買い増すことへの期待、企業の仕組みの良さ(例えば、うまく借金を使っている、税金面で有利、事業運営がうまいなど)が認められている、ビットコインに投資できる手軽な手段が少ない、あるいは市場が盛り上がっている、といった色々な理由が考えられます。
大事なのは、もし大きなプレミアムが付いていれば、Strategy Inc.のような企業は市場で株を売って資金を集め(ATMオファリング)、元々株を持っていた人たちにとって1株あたりのビットコイン保有量を増やす形で(つまり「増加的に」)ビットコインを手に入れられるかもしれない、と主張している点です。

一方で、ディスカウント状態になっている場合は、経営陣への心配、企業の運営コスト、借金の多さ、将来株主の取り分が減るかもしれないという懸念、あるいはビットコインに投資する他の良い方法(例えばETFなど)が出てきて市場が成熟したことなどを反映しているかもしれません。
ディスカウント状態では、ATMオファリングで株を売ってビットコインを買うことの効率が悪くなる可能性があります。

◾️BTCイールド:1株あたりどれくらいビットコイン(BTC)が増えたか – 株主価値の一つの見方

BTCイールドとは、企業が新しく株を発行した後でも、持っている株1株あたりで見て、どれだけ効率的にビットコインの保有量を増やせているかを測るモノサシです(例えば、(期末の1株あたりBTC ÷ 期首の1株あたりBTC) - 1 で計算します)。
日本円や米ドルでどれだけ儲かったかではなく、1株あたりのビットコインの量に注目します。

このモノサシは、ビットコインを長期間買って持ち続ける(HODLする)ことを使命としている企業にとって特に重要とされています。
BTCイールドがプラスということは、たとえ新しい株が発行されたとしても、ATMオファリングなどを通じて株を売ることが、結果的に株主一人ひとりが持っているビットコインの量を増やすのに役立っていることを示すとされています。
Strategy Inc.はこの指標を積極的に公表(下画像参照)し、目標値も設定しています。
ただし、この指標は新しく株を発行することによる影響(希薄化)も考えながら、株価自体の上がり下がりとは別に評価する必要があります。
Strategy Inc.によるBTCイールド報告例
Strategy Inc.によるBTCイールド報告例(出所:https://www.strategy.com/press/strategy-announces-first-quarter-2025-financial-results_05-01-2025

◾️BTCトルク:ビットコイン建てで見た資本の効率

BTCトルクとは、企業が集めた全ての資産(借金、株主からの出資、会社内部に残っていた資産など)を使って、どれだけビットコイン建ての価値(BTC NAVの変化)を生み出せたかを測るものです。
例えば、5000万ドルの資金を使って、ビットコインの価値(BTC NAV)が8500万ドル増えた場合、BTCトルクは1.7倍となります。

このモノサシは、株主から集めた資産だけでなく、全ての資金源から見た資本の効率を評価するとされています。
BTCトルクが高いほど、企業は使ったお金1ドルあたり、より多くのビットコインの価値を生み出していることになります。
BTCイールドを補うもので、全体的な資本の効率を示しますが、これもまた、借金の利子や株主へのお返しといった実際にかかるコスト全体を考えた上で解釈する必要があります。

これらのビットコインを中心とした主要業績評価指標(KPI)であるBTCイールドやBTCトルクを開発し、推し進めることは、これらの企業の評価の仕方を、従来の利益ベースの指標(ビットコインを売らない限り会計上不利になることが多く、ビットコインを長期保有する企業には向かないことが多い)から、「ビットコイン本位制」とも言える、ビットコインの価値を積み上げていくことに合った指標へと変えようとする試みです。
伝統的な株価収益率(PER)のような指標は、Strategy Inc.のような企業のビットコイン戦略や会計処理方法のために、しばしば役に立たないか、マイナスの数値になってしまいます。
ビットコインを自社の主要な資産の置き場所として採用する企業は、この戦略に関連する形で株主に価値が生まれていることを示す方法が必要です。
BTCイールドのような指標は、たとえ企業がより多くの株を発行したとしても、株主が時間とともにより多くのビットコインを持てるようになっているかどうかを直接的に示します。
BTCトルクは全体的な効率性を示します。
これは、投資家を教育し、従来のソフトウェア事業の利益(Strategy Inc.にとっては元々小さい)ではなく、ビットコインをどれだけうまく集められたかに基づいて企業を評価するよう説得する試みです。

もしこれらのビットコイン中心の指標が広く受け入れられれば、株式市場の中に「ビットコイン蓄積ビークル」というはっきりとした資産の種類ができて、他の企業とは違う評価を受けるようになるかもしれません。
しかし、これはビットコインの価格が長期的に上がらなかった場合、これらの指標がビットコインの価格に大きく左右されるため、評価の正しさが揺らぐリスクも伴います。
mNAVプレミアムは市場の雰囲気を示す指標であり、それが無くなってしまえば、株を発行してBTCイールドを生み出す能力は著しく損なわれます。
ビットコイン財務を行う企業の評価のための必須指標
表2:ビットコイン財務を行う企業の評価のための必須指標

4. 「ビットコイン・フライホイール」:良い循環の可能性と、価格変動への対応

ビットコイン(BTC)を持つ企業、特にStrategy Inc.の戦略を理解する上で、「フライホイール効果」または「増加的レバレッジ」という言葉がよく出てきます。
これは、企業がビットコインを買い集める力と株価のパフォーマンスの間に、良い循環が生まれるかもしれない仕組みを指しますが、同時に市場の価格変動や前提となる条件が変わることに対して敏感である点も理解しておく必要があります。

◾️「フライホイール」または「増加的レバレッジ」って何? – その前提と仕組み

フライホイール戦略とは、最初の成功が勢いを生み出して、その後の取り組みがより簡単で効果的になるという考え方です。
ビットコイン(BTC)を持つ企業の文脈では、ビットコインの価格が上がり、企業の株が市場で高く評価されている(mNAVが高い)ことを利用して、有利な条件で資金(借金や新しく発行する株)を集め、さらにビットコインを買うという戦略を指します。
これが株価と1株あたりのビットコイン保有量をさらに押し上げるかもしれない、とされています。

この仕組みは、「法定通貨(円やドルなど)からビットコインへのキャリートレード(金利差などを利用した取引)」とも言われます。
具体的には、(1) ビットコインの価格が上がり、(2) それにつれて企業の株価(例えばStrategy Inc.)が、レバレッジ効果(てこの原理のように少ない元手で大きな効果を狙うこと)や市場のプレミアム(mNAVが1.0倍より大きい状態)によってビットコイン以上に上がり、(3) 企業が有利な条件で株(ATMオファリングなど)や借金を発行し(プレミアムが付いているので株を売ることで1株あたりのビットコインを増やすことができ、借金の利子は理想的にはビットコインの価値が上がると予想される率よりも低い)、(4) 集めた資金でさらにビットコインを買い、(5) ビットコインの保有量が増えてBTCイールドも良くなることで投資家の信頼が高まり、株価とプレミアムがさらに押し上げられる、という良い循環が、市場が強気の時に生まれるかもしれない、とされています。
一般的な投資における「増加的レバレッジ」の説明も参考になりますが、この循環がうまく回るには、特定の市場環境が前提となります。

◾️上昇局面:フライホイールがうまく回っている時のメリット

フライホイールが順調に回っている間は、企業にとっていくつかの良い点があります。
まず、本業で稼ぐ資金だけでは難しいペースでビットコインを買い集めることができるかもしれません。
次に、BTCイールドが伸びて、それぞれの株が実質的により多くのビットコインを持つことになるため、株主の価値(ビットコイン建てで見た場合)が上がるかもしれません。
このようにうまく回っているフライホイールは、さらに多くの投資家を引きつけ、資金を集めやすくするという利点をもたらす可能性があります。

◾️潜在的課題:フライホイールが逆回転する時のリスクと現実

しかし、このフライホイール戦略は市場環境の変化に敏感で、前提となる条件が崩れると色々な課題に直面します。

  • ビットコイン(BTC)価格への依存:戦略全体が、ビットコインの価格変動に対して非常に弱いです。ビットコインの価格が下がると、企業の持っているビットコインの価値(NAV)も下がり、株価のプレミアム(mNAV)も縮小(あるいはディスカウント状態に転換)して、資金を集める条件が悪くなったり、株主の取り分がより大きく減ってしまったりする可能性があります。
  • 負債負担と支払利息・配当コスト: ビットコイン購入のために調達した負債には利息支払いが発生します。過去5年間に発行した転換社債(計72.7億ドル調達)の多くは0%金利ですが、低金利債券のみでの推定利息費用は約0.5~1億ドル/年。STRK(最大210億ドル、配当8%)やSTRF(最大21億ドル、配当10%)のような優先株式は、配当支払いを必要とし、Strategy Inc.の場合、STRK/STRFの全額発行が完了すると、年間の支払利息と配当費用は約20億ドル近くになる可能性があると試算されます。
  • 流動性と事業キャッシュフロー: Strategy Inc.の中核であるソフトウェア事業は、歴史的に見て、多額の財務関連債務(負債の元利返済、優先株式配当)を全て賄えるほどのキャッシュフロー(※2025年第1四半期のソフトウェア事業総収益は1億1,110万ドル)を常に生み出しているわけではありません。借金の返済などのために外部から資金を集めることへの依存度が高まると、リスクが増える可能性があります。
  • 希薄化リスク: もし株価のプレミアム(mNAV)が縮小したり無くなったりした場合、ATMオファリングで株を売ることは、元々の株主にとって、日本円や米ドルで見た価値だけでなく、潜在的には1株あたりのビットコインの量で見ても取り分が減ってしまう(希薄化する)可能性があります。STRKという優先株の配当を普通の株で支払う場合も、普通の株主の取り分を減らすことになります。
  • 資産売却の可能性:市場が大きく落ち込んだり、資金を集める市場が枯渇したりした場合、企業は借金の返済などのためにビットコインを売ることを検討する必要が出てくるかもしれません。それは、低い価格で売ることになり、さらに市場を冷え込ませる可能性も考える必要があります。ただし、Strategy Inc.は必要なら売れるビットコインを大量に持っていて流動性も高いので、倒産リスクは低く、資産が借金を下回るにはビットコインが約80%下落する必要があるとBitwiseのレポートは示唆しています。

「ビットコイン・フライホイール」戦略は、本質的にStrategy Inc.のような企業を、レバレッジを効かせたビットコインの代理投資対象のようなものに変える可能性がありますが、そこには企業固有のリスクや資金集めのリスクが伴います。
株価のプレミアム(mNAV)は、市場の雰囲気を増幅させる装置として、またフライホイールの仕組みを円滑にする重要な潤滑油として機能するかもしれません。
それが無かったりマイナスだったりすると、この仕組みの効率が落ちる可能性があります。投資家がStrategy Inc.の株を買うのは、ソフトウェア事業のためだけでなく、レバレッジのかかったビットコイン(BTC)投資のためだという見方もあります。
フライホイールは継続的に資金を集めることに依存しており、mNAVプレミアムは株を売ることでビットコインの量を増やしていくための鍵となります。
プレミアムがなければ、ビットコインを買うために株を売ることは、1ドルの株の価値を使ってビットコインを買うために0.90ドルを売るようなもので、株主の取り分を減らしてしまいます。
これにより、企業の株価はビットコインそのものよりもさらに変動しやすくなる可能性があります。
したがって、この戦略がうまくいくかどうかは、ビットコインの価格だけでなく、プレミアムを維持するための投資家の信頼を保つことにもかかっています。

本業からの現金収入が少ない上場企業がこのようなフライホイール戦略を長期間続けることができるかについては、単にビットコインを買い集めるだけでなく、最終的にどうするのかという「終局戦略」、例えば、多く持っているビットコインから事業収益を生み出すための「ビットコイン銀行」のようなものになることや、ビットコインを使った新しい金融サービスの開発などに依存する可能性も議論されています。
Strategy Inc.社自身も、「ビットコイン銀行」や「ビットコイン金融会社」になるという「終局戦略」を示唆しており、ビットコインを使った新しいアプリケーションの開発にも言及しています。
これは、ただビットコインを買い集めるだけのフライホイール戦略が、長期的に生き残るために、そして常にビットコイン価格が上がり続け、資金集めの市場が常に開いているという状況に頼ることを減らすために、集めたビットコインを使って収益を生み出すモデルへと進化する必要があるという認識を示しているのかもしれません。
これは注目すべき戦略の転換点となる可能性があります。
 ビットコイン・フライホイール戦略
図2.ビットコイン・フライホイール戦略(出所:筆者作成)

5. 市場が混乱した時:2022年の「暗号資産(仮想通貨)の冬」のビットコイン(BTC)財務戦略の検証

ビットコイン(BTC)を持つ企業の戦略、特にレバレッジ(借金などを使って大きな効果を狙うこと)を積極的に使う戦略は、市場が混乱した時に、その有効性や続けられるかどうかが試されます。
2022年に起きた「暗号資産の冬」と呼ばれる市場の冷え込みは、これらの企業にとって重要なストレステスト(耐久試験)となりました。

 ◾️2022年暗号資産(仮想通貨)の冬:ストレステストとその影響

2022年、ビットコイン(BTC)の価格は大きく下がり、12月には約20,000ドル未満まで値を下げました。
この時期は、多くのビットコインを持ち、レバレッジ戦略をとっていた企業にとって大きな試練となりました。
Strategy Inc.は、持っているビットコインに大きな含み損(まだ売っていないけど価値が下がった分の損失)を抱え (2022年8月には買った値段よりも市場価値が大幅に低いと報告されました)、当時は支払い能力について心配されましたが、その後改善しました。

◾️mNAVプレミアムの縮小またはマイナス化が戦略に与える影響

市場が冷え込んでいる時期には、Strategy Inc.がしばしば享受してきたmNAVプレミアム(持っているビットコインの価値以上に株価が高く評価されること)は小さくなる傾向があり、時にはディスカウント(時価総額が持っているビットコインの価値を下回る状態)になることさえあります。
VanEckの分析によると、2022年から2023年にかけてStrategy Inc.の自己資本(会社の純粋な財産)が数億ドルの赤字になった時期でさえ、その時価総額(株価で見た会社の価値)は数十億ドルを維持しており、これはStrategy Inc.の長期的なレバレッジ構造(借金などを活用する仕組み)に対する一部の投資家の信頼を示しているとされています。

ATMオファリング(市場で少しずつ株を売って資金を集める方法)への影響としては、プレミアムが無くなったりディスカウント状態になったりすると、ATMを通じて株を売ってビットコインを買う戦略は、1株あたりのビットコインの量で見て割に合わなくなり、元々株を持っていた人たちの取り分を大きく減らしてしまう(希薄化させる)可能性があります。
これにより、「フライホイール効果」がうまく回らなくなる可能性があります。

◾️ビットコイン(BTC)価格急落による、悪条件下での戦略的対応と市場の反応

2022年12月にビットコイン価格が20,000ドル未満まで急落し、レバレッジ比率(借金の割合)が急上昇した際、Strategy Inc.は資金調達(そして、おそらくより慎重に、あるいはバランスシート管理のためにビットコイン購入を継続)のために株式発行を増やし始めたと報じられています(参考)。
これは、プレミアムが不利な状況では、積極的にビットコインを買い増すためだけでなく、レバレッジを管理するために株を発行することを示唆しています。
同社はまた、古い借金を返済し、異なる条件で新しい借金をするなど、積極的に借金の管理も行っています。

市場が低迷している時期でも、会社の説明の中心は、長期的に見て1株あたりのビットコイン保有量を増やすことに置かれ続け、現在の市場状況は一時的なものとして捉えられる傾向があります。
また、Bitcoin magazineによる報道によると、2022年後半にStrategy Inc.は初めて一部のビットコインを売却しましたが、これは税金の損失を繰り越すためであり、持っているビットコインの大部分を長期保有するという中心的な戦略を変えるものではないとされました。
これは、他の利益と相殺して、税金面での状況を改善するための財務戦略の一環と見ることができます。

◾️その時期のアナリストのコメントと市場の見方

アナリストたちは、2022年中のStrategy Inc.の手元資金の少なさや支払い能力の指標(アルトマンZスコアなど)への指摘や、ビットコイン価格の上昇をさらなる購入資金に充てるという循環(フィードバックループ)への依存は、「砂上の楼閣(砂の上に建てた壊れやすい建物)」であるとの批判が、特に弱気市場において強まりました。
一部では、Strategy Inc.の株価がビットコイン以上に下落したり、プレミアムが縮小したりしたことが指摘され、ビットコインに投資する他の方法(2022年初頭にはアメリカでビットコイン現物ETFはまだ広まっていませんでしたが)が存在するか、または期待される中で、純粋なビットコインの代理投資対象としての価値に疑問が投げかけられました。

2022年の暗号資産(仮想通貨)の冬は、ビットコイン財務戦略が強気市場では非常に効果的である一方、長期的な市場低迷期にその戦略を続けられるかどうかは、(1)会社の借金と手元資金の管理能力、(2.1)mNAV(市場評価額とビットコイン価値の比率)が不利な場合にビットコイン購入のためのATM利用を遅らせ、代わりに借金返済のために株を発行するなど、資金調達戦略を状況に合わせて変える意思、そして(2.2)短期的な含み損を乗り越え、長期的な確信やStrategy Inc.の仕組みの他の利点に基づいて、ある程度のmNAVプレミアムを維持する投資家の意欲に大きく左右されることを示しました。
フライホイール戦略は、株を発行して得た資金でビットコインを有利に購入するために、プラスのmNAVプレミアムに依存します。
2022年にはビットコイン価格が急落し、Strategy Inc.のこのプレミアムは侵食されました。
これにより戦略の調整が余儀なくされ、Strategy Inc.はビットコイン購入のためだけでなく、急上昇するレバレッジ比率を管理するために株式発行を増やしました。
Strategy Inc.が強制的なビットコイン売却なしに生き残ったという事実は、おそらく長期の借金と、たとえビットコイン1株あたりの増加率が低下したとしても、依然として株式市場を利用できたことによる、ある程度の回復力を示しています。
これは、「何があってもHODL(持ち続ける)」というスローガンが、危機時には実用的な財務管理によって和らげられる可能性があることを浮き彫りにしています。

2022年の経験は、Strategy Inc.の資本市場戦略をより洗練させ、ビットコイン保有資産から収益を生み出すことを含む「終局戦略」への移行を加速させた可能性があります。
また、このような企業は、ただビットコインを持っているだけでなく、変動の激しい市場を乗り越えるために積極的に金融技術を駆使する存在であることを強調しています。
大きな弱気市場を乗り切ることは貴重な教訓をもたらします。
そのような時期に資本市場とビットコインの価値上昇だけに頼ることの難しさは明らかでしょう。
これは、借金の返済や事業運営のための内部の現金収入を生み出すために、持っているビットコインを生産的に活用する戦略(例えば貸し出すなど)の開発を促す可能性があります。
また、これらの企業が単に「買って保有する」だけでなく、いつ、どのように株や借金を発行するか、あるいは税金対策のためにビットコインを売却するかについて常に複雑な財務上の意思決定を行っており、単純にビットコインに投資する事業会社というよりは、専門的な金融機関に近いことを示しています。

6. ビットコイン(BTC)を持つその他の企業と多様なアプローチ

Strategy Inc.(ストラテジー社)が切り開いた、企業が暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を資産の一部として持つという戦略の道は、他の企業にも影響を与え、さまざまなやり方で後に続く動きが見られます。
これらの企業は、ビットコインを自社の価値を高めるための戦略的な資産と見ている点では共通していますが、そのやり方や注目しているポイントは異なります。

◾️メタプラネット社(日本):「アジアのStrategy Inc.」としての注目

メタプラネット社分析ダッシュボード
メタプラネット社分析ダッシュボード(出所:https://metaplanet.jp/jp/analytics

メタプラネット社は、ホテル運営からビットコイン財務戦略へと事業の軸足を移した日本企業であり、Strategy Inc.に触発された動きを見せています。
同社は積極的にビットコインを取得しており、2025年6月4日時点では8,888 BTCを保有(同社ダッシュボード参照)。
2025年末までに10,000 BTCの保有を目指しています(参照)。
資金調達には、無利子社債を含むさまざまな手段を用いています。
この戦略転換により、同社の株価は大きく変動し、アジアにおける企業ビットコイン保有者として注目を集めています。

◾️Twenty One Capital, Inc.:「ビットコインネイティブ」な公開企業を目指す

Twenty One Capital(トゥエンティワン・キャピタル)社は、SPAC(特別な目的のために資金を集めて上場する企業)を通じて設立され、テザー社やソフトバンクグループからの支援を受け、ジャック・マラーズ氏が率いています。
この企業の使命は、単に日本円や米ドルでどれだけ儲かったかを追うのではなく、「1株あたりどれだけビットコイン(BTC)を持っているか(BPS)」を最大にし、それを時間とともに増やしていくこと(「ビットコイン収益率 - BRR」)にあるとしています。
設立時には42,000 BTCを超えるビットコインを持つ見込み(※執筆時点は31,500BTC保有)でした。
将来的には、ビットコインを使った金融商品(貸付や資本市場の商品など)の開発も考えています。
(参照:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1865602/000121390025034374/ea023922201ex99-1_cantor.htm)。

◾️ナカモト・ホールディングス:ビットコインコングロマリットの構築構想

ナカモト・ホールディングスは、ビットコインを持つことを中心に、金融、メディア、アドバイス業など、ビットコインに関連する企業のグローバルなグループを作ろうとしている持株会社です。
KindlyMD社と合併することで株式市場への上場を目指しています。
BTC Inc(ビットコインマガジンという雑誌を運営する企業)の創設者であるデビッド・ベイリー氏が率いています。
その目標は、ビットコインを世界の資本市場の中心に据え、株、借金、優先株式など、あらゆる投資家が理解し持てるような色々な投資の形にパッケージ化し、1株あたりのビットコイン保有量(BTCイールド)を増やしていくことです。
この企業は、ビットコインを持つ戦略を始めるために、PIPE(特定の投資家向けの増資)や転換社債を通じて多額の資金を集めました。
(参照:Nakamoto Holdings, Kindly MD, and Anchorage Digital Form Strategic Bitcoin Treasury Partnership
 
メタプラネット(海外企業の模倣)、Twenty One(設立時からビットコイン基準の指標を採用)、ナカモト(関連企業を集めるアプローチ)のような多様なプレイヤーの登場は、Strategy Inc.が先駆けて始めた企業がビットコインを持つというモデルが、検証され進化していることの両方を示唆しています。
これは、機関投資家(大きな組織の投資家)の間で安心感が増し、株式を通じてビットコインに関わるための色々な「味付け」を求める動きがあることを示しています。

ビットコインを持つ企業同士の競争が激しくなることは、資金を引き付け、ビットコインを手に入れるための、より革新的(そして潜在的にはよりリスクの高い)金融技術につながるかもしれません。
また、これらの企業がサービスを提供し始めた場合、手数料の「底辺への競争」や、BTCイールドの「頂点への競争」が生じ、企業がわずかに有利な条件でより多くのレバレッジ(借金など)を取ったり、より多くの株を発行したりするようになるかもしれません。
これは短期的にはビットコインを集めるのに有利かもしれませんが、慎重に管理されなければ、この分野全体の全体的なリスクを高める可能性があります。
この分野が成長するにつれて、規制当局の監視も強化されるかもしれません。

7. 総括:企業のビットコイン(BTC)投資戦略|デジタル時代のビジネスパーソンのための覚書

企業が暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を資産の一部として持つという戦略は、伝統的な資産管理方法に新しい風を吹き込む、ダイナミックで進化し続ける分野です。
本稿で見てきたように、この戦略は大きな可能性を秘めている一方で、特有のリスクや複雑さも伴います。
これらを総合的に理解し、バランスの取れた判断を下すことが重要です。

◾️大事なポイントのまとめ:ビットコイン(BTC)を持つ企業の状況を理解する – チャンスと課題の認識

  • ビットコイン(BTC)を持つ企業とは何か、その戦略的な理由は何かを改めて確認しました。これらの企業は、ビットコインを単なる投資対象としてではなく、インフレ(物価上昇)への対策や長期的な価値の保存手段として、企業の準備金の中心に据えようとしていますが、その有効性やリスクについては色々な見方があります。
  • ATMオファリング(市場で少しずつ株を売る方法)、優先株式(特に株主の取り分が減る可能性や現物配当の条件を理解することの重要性)、転換社債(将来株に変わるかもしれない借金)といった主な資金集めの方法とその条件の重要性を改めて確認しました。これらは柔軟性を提供する一方で、コストや将来の資本構成への影響を伴います。
  • これらの専門的な会社を評価するための重要なモノサシ(ビットコインNAV、mNAV、BTCイールド、BTCトルク)を改めて確認しました。これらのモノサシは特定の側面を捉えるのに役立ちますが、総合的な評価には限界もあります。
  • 「フライホイール」戦略の良い面と悪い面、つまりビットコインの価格や市場の雰囲気(mNAVプレミアム)への依存性を改めて確認しました。これは良い循環を生む可能性がある一方で、市場環境の変化に弱い側面も持ちます。

 ◾️進化する物語:ただビットコイン(BTC)を持つだけでなく、金融技術の活用へ – そして戦略の多角化へ

トレンドは、単に暗号資産(仮想通貨)ビットコインを買って保有するだけでなく、企業が高度な金融技術を駆使するオペレーターとなり、複雑な金融商品を組成し、ビットコインの蓄積を最大化するために資本構成(資金の集め方や使い方)を積極的に管理する方向へと移行しています。
Strategy Inc.のような大規模保有者の「最終的な戦略」は、保有するビットコインを事業運営(例えば「ビットコイン銀行業務」)に活用することを含む可能性があり、これは彼らのリスクと収益の特性を根本的に変えるでしょう。

◾️未来志向のプロフェッショナルのための最終考察 – バランスの取れた視点の重要性

このニッチな分野を理解するには、伝統的な財務分析の枠を超え、ビットコイン中心の指標を受け入れつつも、法定通貨建ての負債の支払義務やキャッシュフロー(現金の流れ)の現実を鋭く認識し続ける必要があります。
これらの企業の行動は、より広範なビットコイン市場に影響を与え、またその逆も然りです。

これはダイナミックで進化し続ける分野であり、これらの事業体に投資したり関わったりする者にとっては、継続的な学習と批判的な評価が最も重要です。
なお、ビットコイン財務戦略を採用する企業への投資を検討している個人投資家は、本稿では触れませんでしたが、これらの企業がどのようにビットコインを保管しているのか(カストディ方法)も別途調べ、それらのリスク(ハッキングリスク含む)も理解しておく必要もあるでしょう。

投資家やビジネスパーソンにとっての核心的な課題は、ビットコイン財務戦略を通じた正当で持続可能な価値創造と、市場のボラティリティ(価格変動の激しさ)や自社の金融技術の負担に耐えられない可能性のある純粋に投機的で勢いに乗った動きとを区別することです。
これらの戦略は複雑で、しばしば継続的なビットコインの価値上昇と有利な資本市場(資金を集めやすい市場)に依存しています。
強気市場での印象的なBTCイールドの数値に惑わされやすいですが、根底にある負債、希薄化(株主の取り分が減ること)を含む真の資本コスト、そして中核事業(もしあれば)の事業運営の実行可能性を理解することが不可欠です。
重要なのは、企業が本当に長期的な価値を創造しているのか、それとも単に波に乗っているだけなのかを評価することです。

これらの企業という乗り物を通じたビットコインの制度化は、資本(お金)と正当性(社会的な認められやすさ)をもたらす一方で、ビットコインの運命を伝統的な市場の動きや規制の枠組みとより密接に結びつけます。
これは、ビットコインが元々持っていた「反体制的」な精神の一部を和らげるかもしれませんが、主流に受け入れられるためにはおそらく必要なステップです。
株式市場に上場しているビットコイン財務を行う企業は、既存の証券法(株や債券に関する法律)と市場構造の中で運営されています。
その成功は投資家の信頼に依存しており、それはより広範な経済状況や規制当局の声明に影響されます。
これらの企業が成長し、伝統的な金融(例えば、債券市場、機関投資家を通じて)との相互の結びつきを強めるにつれて、ビットコイン自体もより統合されていきます。
この統合は安定性とより広範な採用をもたらす可能性がありますが、同時に、ビットコインが一部代替となることを目指して設計されたまさにそのシステムからの圧力や影響にビットコインをさらすことにもなります。 

◾️最後に:暗号資産(仮想通貨)の大口取引における特別なサービス

 日本国内で、企業が資産の一部としてビットコインをはじめとした暗号資産(仮想通貨)を保有する場合に気になるのは、「資産の安全性」や「期末時点の含み益に税金がかかること」ではないでしょうか。
 
SBI VCトレードでは、1,000万円以上の大口取引を実施・検討しているお客さま、Web3関連ビジネスへの参入を検討しているお客さま向けに「SBIVC for Prime」という特別なサービスを用意しています。
 SBIグループの金融インフラを活用した強固なセキュリティで資産を守りながら、取引金額に応じたキャッシュバックや優遇年率での貸コイン(レンディング)、最大10倍のレバレッジ取引などのさまざまな優遇サービスを利用することができます。
 また、暗号資産を保有している企業はその事業年度が終わるごとに保有する暗号資産の含み益に対して法人税が課税されますが、「SBIVC for Prime」では、対象の暗号資産に1年以上の移転制限(ロック)をかけることで課税を避けながら、ステーキング報酬を受け取ることも可能です。
 
「SBIVC for Prime」には、他にも以下のようなサービスがあります。

  • Web3ビジネスサポート
  • 専属担当者による対応
  • 税金や最新のマーケット情報などの提供

 
サービスの詳細やお申し込みについては、以下のページをご確認ください。
 SBIVC for Prime サービス詳細

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本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社HashHub(https://hashhub.tokyo/)までお願いいたします。また、HashHub Researchの各種レポート(https://hashhub-research.com/)もご参照ください。

提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research