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第1回:暗号資産(仮想通貨)投資をするなら知っておきたい税金の基本

第1回:暗号資産(仮想通貨)投資をするなら知っておきたい税金の基本

公開日: 2022年12月6日

最終更新日: 2023年12月20日

はじめに

暗号資産(仮想通貨)のトレードを行っている方の多くは「今あるお金をもっと増やしたい」「メインの収入とは別で稼いでいきたい」と思っているのではないでしょうか?

収入を得ていくにあたってまず考えなければいけないのが、税金や確定申告についてです。暗号資産(仮想通貨)の取引でも税金がかかってしまうのは他の事業や投資などと変わりません。

そこで、暗号資産(仮想通貨)の取引と税金や確定申告について全3回にわたってお伝えしていきます。まずは基本の「き」からおさえていきましょう。

目次
・そもそも確定申告とは
暗号資産(仮想通貨)の取引による収入は雑所得に当てはまる
・暗号資産にかかる納税のポイント
 ・1、所得が大きくなれば納める税金も増える
 ・2、マイナスになってもほかの利益をカバーできない
 ・3、マイナス分は来年以降の利益もカバーできない
暗号資産(仮想通貨)の取引で税金がかかるタイミングは?
 ・1、暗号資産(仮想通貨)を売ったとき
 ・2、暗号資産(仮想通貨)同士でトレードしたとき
 ・3、暗号資産(仮想通貨)がプレゼントされたとき
 ・4、レンディング・ステーキングによる報酬をもらえたとき
 ・5、DeFiの取引を行ったとき
 ・6、暗号資産(仮想通貨)でNFTを購入したとき
・確定申告をしなかったらどうなるのか?
・法人税にかかる税金はどうなるの?


そもそも確定申告ってなに?

まず知っておかなければいけない確定申告とは、その年の1月1日〜12月31日までの1年間で得た所得額を申告し、税金を納める手続きのことです。

給与所得のみのサラリーマンなら、源泉徴収や年末調整を行っているのでこの手続きは必要ありません。しかしビットコインなどの暗号資産を取引するといった、他にも収入があれば確定申告が必要になるケースがあります。

なお、2022年度における所得の確定申告は、2023年2月16日(木)〜2023年3月15日(水)の期間に行う必要があります。

暗号資産(仮想通貨)の取引による収入は雑所得に当てはまる

所得の種類にはサラリーマンがもらえる給与所得や土地や建物を活かして得られる不動産所得など全部で10種類ありますが、なかでも暗号資産の取引で得た所得は雑所得にわけられます。

給与所得のみのサラリーマンの場合、この雑所得が1年間で20万円を超えると確定申告をしなければいけません。

先ほどもお伝えしましたが、会社に勤める人は源泉徴収で給与分の納税が済んでいますので、確定申告によって暗号資産の取引で得た収入分の納税を行います。

参考:国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人

暗号資産(仮想通貨)にかかる税金のポイント

ここからは、暗号資産のトレードで得た収入にかかる税金(雑所得)のポイントについていくつか紹介します。

1.所得が大きくなれば納める税金も増える

雑所得は、給与所得などほかの所得と合計にした金額に税金がかかる「総合課税」の対象となります。

イメージしやすいように、例を1つ紹介しましょう。

給与所得が500万円で暗号資産のトレードで得た所得が200万円の場合、2つの収入をプラスした700万円に対して税率がかけられます。

また、所得額が増えるほど税率も上がる「累進課税」が取り入れられており、最大では45%の税率がかかります。都道府県、市区町村に納める10%の住民税を加えると最大で55%の税率がかけられます。


(参考:国税庁「所得税の税率」)

一方でFXや株式の譲渡で得た所得は申告分離課税となるため、ほかの所得とはわけて計算されます。

2.マイナスになってもほかの利益をカバーできない

また、暗号資産のトレードで1年間の利益がマイナスだったとしても、利益が大きくなっているほかの所得をカバーできません(損益通算禁止)。

たとえば、事業がうまくいって収入が増える、会社で給与所得がアップするなどして税金が多くなりそうだからと言って、暗号資産取引でマイナスになった金額と相殺することはできません。

しかし、ブログのアフィリエイトで得た報酬など雑所得に該当する収入がある場合は、マイナス分で差し引きができます。

3.マイナス分は来年以降の利益もカバーできない

暗号資産のトレードによって出た雑所得のマイナス分は、翌年以降にも繰り越せません。

たとえば、2022年にトレードを行って200万円のマイナスで、2023年のトレードでは230万円のプラスだったケースでは「マイナス分を差し引いて30万円にしよう」とすることはできません。

一方で、上場株式やFXの売り買いで得たマイナス分は3年間繰り越しができて、翌年に発生した利益から差し引けます。

暗号資産(仮想通貨)の取引で税金がかかるタイミングは?

暗号資産にかかる税金について説明してきましたが、ただ暗号資産を持っているだけで税金はかかりません。では、どのようなタイミングで税金がかかるのでしょうか?

ここでは課税の対象となる利益が発生する代表的な取引を紹介していきますので、それぞれチェックしていきましょう。

1.暗号資産(仮想通貨)を売ったとき

まず、暗号資産を売ったタイミングで利益(または損失)が発生します。

ちなみにここで言う利益とは、暗号資産を買ったときにかかった金額と、売ったときの価格で求められる差額のことです。

たとえば、400万円で買った1ビットコインを500万円で売ったケースで計算していきましょう。


【利益となる金額の計算】
500万円(売ったときの価格)-400万円(買ったときの支払い価格)=100万円(利益の金額)

レバレッジ(CFD)取引の場合はどうなる?
上記では現物取引を例に説明しましたが、レバレッジ(CFD)取引においても同じように売却時に利益(または損失)が発生します。空売り(ショート)の場合は買い戻したタイミングで利益(または損失)が発生します。

2.暗号資産(仮想通貨)同士でトレードしたとき

ビットコイン(BTC)を使ってイーサリアム(ETH)を買うなど、暗号資産同士でトレードしたときも利益が発生します。

たとえば、200万円で購入した1BTCが2倍の400万円にまで値上がりし、それを使って400万円分のETHを買ったケース。


【利益となる金額の計算】
400万円(ETHを買った金額)-200万円(BTCを買った金額)=200万円(利益の金額)

このケースでは、持っているBTCを一度売って日本円に変え、そのお金でETHを買うという取引と考えるとイメージしやすいかと思います。

3.暗号資産(仮想通貨)がプレゼントされたとき

また、暗号資産を無料でプレゼントしてもらえたときも利益になります。

これは、SBI VCトレードで開催されている「銘柄追加記念キャンペーン」でもらえる銘柄のプレゼントをはじめ「エアドロップ」や「ボーナス」も例外ではありません。

暗号資産の無料プレゼントは、もらえた時点での価格がそのまま利益として扱われます。

さらに、もらえた暗号資産を売るときに値上がりしていたら、増えた分の金額も利益となるので気をつけましょう。

4.レンディング・ステーキングによる報酬をもらえたとき

SBI VCトレードでも提供しているレンディングやステーキングによって得られる収入をもらえたときにも利益が発生します。

レンディングは暗号資産を貸し出して賃借料を受け取ること、ステーキングは持っている銘柄による利回りを得られるシステムを指します。

たとえば、レンディングによる賃借料の報酬として1万円分のビットコインをもらったとしたら、その時点で1万円の利益が発生します。また、そのあと値上がりしたタイミングで売るのであれば、その差額も利益となるので注意してください。

それぞれ「もらえたタイミングで利益が発生するんだ」と把握しておきましょう。

5.DeFiの取引を行ったとき

DeFiとは「ブロックチェーン上で作られる金融エコシステム」を指します。2018年末にサービスができたUniswapなどがありますが、銀行とは違って政府や企業など間に人の手が入らずに運営されるという特徴があります。

DeFiの取引でも暗号資産同士を取引できる「スワップ」がありますが、利益が出るタイミングは一般的な暗号資産の売買と変わりません。またレンディング・ステーキングも同じく、暗号資産もらったタイミングで利益となるので注意しましょう。

ただしDeFiの取引を行っている方が確定申告を行うときは注意しなければならない点があります。DeFiでは通常の暗号資産取引所のように整理された取引の履歴をダウンロードできないケースが多いので、行った取引を自分で記録することが重要になります。特にDeFiでは利益額の計算が複雑になりやすいため、損益計算ツールの活用をおすすめします。

6.暗号資産(仮想通貨)でNFTを購入したとき

そしてよく耳にするNFTの取引でも課税の対象となる利益が発生します。

そもそもNFTとは、Non-Fungible Token(ノンファンジブル・トークン)を正式名称とするデジタル資産です。

2017年に生まれ、2021年3月にはTwitter創業者であるジャック・ドーシー氏の初ツイートがNFTとして約3億円で落札され一気に注目がされました。

簡単に説明すると、芸術家のアートなど有形・無形にかかわらず「本物である」と価値を示せるテクノロジーです。

NFTの購入ではETHなどの暗号資産(仮想通貨)を介して行うことが多く、この際に暗号資産(仮想通貨)の売却価格が原価よりも上回っていれば利益が発生するので注意が必要です。

また、NFTを売却する際も購入した価格よりも高い価格で売れたらその差額分が利益となります。

確定申告をしなかったらどうなるの?

暗号資産のトレードで一定の利益が出ているのに、確定申告を行わないとさまざまなペナルティが与えられるので気をつけましょう。

たとえば、加算税や延滞税などが当てはまりますが、シンプルに言うと利子や罰金を支払わなければいけないと理解しておいてください。

暗号資産投資家が税務調査で申告漏れを指摘されるケースが増え、ニュースでも取り上げられることが多くなっているため、必ず適切に確定申告を行いましょう。

法人にかかる税金はどうなる?

ここまでご説明したように、個人で暗号資産取引を行っている場合は住民税も含めると最大で約55%の税率がかかります。

一方で法人として暗号資産取引を行っている場合、法人税の税率は最大で23.2%、住民税や事業税も考慮に入れた実効税率は約34%程度※となっているため、所得が大きい場合は法人化した方が税率を低く抑えられるケースもあります。

また、個人と法人の違いとして代表的なものは、期末時点の含み損益に対する取り扱いです。

個人で暗号資産取引を行っている場合、年末に保有している暗号資産が含み益を抱えている場合でも課税の対象にはなりませんが、法人の場合は、決算期末時に保有する暗号資産の含み益を利益として計上する必要があるという点が大きく異なるので注意が必要です(逆に含み損は損失となる)。

※資本金1億円以下の中小企業の場合。会社規模や都道府県により実効税率は変わります。

参考:国税庁「No.5759 法人税の税率」

まとめ

第1回目となる今回は、暗号資産のトレードで得られた収入における税金や確定申告の基本の「き」をお伝えしました。

  • 暗号資産による収入は雑所得とされる
  • 給与所得のみのサラリーマンの場合、雑所得が20万円以上なら基本的に確定申告がいる
  • 暗号資産トレードの種類によって利益が発生するタイミングが異なる
  • 雑所得は給与所得などの合計の金額で税率が決まる
  • 所得額が増えるほど税率もアップする


暗号資産の取引を行うにあたって、まずは税金についての基本的な内容を理解しておかなければいけません。

そもそも自分は確定申告をしないといけないのか、利益が出ているのかをチェックする必要があります。

暗号資産取引による利益額は「Gtax」などの損益計算サービスを利用することで簡単に計算することができます。確定申告が必要になりそうな方は是非活用してみてください。


第2回:暗号資産(仮想通貨)の損益計算と確定申告のやり方をマスターしよう
第3回:暗号資産(仮想通貨)の確定申告で解消させておきたいQ&A



【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社Aerial Partners(https://www.aerial-p.com/)までお願いいたします。また、Aerial Partnersホームページ内の各種コラム(https://www.aerial-p.com/media/)もご参照ください。

執筆者:藤村大生
株式会社Aerial Partners
ビジネス開発部長
税理士・公認会計士

株式会社Aerial Partnersにて暗号資産投資家の確定申告サポート、暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見が深い。監査法人出身でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務を牽引。