▼目次

暗号資産の確定申告は、取引数や銘柄数が少なければ「それほど難しくないのでは?」と感じるかもしれません。しかし、実際に準備を進めていると「自分で計算した金額とツールの結果が合わない」「想定より利益が多い」「損をしているはずなのに利益が出ている」というようなこともあるでしょう。
間違いの多くは、税制そのものの難解さよりも確認不足や勘違いが原因です。本記事では、暗号資産の確定申告で生じやすいミスとその原因、そして、ミスを避けるために確定申告の前に見直しておくべきポイントを整理します。
暗号資産の確定申告で多いミスは?
では、具体的にどのようなミス・間違いが生じやすいのかをピックアップして紹介していきます。
①取引履歴をダウンロードしただけで安心してしまう
確定申告の準備として「取引所からCSVをダウンロードする」ことがありますが、実はこれだけでは十分とは言えません。多くの取引所では、取引の種類ごとに履歴が分かれていたり、レポートの出力方法が少しずつ異なったりします。
たとえば、現物取引と信用取引、入出金履歴やステーキング報酬のリストが別管理になっていることがあります。取引所の画面上では一つに見えても、実際に計算に必要なデータは複数に分かれていることもあります。こうした違いを把握せずにファイルを一つだけ取得して計算を進めてしまうと、本来含めるべき取引が抜けてしまう可能性があります。
「取引履歴のCSVデータを手に入れたから大丈夫」ではなく、必要なデータがすべて揃っているかを確認し、確定申告に臨む前には一度きちんと計算ツールに取り込んで確認することで、よりスムーズに申告作業を進められます。
②ステーキングなど売買以外の取引を見逃す
暗号資産の所得は現物取引やレバレッジ取引による売却益だけではありません。ステーキング報酬やレンディング報酬、エアドロップ、NFTの売却益、DeFi運用による報酬なども、原則として所得に該当します。
特にステーキングやエアドロップは、報酬として暗号資産を受け取った際にも時価があると、原則として受領時点の時価が所得として計上されます。売却していないという理由だけで除外してしまうと、ツール上の計算結果との間に大きな差が生じる原因になります。
③ 誤った期間の取引履歴で計算を進めてしまう
確定申告の対象期間は例年1月1日から12月31日までの1年間ですが、取引履歴をダウンロードする際に期間設定を誤ると、申告対象外の取引が含まれたり、本来含めるべき取引が除外されたりすることがあります。
暗号資産の損益計算は取得単価の管理が前提となるため、一部の履歴が欠けているだけでも最終的な利益額は大きく変わります。
④ ツールの計算結果で違いが出たときに自己判断で処理してしまう
暗号資産の所得計算では、取得単価の算出方法として「総平均法」が原則とされています。ただし、あらかじめ税務署へ届出を行っている場合には「移動平均法」を選択することもできます。
総平均法では、その年に取得した暗号資産の平均取得単価を基に計算します。一方、移動平均法では、取得の度に平均単価を再計算していく方法が用いられます。どちらの方法を採用しているかによって、同じ売却取引であっても計算結果が異なることがあります。
計算ツールの結果が想定と異なる場合には、どの計算方法を前提としているかを確認することが重要です。数字が合わないときに自己判断で修正してしまうと、採用している計算方法との整合性が崩れる可能性があります。
もし計算ツールと想定していた損益が異なる場合は、どの計算方法を選択しているのかを確認してみましょう。
⑤ ウォレットや他の取引所の履歴が漏れる
複数の取引所を利用していたり、さまざまなウォレットに分散して保有することが多いと、取引履歴を集めている際に漏れがちです。一部の取引所の履歴だけで計算すると、資産の移動が正しく反映されず、取得単価や保有残高に不整合が生じます。
利用した取引所やウォレットの履歴もすべて集め、そのうえで対象年度内の取引がすべて含まれているかを確認することが必要です。
⑥計算してみたら、納税資金が不足していた
実際に計算してみると想定よりも税額が大きくなり、申告直前になって資金不足に気づくこともあります。
納税が困難な場合には、一定の要件を満たすことで納税の猶予制度などが利用できる場合があります。ただし、すべてのケースで認められるわけではなく、個別の事情に応じて判断されます。
納税が難しい状況になった場合、そのまま放置していると延滞税や加算税などのペナルティによってより多額の課税を受ける可能性もあるため、早めに所轄の税務署へ相談するようにしてください。
⑦ 納税期限を把握していない
所得税の納税期限は、原則として申告期限と同日の3月15日であり、期限を過ぎると延滞税や加算税の対象になる場合があります。
納税方法として、たとえば金融機関や税務署窓口での納付、クレジットカードでの納付、振替納税(口座振替)などがあります。そこで、振替納税を選択した場合、実際の引き落とし日はおおよそ4月中旬以降になりますが、引き落とし日に口座残高が不足していると未納扱いとなり、延滞税の対象となる可能性があります。後日あらためて納付することは可能ですが、期限内に納付された扱いにはなりません。
クレジットカードによる納付や口座振替など、支払い時期がズレる方法を利用する際は、きちんと決済手続きが済んでいるのかも確認するようにしましょう。
確定申告前に確認しておきたいポイント
確定申告を進める前に重要なのは、「とにかく計算を始める」ことではなく、「最後まで作業を進めるための材料が揃っているか」を確認することです。流れとしては、次のように進めると良いでしょう。
・利用している取引所やウォレットをすべて洗い出す
・すべての取引履歴を取得する
・一度計算ツール等で損益を計算する
・算出された所得に対して、どれだけの納税資金が必要かを確認する
曖昧なまま申告作業を進めると、あとから数字の違いが出た際に原因を追いづらくなります。そのため、都度確認しながら申告作業を進めていくことをおすすめします。
まとめ
暗号資産の確定申告で起こりやすいミスは、履歴の取得方法、所得の対象範囲、期間設定、計算方法、サービス横断の確認、資金管理、納付方法といった複数の観点に分かれます。
それぞれの前提を整理し、順番に確認していくことで、多くのミスは防ぐことができます。申告前に一度立ち止まり、取引の全体像と計算の前提条件を確認することが、正確な申告につながります。

【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社Gtax(https://crypto-city.net/)までお願いいたします。
また、Gtaxホームページ内の各種コラム(https://crypto-city.net/media)もご参照ください。
執筆者:藤村 大生
株式会社Gtax 取締役
税理士・公認会計士
株式会社Gtaxにて暗号資産投資家の確定申告サポート、暗号資産事業者への経理支援を担当。暗号資産会計・税務に関する深い知見を有する。監査法人ではデューデリジェンスや原価計算導入コンサルティングに従事し、証券会社監査チームの主査として分別管理に関する検証業務も経験。