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暗号資産(仮想通貨)SOL(ソラナ)に寄せられるETFの期待、懸念材料は?

暗号資産(仮想通貨)SOL(ソラナ)に寄せられるETFの期待、懸念材料は?

公開日: 2024年8月8日

最終更新日: -

▼目次


    本レポートでは、市場の期待がどのように形成されているのか、SOL(ソラナ)のファンダメンタルズの現状理解を深めることを目的に、言説やオンチェーンデータを参照しつつまとめます。

    読者はこのレポートを通じて、今後中長期的にSOL(ソラナ)に対する投資判断の参考となる情報を得ることができるはずです。

    また、懸念材料としてはどのようなことが考えられるのか筆者の考察を行います。

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    市場の期待とセンチメント

    米国でETHスポットETFの取引が承認され、7月23日より申請された全ての商品の取引が開始されました。

    2024年1月にBTCスポットETFが承認されてから約6か月で取引が開始されることは、市場にとってややサプライズとなりましたが、取引開始までに既に期待が織り込まれていたこともありETH(イーサリアム)の価格は小幅な下落となっています。


    https://coinmarketcap.com/currencies/ethereum/

    一方で、ETHのETFが承認されたことにより、暗号資産(仮想通貨)市場の参加者にとっては次のETFにフォーカスが動いています。その筆頭がSOLだというのが一般的な報道の評価だと筆者は理解しています。

    筆者の感覚では、暗号資産(仮想通貨)のビッグ3といえばこれまでBTC(ビットコイン)、ETH(イーサリアム)、BNB(バイナンスコイン)を想定していたものの、昨今ではBNBよりもSOL(ソラナ)への期待の方が高まっているようです。

    この理由としては、CZ退任を背景としたBinanceの相対的な暗号資産市場での存在感の減少や、BNBチェーンのチェーン間競争における後退があるものと考えています。


    https://defillama.com/chains
    実際に、DeFiLlamaによればSolanaのTVLはBNBチェーン(BSC)を超えて3位になっています。後述しますが、SOLはその反面でオンチェーンのアクティビティも好調です。このような、力関係の変化を反映しているものと考えられます。

    GSR Marketsによる、暗号資産SOL(ソラナ)の価格予想

    さらに、リサーチ会社のGSR Marketsのレポートによれば、SOLを暗号資産のビッグ3とした上で、SOLスポットETFの承認によりSOL価格は最大8.9倍になるという非常に強気な予想を出しました。

    レポート当時のSOLは149ドルであり、およそ1320ドル以上になるといいます。ベアマーケットのシナリオでも1.4倍という推定を出しています。


    参考
    現物型ソラナETFが登場すれば、SOL価格は9倍に高騰=GSRマーケッツが推定

    なお、GSR Markets社はSOLのロングポジションを保有しているため、ポジショントークが含まれることに留意が必要です。

    VanEckによる米国初のSOLスポットETFの申請

    また、2024年6月27日、資産運用大手VanEckが米国初のSOLスポットETFを申請したことは市場にサプライズをもたらしました。

    発表では、Solanaの分散性や技術的な特性はSOLが証券ではなくコモディティとみなすのに十分であると表明されています。
    参照:https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2028541/000162828024030249/vanecksolanatrusts-1.htm

    オンチェーンデータからみるSOLファンダメンタルズ

    SOLを支えるファンダメンタルズとして、オンチェーンデータから分かる内容をここではまとめます。

    TVL


    比較対象をBSC、Arbitrum、Baseとしています。6月は全てのチェーンでTVLの減少傾向がありますが、7月からの上昇局面でSolanaの上げ幅が他のチェーンを上回っている傾向が分かります。

    以下は、Solana単体のTVL、ガス手数料、SOL価格を示しています。

    DEX取引量

    2024年を境に、Ethereumを中心としていた取引が、取引量全体の増加とともにSolanaの占める割合が増加しています。

    https://dune.com/ilemi/solana-dex-metrics#solana-dex-overview

    以下のグラフは、チェーン上のDEXでトークンが初めて買付された日付に基づいてトークン量を計測しています。Solanaで新規トークンが異常なほど発行されていることが分かります。


    https://dune.com/ilemi/solana-dex-metrics#solana-dex-overview

    この背景としては、Pump.funが考えられます。取引通貨の増加時期とPump.funが取引シェアを伸ばしている時期が一致しているからです。

    https://dune.com/ilemi/solana-dex-metrics#solana-dex-overview

    Pump.funは、Solanaのミームコイン発行プラットフォームで、Pump.fun上でも取引が可能です。一定の取引量に達するとSolanaの主要DEXであるRaydiumに流動性プールが開かれる仕組みになっています。

    アクティブユーザー


    https://dune.com/21co/solana-key-metrics

    2023年10月から、アクティブユーザーは増加傾向で、新規アドレスも増えています。

    懸念材料は何か?

    ETHのスポットETFが承認されたことが、本当に直接的にSOLの承認にとってポジティブな影響だといえるのでしょうか?以下では、SOLのスポットETFに関する懸念材料を2つ提示します。

    暗号資産SOL(ソラナ)の米国における証券性

    米国SECは、2023年6月よりSOLを含む複数の暗号資産を証券であるとして暗号資産取引所のBinanceを相手取り訴訟を行っています。これに対し、Solana FoundationはSOLが証券として位置づけることに異議を唱えていますが、現時点でも決着がついていません。

    最近のSECのゲイリー・ゲンスラー委員長はETHが証券に該当するかどうか明確な見解を曖昧にしていました。最近の公聴会でもETHが証券か商品かについての質問に対して具体的な回答を避けている状況です。そのため、SECがETHを正式に証券と分類する判決は現時点で出ていませんでした。このような背景があり、ETHスポットETFの承認が行われ実際に取引が行われることになりました。

    しかしSOLは、SECが提訴した訴訟の中で、明確に証券に該当する、という主張が行われています。

    ETHとSOLの違いは、地理的・ノード主体の分散性、開発拠点や関与する人物の影響力、コミュニティという観点でも性質が異なります。したがって、ETHの承認プロセスがSOLの承認に直接的な影響を与えるとは考えにくいです。

    訴訟の結果次第になりますが、もしSOLが証券として扱われることがあればSOLスポットETFの米国での実現は実質的に困難になります。

    先物ETFが承認されていない

    BTCやETHのETF承認プロセスにおいては、既存の先物市場の存在が要因のひとつだったと考えられています。しかし、SOLには現在先物市場が米国には存在しません。この不在は、SECがSOLのETFを承認する上で障壁となる可能性があります。

    2024年は米国大統領選挙があり、SECの人事が変更される可能性もあります。その際に、承認はケースバイケースとして判断される可能性もあり、一概に先物市場がないことを理由に判断を遅らせるとは限りません。

    総括

    本レポートでは、暗号資産(仮想通貨)SOL(ソラナ)に関する市場のセンチメントやファンダメンタルズをまとめました。
    ファンダメンタルズが好調な反面、規制環境や政治的要因に注視することが必要な状況であるといえます。

    短期的には、ファンダメンタルズを参考にSOLの勢いは維持される見込みですが、中長期では米国における規制動向や米国大統領選の動向を意識するべきだと筆者は考えています。

    【ご注意事項】
    本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社HashHub(https://hashhub.tokyo/)までお願いいたします。また、HashHub Researchの各種レポート(https://hashhub-research.com/)もご参照ください。

    提供:HashHub Research
    執筆者:HashHub Research