▼目次

暗号資産の確定申告を行う際、「損益計算はエクセルやスプレッドシートなどで、自分でできるのではないだろうか?」「わざわざ計算ツールを使う必要はあるのだろうか?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
国税庁が公表している計算用エクセルを使う方法や、自作のスプレッドシートで計算する方法もあります。実際、取引数がそれほど多くない場合には、自力で計算できるケースもあります。
一方で、取引の種類や保有状況によっては、思っている以上に計算が複雑になることもあります。本記事では、国税庁のエクセルやスプレッドシートなどで自力で計算する場合のメリット・デメリットと、損益計算ツールが向いているケースについて整理します。
暗号資産の損益計算は自力でも可能?
結論から言えば、暗号資産の損益計算を自力で行うことは可能です。ただし、取引量によっては「自力での計算は現実的ではない」という可能性もあります。
暗号資産の損益計算では、取得単価の算出方法(総平均法または届出による移動平均法)に基づき、売却のたびに原価を計算する必要があります。さらに、手数料の扱いや、複数回に分けて取得した場合の単価調整なども発生します。
取引回数が少なく、取引内容も単純であれば、自力での計算は十分可能でしょう。しかし、取引の幅が広がるにつれて、作業量と確認項目は増えていくため、ミスも生じやすく、相応の時間がかかる可能性があります。
国税庁のエクセルを活用するメリット・デメリット
国税庁では暗号資産の損益計算を行うためのフォーマットとして計算用のエクセルを公表しています。無料で利用できる点は大きなメリットであり、国税庁が公開している様式であるため、計算の考え方自体は税務上の前提に沿っていることから、制度理解の助けにもなります。
一方で、実務面ではいくつかの注意点があります。
多くの取引所では、CSV形式で取引履歴をダウンロードできますが、国税庁のエクセル様式に直接取り込めるわけではありません。取引データを手入力する、あるいは形式を整えて転記する必要があります。
また、複数の取引所を利用している場合、それぞれの履歴を一つのエクセルにまとめる作業が発生します。ウォレット間の資産移動なども含めて整合性を確認する必要があります。
取引件数が数十件程度であれば入力作業はそれほど大きな負担ではありませんが、取引件数が増えるにつれて、入力・確認・検算にかかる時間は比例して増えていきます。
費用をかけずに済むという点は自力計算のメリットですが、取引数が増えるほど、入力作業と確認作業等の時間的なコストは大きくなることがデメリットといえます。
エクセルやスプレッドシートで自力計算する際の注意点
国税庁の様式に限らず、自作のスプレッドシートで損益計算を行う方法もあります。自由度が高く、自分の管理方法に合わせられる点はメリットです。
ただし、暗号資産の損益計算ロジックを正確に再現するには、いくつかの注意点があります。
まず、取得単価の計算方法を正しく実装する必要があります。総平均法を採用している場合は、その年に取得した数量と取得価額の合計から平均単価を算出します。移動平均法を選択している場合は、取得の都度平均単価を更新していく仕組みが必要です。
売却のたびに原価を正しく計算できているか、手数料を含めた金額処理が適切かなども確認する必要があります。
さらに、複数の取引所やウォレットをまたぐ場合、資産移動が売却として処理されていないかなどの確認も必要になります。
計算式そのものだけでなく、データ整形や入力ミスのリスクも考慮しなければなりません。
年度をまたぐ保有がある場合
前年以前から暗号資産を保有している場合、難易度は一段上がります。前年から持ち越している資産がある際は、当時の取得単価を正しく引き継いで計算する必要があります。
総平均法を採用している場合でも、前年からの保有分を含めて整合性が取れているかを確認しなければなりません。移動平均法の場合は、取得単価の更新履歴が正しく継続されているかが重要になります。
前年の計算結果と今年の計算がつながっていないと、取得単価が不自然な数値になることがあります。年度をまたぐ保有があり、エクセルやスプレッドシートで計算・管理している場合は、前年のファイルもしっかり残しておき、申告作業時には確認しなければいけません。
自力での損益計算でも問題ないケース
すべてのケースでツールが必要というわけではありません。
たとえば、次のような条件であれば、自力での計算でも対応しやすいでしょう。
・利用している取引所が一つのみ
・売買中心で、ステーキングやDeFi運用を行っていない
・取引回数が少ない
・前年以前からの保有がない、または取得状況が明確
このように取引の構造が単純であれば、エクセルやスプレッドシートによる管理も現実的な選択肢になります。
損益計算ツールの利用がおすすめなのはどんな人?
複数の取引所を利用している場合や、ウォレット間で資産移動を行っている場合は、データの集約作業が複雑になります。また、ステーキング報酬やレンディング、NFT取引、DeFi運用などが含まれる場合、所得の種類も多様になります。
さらに、前年以前から継続して保有している暗号資産がある場合、取得単価の管理がより重要になります。取引回数が多い場合や、年間を通じて売買を繰り返している場合も、計算負担は大きくなります。
ツールを利用することで、CSVの取り込みや取得単価の計算を自動化できるため、入力ミスや計算ミスのリスクを抑えやすくなります。作業時間の短縮という観点でもメリットがあります。
このようなケースに当てはまる方は、損益計算ツールの利用を検討してみても良いかもしれません。
まとめ
暗号資産の損益計算は、国税庁のエクセルや自作スプレッドシートを用いて自力で行うことも可能です。取引内容が単純であれば、費用をかけずに対応できる場合もあります。
一方で、取引の種類や件数が増えるほど、計算の負担と確認作業は大きくなります。どの方法を選ぶかは、「できるかどうか」ではなく、「どの程度の作業量とリスクを許容できるか」という視点で判断することが重要です。
自分の取引状況を整理したうえで、無理のない方法を選択することが、正確な確定申告につながります。

【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社Gtax(https://crypto-city.net/)までお願いいたします。
また、Gtaxホームページ内の各種コラム(https://crypto-city.net/media)もご参照ください。
執筆者:藤村 大生
株式会社Gtax 取締役
税理士・公認会計士
株式会社Gtaxにて暗号資産投資家の確定申告サポート、暗号資産事業者への経理支援を担当。暗号資産会計・税務に関する深い知見を有する。監査法人ではデューデリジェンスや原価計算導入コンサルティングに従事し、証券会社監査チームの主査として分別管理に関する検証業務も経験。